(師走向け特別企画);真冬の夜の“ミステリ-”……「桜を見る会」から「サクラを集める会」へ……花巻中央広場の“怪”!!?

 

 「天罰」という言葉は好きではないが、天(の神さま)からも見放されたのかと思った瞬間、この言葉が思わず口元からもれたのだった。時は令和元年の師走12月14日…2日前に花巻市を含む中部圏域にインフルエンザの注意報が発令された、そのまちのど真ん中で「光瞬くクリスマスツリ-の下で、冬を彩るワインパ-ティ-」と銘打ったイベントが開かれていた。オ-プンの午後3時、一天にわかにかき曇り、雪ならぬ大粒の雨が降ってきた。傘を差し、肩をすぼめた市民が三々五々集まってきた。仮設テントの中にはキャンドルが飾られ、灯油スト-ブが赤々と燃えている。10人余りが震えるようにして、グラスを握っていた。突然、テントにたまった雨水が頭上を濡らした。中には傘をさしている人も。「おぉ、寒ッ。インフルにでもなったら大ごと」…早々に退散した。

 

 会場の「花巻中央広場」は今年7月1日、隣接する中心市街地の活性化などをうたい文句に誕生した。しかし、その「出生の秘密」についてはあまり知られていない。花巻市は2016年6月、まちづくりの青写真になる「立地適正化計画」(コンパクトシティ)を策定し、住宅建設などを進める「居住誘導区域」を設定した。上田東一市長はことあるごとに「全国で3番目」と鼻を高くしたが、急傾斜地など災害リスクのある個所(レッドゾ-ン)がこのエリアに5か所も含まれていることが国交省の調査で明らかになった。国から指定除外を求められた結果、急きょ、衣替えして登場したのが件(くだん)の花巻中央広場だった。“生まれ出(いづ)る”不幸はその後もついて回った。

 

 「熱中症公園」、「花巻まつり限定の屋台広場」、「これじゃまるで、上田記念公園」「1億円近い工費も結局、ドブに捨てたようなもんではないのか」。酷暑続きだった今夏、こんな声がひんぱんに聞こえてきた。何度か足を運んでみたが、人の気配はほとんどなかった。ところが、である。開会中の12月定例会に総額847万6千円の補正予算案が上程され、全員賛成で可決された。用途は車いす利用が可能な多目的トイレの設置費用で、来年5月中の完成を目指すのだという。「近くの公衆トイレに行く際、交通量の多い横断歩道を渡らなければならない。だから…」と担当部署は言う。屁理屈も休み休みにしてほしい。「押すな押すなの公園ならいざ知らず。ひとっ子1人もいない空間にトイレとは!?だったら、最初から設置すれば良かったじゃないか」―。これを称して「無用の長物」という。いや、ある種の詐欺か!?

 

 ここまで読み進めてきた大方の人たちにはおそらく、察しがついていることだと思う。不評をカモフラ-ジュするため、あの手この手を使って、そのほころびを隠そうとするのが行政の習性である。例の「桜を見る会」を見れば、一目瞭然である。その「上田」版こそが今回の一大イベントであろう。「初めての冬をあなたと一緒に」…この広場で冬を楽しもうという催しは12月1日にからクリスマスの25日までの大型企画である。運営は同市内の女性グル-プ「BonD Planning」が全面的に請け負い、予算は約200万円。内容は「花巻中央広場冬季活用等に係る社会実験業務」となっており、2020年3月25日までにその成果についてのレポ-トの提出が義務づけられている。

 

 「多様な主体が行き交い、交流を深めていくという広場のコンセプトと企業理念の親和性は非常に高い」という理由で随意契約が結ばれ、飲食などを提供する出店者の選定もこの運営会社にすべてが任された。「リノベ-ションのまちづくりの中で活動を始めたBonD Planningという会社がございますけれども、その方々のプロデュ-スによって、民間の発想力やノウハウを生かしたイベントを開催するという予定にしております」(11月28日開催の記者会見)と上田市長もこの“応援団”を持ち上げることしきり。さもありなん。で、呼び物のこの日のワイン飲み放題は荒天の際は近くの倉庫内に場所を移すことになっていたが、インフルの危険をかえりみずに強行された。

 

