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内断熱(充填断熱)の抱える危険要素⑤

  • 内断熱(充填断熱)の抱える危険要素⑤
前回の投稿で、内断熱における気密性能の低下についてお伝えしました。

宮城のような寒冷地では、気密性能を表すC値(隙間相当面積)は、2㎝/㎡以下が必須で、これ以上だと熱損失が大きいばかりではなく、内部結露の危険性が高まります。

2㎝/㎡以下というのは、最低限の基準で、必須の条件というのが、ある意味常識ですが、3年後に義務化となる省エネ基準では、防露性能を確保する旨の記述は、あるものの、数値の基準もなければ、測定の義務化もない為に、高気密・高断熱・省エネとは名ばかりの住宅が、現在も建て続けられているのが、日本の住宅業界の悲しい現実です。

気密性能が低下すると、室内の水蒸気が、防湿フィルムなどの気密層をすり抜け、温度差のある壁体内に入り込む量が増加します。

内断熱で使用されることの多い、繊維形の断熱材は、そもそも吸湿性は低いのですが、湿気を外に追い出すために透湿性は、非常に高い素材です。

つまり、湿気を含んだ空気が断熱材の中を通過することで、壁体内にある構造材や金物が、露点温度以下に冷えていれば、内部結露が発生する可能性が高くなります。

一応、理論上は、結露が発生しても、腐れない防腐材を使用し、後々乾いて外部に排出されるとなっているのですが・・・。

現代の住宅は、耐震性を向上させる為に、構造の外部に、構造用合板などの耐力面材の施工が主流です。

面材が何であれ、その表面温度は、冷たく、湿気を含んだ空気は、せき止められ結露が発生する危険が大きいのです。

こうして、壁体内で発生した結露は、面材や柱・土台を濡らしてしまい、腐朽の要因となる訳です。

そもそも、断熱材は、素材そのものではなく、素材の中の空気が固定されることで、断熱性能が発揮されるのです。(制止空気の熱伝導率は、0.02W/mK で、とても高い)

つまり、断熱材の中に湿気を含む空気が移動していれば、十分な性能は発揮されないということも理解しなければなりません。

また、湿気の多い梅雨時などは、常に壁体内は高湿の状態にさらされます。

いくら高級な布団でも、乾燥機や天日干しもせず、裸のままの状態で、押し入れの中に何年も入れっぱなしにしていたら、布団はどうなるでしょう。

布団は、乾燥してフカフカな状態でこそ暖かいのです。

布団は洗濯して乾かせば、また使用できますが、壁の中や床下・天井裏の断熱材はそうはいかないのです。







内断熱(充填断熱)の抱える危険要素④

  • 内断熱(充填断熱)の抱える危険要素④
気密性能が年々低下する?

内断熱の場合、室内の水蒸気が構造躯体に侵入しないように、室内側に防湿フイルムによる気密施工が、必須となります。

しかし、気密工事完了後に、内装下地として施工する石膏ボードに打ち込むビスは1万本以上となります。

その他にも、コンセントやスイッチ、床下や天井の点検口、照明器具の気密部分の経年劣化や、地震の揺れによるズレにより、年々気密性能の低下が懸念されます。

気密性能が低下すれば、温度差換気が働き、冷気が室内に侵入し、熱効率が悪くなり、住み心地の低下や光熱費の上昇を招きます。

さらに、水蒸気の粒子は10万分の2ミリと微細ですので、室内と壁体内での温度差があれば、ちょっとした隙間でも、水蒸気が壁体内に入り込み内部結露の危険性が高まるのです。

内断熱(充填断熱)の抱える危険要素③

  • 内断熱(充填断熱)の抱える危険要素③
構造材として使用される木材の中には、必ず水分が含まれており、水分の含む割合を含水率といいます。

通常、高気密・高断熱住宅の場合は、建築後の木材の収縮による建物の不具合を軽減するために、乾燥材を利用するのが、大原則ですが、出荷される時点においての含水率は、概ね無垢材で18%・集成材で15%の含水率が基本となります。

しかしながら、乾燥材を使用して建てられた住宅でも、後々乾燥が進む事で収縮し、痩せやくるい・割れが生じてしまうのです。

つまり、乾燥することで、木材は数ミリ程度痩せてしまい、痩せた部分は必然的に、隙間となり、無断熱になる為、その部分は断熱の欠損部分となってしまいます。

こうした断熱の欠損部分では、室内との温度差によって引き起こす、内部結露の危険が非常に大きくなるというわけです。

※ 弊社のソーラーサーキットの標準仕様の構造材は、含水率10%以下の完全乾燥材LVLを採用しておりますので、長期間にわたり、寸方の変異はありません。

内断熱(充填断熱)の抱える危険要素②

  • 内断熱(充填断熱)の抱える危険要素②
〇内断熱の完全施工は困難?

