「骨抜き」、「想定外」、「議会軽視」…。花巻市当局が公表した「新花巻図書館複合施設整備事業」構想(2月6日付当ブログ参照)をめぐって、議会側から激しい異論や不信の声が挙がっている。このため、今回の構想が練られた経緯やその内容について、当局側の真意をただすため、今月14日に議員全員協議会(全協)が開催されることになった。10日から始まった「議会報告会」(市民と議会との懇談会)でもこの問題に議論が集中し、トップダウンの市政運営にも批判が集まった。
矢沢振興センタ-で開かれた議会報告会には図書館問題などを管轄する「文教福祉常任委員会」の本舘憲一委員長など6人の議員が出席した。市民の参加者はわずか4人と少なかったが、その分、新図書館をめぐる質疑に時間が割かれた。私はまず、昨年秋の議会報告会の席上、当局任せにするのではなく、議会としても独自の“青写真”(対案)を示すべきではないか―という観点から「(図書館)特別委員会」の設置を提案。その後の対応について、ただした。これに対し、本舘委員長は「その趣旨については各議員に伝えたが、具体的な議論までには至らず、宙に浮いた形になっていた。議会として今後、しっかりと向き合っていきたい」と答え、さらに語気を強めながら、こう続けた。
「肝心の図書館の役割や機能については、一切触れられておらず、基本計画の策定さえも不透明な状態だ。まさに、“骨抜き”構想と言わざるを得ない。この点では議会運営委員会でも認識は一致している。特別委員会の設置も視野に入れながら、市民目線に立った図書館建設を目指していきたい」―。また、報告会を締めくくった若柳良明議員も「まったく想定外の構想に驚いている。議会の真価が問われる事態なので、徹底的に議論を詰めていきたい」と語った。
今回の不動産物件まがいの新図書館構想は別の意味で、その突出ぶりが注目を集めている。国立国会図書館が運営する「図書館に関する情報ポ-タルサイト」には世界各地の図書館情報が集められており、当市の事例は1月30日付で紹介されている。この前後にざっと目を通すと―。
●町田市立中央図書館(東京都)~中高生向け「TEEN LIBRARY」をオ-プン。カフェをイメージした空間(1月16日付)
●中津市立小幡記念図書館(大分県)~妊婦や赤ちゃん連れの利用者がゆっくり座れることのできる「マタニティコ-ナ-」を設置(1月27日付)
●山形県立図書館、リニュ-アルオ-プン~対面朗読室、アクティブラ-ニングル-ム、ビジネス支援コ-ナ-などの設置(2月3日付)
●千葉市図書館~ビジョン2040(案)へのパブリックコメントの手続きを実施へ(2月6日付)
●龍ケ崎市立中央図書館(茨城県)~公共施設再編成の市民フォ-ラム「ワカモノ×図書館 みんなで考えよう これからの公共施設」―を開催。若者目線で考えた同館の有効活用のアイデアを発表(2月7日付)
「新千葉県立図書館等複合施設基本計画」―。昨年8月、千葉県と県教委によって策定されたこの計画がひょっとして、当市の構想に類似しているかもしれないと思って調べてみたが、複合化とは文書館(ア-カイブ)と図書館との連結を意味し、その基本理念にはこうあった。「新たな知の拠点は、千葉県の有する様々な文化情報資源とそれを取り扱う専門的スキルを有する人々が集まり、県民の豊かな知的活動の基盤、知的生産の象徴となるような拠点と なることを目指します」。似て非なるものーとはこのことを指す。しかも、当市の構想策定に当たっては市教委は”蚊帳の外”に置かれたままだった。
このポ-タルサイトの図書館情報はそのほとんどがソフト面に関わる内容である。それだけに「仏作って、魂入れず」という当市の奇怪な図書館像が余計に目立ってくる。皮肉れば、「集合住宅附属図書館」という過去に例を見ない”画期的”な試みになるやもしれない。「不動産業」としての図書館経営という意味で…。今後の動きから目を離せない所以(ゆえん)である。
(写真はたった4人しか集まらなかった議会報告会。逆に図書館論議は深まった=2月10日午後、花巻市の矢沢振興センタ-で)