芭蕉が酒田に滞在した期間(7月29日~30日、8月3日~9日)にあわせ、
7月29日~8月9日の期間限定で、当館所蔵で酒田に唯一遺された自筆の句≪玉志亭唱和懐紙≫(山形県指定文化財)を清遠閣にて特別公開します!
この玉志亭唱和懐紙とは、元禄2年(1689)旧暦の6月、三山巡礼や象潟行脚を済ませた芭蕉と曾良が、酒田の近江屋三郎兵衛(俳号・玉志)宅に招かれた折に、町医者の伊藤不玉と亭主の玉志加えた4人で、瓜のもてなしの遊びに興じた即興の発句を残したものです。
あふみや玉志亭にして、納涼の佳興に瓜をもてなして、
発句をこふ句(て曰)なきものは喰事あたはじと戯けれバ
初真桑(はつまくわ)四にや断ン輪に切ン ばせを
初瓜に(や)かぶり廻しをおもひ出ヅ ソ良
三人の中に翁や初真桑 不玉
興にめでゝこゝろもとなし瓜の味 玉志
元禄二年 晩夏末
と書かれています。
芭蕉は、美味しそうな初ものの真桑瓜を、縦に四つに切ろうか輪切りにしようか…と詠んでいます。
簡単な句のように感じられますが、技巧をこらさないこの「軽み」こそが芭蕉の真骨頂と言えます。
また、芭蕉自筆の文字にも注目して観て下さい。
楽しげな席で書かれたものだけあって、普段の書風より柔らかく感じられます。芭蕉は奥の細道の中で酒田に最も長く滞在しており、旅の疲れを癒しながら風流を楽しんだことと思われます。
そんな芭蕉の心情、様子が、この懐紙からも伝わってきますね。