内断熱の場合、柱や筋交いに加え、構造や開口部の取り合い、構造金物や配線・配管部が多数あり、こうした部分を隙間なく施工するのは、物理的に難しく、どうしても、断熱材を寄せたり潰しての施工になってしまいます。

断熱材は、そもそも断熱材の中に含まれている空気が、断熱の役目を果たしており、制止空気の熱伝導率は、0.02W/mK で、とても高い断熱性能を有しています。

つまり、寄せたり潰したりしては、性能を十分に発揮する事は出来ないという訳です。

そして、大なり小なり隙間も生じてしまい、断熱の欠損部分が生じ、内部結露の危険性が高まってしまうのです。

最近では、隙間を出来るだけ無くす為の施工法として、吹き込み断熱も増えてはきていますが、断熱材をそのまま充填する施工法に比べ、施工精度は確かに高まるものの、隙間なく断熱するのは、難しいのが現実です。

内断熱(充填断熱)の抱える危険要素①

  • 内断熱(充填断熱)の抱える危険要素①
〇熱橋(ヒートブリッジ)の影響による熱損失

内断熱の最大の欠点は、何といっても構造躯体そのものが、非断熱部分となることで、室内と室外の温度差の激しい季節においては、熱橋(ヒートブリッジ)という文字どうり熱を伝える橋となります。

木造であれ、ツーバイであれ、鉄骨であれ、構造材は、基本的には断熱材ではないので、おのずと非断熱部分(全体の20%前後)となり、熱橋の影響により熱損失が大きいものになります。

つまり、冬は、室内熱の損失を助長し、夏は40℃近くもなる外壁の裏側から、熱を室内に侵入させる要因となります。

そして、熱損失は、住み心地の悪さや光熱費の上昇に影響を及ぼしますが、それより怖いのは、温度差によって発生する壁体内結露による構造の腐朽であり、長期間、熱による収縮と膨張を繰り返すことで、狂いや痩せ・割れといった構造の変形・毀損を招き、年々、劣化が進み、耐震性の低下につながるのです。

昨年4月の熊本地震において、旧耐震の住宅のみならず、新耐震基準の住宅の多くが、半壊や全壊の被害を受けましたが、こうした経年劣化による耐震性の低下も大きな要因となっています。

参考までに、主な建築材料や断熱材の熱伝導率を比較してみましょう。

<建築材料>
〇 杉・ヒノキ0.12W/mK
〇 軽量気泡コンクリート0.17W/mK 
〇 コンクリート1.6W/mK
〇 鋼材53 W/(m K)W/mK)
 
<断熱材> 
〇 グラスウール16K0.046 W/mK
〇 高性能グラスウール24K0.036W/mK
〇 吹き込み用グラスウールGW-1- 0.052 W/mK・30K相当 0.04 W/mK
〇 ロックウール0.038W/mK
〇 ポリスチレン3種0.028W/mK
〇 ソーラーサーキット断熱材0.024W/mK

鉄骨の熱電導率は大きすぎて、比較するまでもございませんが、断熱性がある程度有する木材でも、熱伝導率は0.12W/mKと大きいのがお分かり頂けると思います。

そして、この熱伝導率を用いて、各材料の熱の抵抗値を算出することが出来ます。

熱抵抗値とは、材料の熱の伝わりにくさを表す値です。

裏表に1℃の温度差がある場合に、ある厚さの材料の中を、面積1㎡あたり、1秒間に伝わる熱量の逆数で、当然、値が大きい程、熱が伝わりにくく、断熱性能が高いということになります。

熱抵抗値(m2・ K/W )は、材料の厚さ[m]÷熱伝導率W/(m・K)で求められます。

例えば、柱3寸5分(10.5㎝)の場合は、0.105÷0.12=0.875(m2・ K/W)の熱抵抗値となり、グラスウール16Kで厚さ100mmの断熱材の熱抵抗値は、0.10÷0.046=2.17m2・ K/Wとなります。

つまり、グラスウール断熱材2.17m2・ K/Wと、同等の性能を柱に求めると、2.17(熱抵抗値)×0.12(木の熱伝導率)=0.26 となり、柱は、26㎝角(7.5寸)の太さが必要で現実的ではありません。

要するに、内断熱の場合、壁内部は、熱抵抗値2.17m2・ K/Wの断熱部分と熱抵抗値0.875m2・ K/Wの構造部分が混在しており、将来、目に見えない壁の中で、様々な不具合が生じることは、ご理解いただけるのではないでしょうか。

ちなみに、標準のソーラーサーキットの熱抵抗値は、0.06÷0.024=2.5m2・ K/Wとなります。

もちろん、外断熱ですので、熱橋の影響は受ける事なく、高い断熱性能が長期間発揮され、構造部分の性能も、オマケ程度ですが、逆に付加されるということになります。

少々、複雑で面倒な話になってしまいましたが、新築時の住宅性能を長期間発揮する為にも、断熱方法は非常に大事で、重要なポイントとなりますので、是非ご理解いただければ幸いです。