 「知り合いからぜひ、と頼まれたので…。この天気なので辞めようと思ったけど、チケット代を無駄にするのもしゃくだから」とある女性。前売券は一枚2000円(税込み)で、150枚限定で売り出された。しかし、肝心の前売券は100枚余りと出足が危ぶまれたが、当日の参加者は248人(市調べ)に上った。さすが、「雨ニモマケズ」のふるさとである。ところで、ピザやポトフ、カレ―などを提供する出店者(6店舗)の中に隣接する中心市街地の商店はゼロだった。ある商店主は吐き捨てるように言った。「私の所にもぜひ、宣伝してほしいとチラシを置いていった。人寄せパンダじゃあるまいし…」。そういえば、こんな書き込みがフェイスブックに載っていた。「『人が集まったから成功』ではなく、少数でも集う公園を創出するためには連携と継続を周辺商店街にも求めていくべきだと思います」―。もっともな意見である。そもそも、発想の原点は中心市街地の活性化ではなかったか。

 

 客を誘導する市の担当職員の姿が目に付いた。「あれっ。このイベントは全部、外部委託じゃなかったっけ」―。寒さに震えながら、そそくさと家に戻ると、一通の匿名のメ-ルがパソコンに届いていた。「職員が手伝ってましたよね。委託した業務に市でさらに人件費かけていいんですかね。請負の原則に抵触しますよね」と書かれていた。問い合わせると、こんな答えが返ってきた。「誘導や記録写真の分担は契約には入っていないので…。3人交代で正式の業務として関わりました」。企画・立案「花巻市」―という構図、つまりは“自作自演”の正体がよろいの下から透けて見えてきた。「汚名挽回」を目指す算段(さんだん)は永田町界隈を揺るがし続ける「桜」騒動と瓜二つである。

 

 「サクラを集める会」―。突然、ブラックユ-モアも顔負けするぐらいの“妄想”に取りつかれた。「サクラ」とはあの「桜」ではなく、お友達やごひいき、ファンなどと税金を使って盛り上がる「偽客」(おとり)集団の謂(い)いである。クリスマスまで点灯されるツリ-を見に夜中にのこのこ出かけてみた。薄明りの中で二人の中学生がスケボ-に興じていた。見上げるような擁壁の上に漆喰(しっくい)壁の建物がぼんやりと浮かび上がっていた。前市政の失政で負の遺産となり、上田市長が解体を表明した旧料亭「まん福」である。その真下には現市政下のもうひとつの負の遺産が広がっている。このセットの妙が胸に突き刺さった。

 

 冬期間は閉鎖される宮沢賢治記念館に通じる渡り階段(367段)、雑草が生い茂る旧新興製作所跡地…。市内には歴代の失政の残骸があちこちに転がっている。いっそのこと、戦跡などをめぐる「ダ-クツ-リズム」(悲しみの旅)にあやかって、こうした「負の遺産」をツア-に組み込込んだ方が誘客に役立つのではないか。心底、そう思った。さ~て、これに勝る“オチ”(落ち)があろうか…東京五輪・パラリンピックの〝聖火“リレ―(6月19日)の花巻市内でのスタ-ト地点が、いわく因縁つきの「花巻中央広場」に決まったことを18日付の新聞各紙が伝えていた。まこと、「ミステリ-」(怪談)にふさわしい結末ではないか-――

 

 

 

(写真は雨もりがするテントの中でワインを口にする市民。見るからに寒々とした光景。テントの中で傘をさしている人もいた=12月14日午後3時すぎ、花巻市吹張町の花巻中央広場で)

 

 

 

《休載のお知らせ》

 

 1カ月ほどの長旅に出ることになりましたので、しばらくの間、当ブログを休載させていただきます。旅先から投稿する際にはまた、よろしくお願い申し上げます。良き年末年始をお過ごしください。

 

 

 

 

 

2019.12.18:masuko:[ヒカリノミチ通信について]

ミステリーその1

ミステリーその1

 ポツンと点灯するツリ-の頭上には廃屋となった旧料亭「まん福」の広大な建物が…。まさに”怪談”にふさわしいロケーションである=12月9日午後10すぎ、花巻市吹張町で

2019.12.18:

ミステリーその2

ミステリーその2

 オープン式典で肩をすぼめながら、あいさつする上田東一市長。師走入りしたこの日、寒さが一気に強まった。聖歌隊も参加者もお疲れさま=12月1日、フェイスブック上に投稿された写真から

2019.12.18:

ミステリ-その3

ミステリ-その3

 中心市街地の活性化が目的のはずだったが、出店には地元商店街の姿はなかった=12月14日午後3時すぎ、花巻市吹張町で

2019.12.18: