11月1日より開催中の展覧会『大正・昭和の洋画 ―美から「表現」へ―』から、池田亀太郎の《塩鮭図》をご紹介します。
池田亀太郎(1862~1925)は酒田出身の洋画家です。
明治17年(1884)、洋画家・高橋由一が酒田を訪れた際に西洋画法に触れ、由一から「絵描きになりたいなら、先ず写真術を習いなさい」と助言を受けます。上京し写真術を学び、帰郷後は酒田に池田写真館を開業。写真師として活動しながら、写真技術を取り入れた迫真的な油彩画と多くの絹地肖像画を制作しました。
明治時代の油絵といえば、重要文化財に指定されている高橋由一の《鮭図》が有名ですね。亀太郎の《塩鮭図》は由一の影響が強く見られ、細部までよく観察して描かれた秀品です。明治時代を代表する視覚的再現描写の洋画といってよいでしょう。
亀太郎の鮭図と由一の鮭図の一目で分かる大きな違いは、頭が上下逆になっていること。これは、庄内地方では全国的には珍しく尾っぽを上に吊るす習慣があったからであり、《塩鮭図》は由一の模写ではなく、亀太郎の写生によって描かれたことがわかるります。
酒田市の指定文化財にもなっている池田亀太郎《塩鮭図》板・油彩(酒田市美術館蔵)は、12月23日(月)まで展示しております。展覧会では、美術・芸術の定義が「再現描写の美」から「作家の表現性」へ大きく変化する明治から大正に時代のセクションでご紹介しております。酒田の洋画家・池田亀太郎の迫真の描写をご覧ください。
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