停車場憧憬 出稼ぎから
春になって 出稼ぎから父が帰って来る 両手に大きな荷物を抱えホームに降りて来る 父のジャンバーから プーンと都会の良い匂いがしたのを覚えている 嬉しかったお土産はグローブだった 父に遊んでもらった記憶は少ない けれども妙に重たい何かを伝えていた 自分に厳しい人だった 愚直に働く人だった 亡くなる前に、ひとしきり私を見ていた 「後は頼んだぞ」と言っているような気がした あれから何年経っただろう 私も父と同じ年齢になろうとしている こんな息子を父は何とみているのだろうか 父と母その人生の美しさ 今更ながら見ゆるものあり 何事も語ることとてなけれども 笑みて応えし父の 遺影 ( おもかげ )
2017.03.02