7月13日に行われた、館長講座「酒田と江戸の俳諧資料」につてご報告します。
この講座は、企画展「酒田と江戸の俳諧資料」に関連するイベントで、当館館長・田中章夫が、松尾芭蕉を中心に酒田の俳諧の歴史を解説しました。
話の中心はやはり松尾芭蕉。当館所蔵の県指定文化財《玉志亭唱和懐紙》から見えてくる、酒田来遊時の芭蕉の行動や心情を読み解きました。
句のない者には瓜はおあずけという座興の中で、芭蕉は「初真桑四にや断ン輪に切ン」と詠んでいます。句意は「美味しそうな初物の真桑瓜が出された。四つに縦割りにしようか、横に輪切りにして食べようか」。宴の場らしい即興の軽い句で、主人への挨拶の気持ちが込められています。
この自然体で楽しげな句と、芭蕉のリラックスした筆の運びをみても、芭蕉が酒田でいかに気持ちよくもてなされたが分かります。
また、酒田俳諧の第二期黄金期となる常世田長翠にもふれました。
長翠は本間家四代当主・光道の庇護を受け、江戸から酒田へ定住します。現在長翠の句は、本間家をはじめ、酒田市内の神社仏閣、個人宅などに遺っています。
芭蕉没後、「蕉風」と言われるその精神は様々に枝分かれし、酒田では俳諧のプロ集団「美濃派」と、常世田長翠を中心とする「春秋庵系」の二本柱があったことが展示からも分かります。
最後の質疑応答では、酒田はもっと芭蕉来遊とPRし、関係する場所を分かりやすく整備するべきとの意見もありました。
今回の講演は、酒田の歴史や俳諧に詳しい方々も参加され、芭蕉人気と郷土史への関心の高さを再確認する内容でした。
次回講座もご期待下さい!
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