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今月展のみどころ〈3〉

  • 今月展のみどころ〈3〉
開館15周年記念展「山形・天童×広重・浮世絵」のみどころを紹介しています。
今回は“山形の風景”です。

1回目で紹介した「湯殿山道中略図」も江戸時代の山形市内の町並みを描いた作品ですが、この企画展では他にもできるだけたくさんの“山形の風景”を集めて展示しています。

写真の右の作品は、初代広重が描いた「六十余州名所図会 出羽」で、遠方に月山を望み、手前には山形の母なる川・最上川が流れています。
中央と左の作品は、二代広重が描いた鳥海山です。

そのほかに、鳥瞰図で有名な貞秀が手がけた庄内、米沢の風景。
上山から山形、寒河江を通って湯殿山までの道中を、山形在住の絵師・義川が描いた作品。
明治時代の山形市街地、済生館、蔵王高湯温泉など、山形県民にはおなじみの景色が並んでいます。

山形県民にこそ見ていただきたい企画展です。
この機会にぜひご覧ください!


開館15周年記念展
【山形・天童】×【広重・浮世絵】
10月29日(月)まで開催中!(火曜日休館)
2012.10.10:hiroshige:コメント(0):[コンテンツ]

今月展のみどころ〈2〉

  • 今月展のみどころ〈2〉
今日ご紹介する今月展のみどころは〈天童広重〉です。
これは天童織田藩の依頼によって広重が描いた肉筆画です。

幕末、禄高二万石の小藩である天童藩は苦しい経済状態にありました。
この財政難を乗り切るため、藩は領内外の豪商、豪農などへ十年年賦の御用金を課しその返礼として、すでに江戸で人気絵師であった広重の肉筆画を下賜しました。
作品総数は明らかではなく、二百幅以上あったのではないかと推測されます。作品はすべて二幅か三幅の連幅形式で、絹本に淡い彩色、落款は「立斎」で統一されています。
現在では天童のために描いた作品ということで、この作品群を〈天童広重〉〈天童もの〉などと総称しています。(画像の右の2組の掛軸が〈天童広重〉)

では、天童藩から広重に依頼されるのには、どういった経緯があったのでしょうか。

ひとつは天童藩医の田野文仲との親交説があげられます。
上の画像の左端の肖像画が田野文仲利和像(天童市美術館蔵)です。
文仲は藩医の子として江戸に生まれ、嘉永二年(一八四九)に羽州天童藩へ移住しました。この作品は文仲が天童へ移る年の春に描かれていることが軸の書付からわかります。経緯や内容は不明なものの、広重とは親しい間柄にあったとみられます。

もうひとつが天童藩士と狂歌を通じた交遊説です。
広重は「東海堂歌重」という名で狂歌を詠み、狂歌本の挿絵も数多く手がけています。
また狂歌は天童でも盛んで、天童歌垣(歌垣=判者)を称した吉田専左衛門、同じく歌垣の称をもつ木村宮之助など地域の狂歌界を代表する人々のもとに何十人という弟子がつき、一大勢力となりました。江戸詰の天童藩士たちと広重とは同じ連で狂歌をたしなんでおり、その中で肉筆画制作が依頼されたのではないかと考えられています。


狂歌本の中には「東海堂歌重」の名前が見えます。


今回はめずらしい狂歌本の下絵も展示しています。
中には天童藩士の文歌堂真名富(吉田専左衛門)の姿も描かれています。


この機会にぜひご覧ください!


開館15周年記念展
【山形・天童】×【広重・浮世絵】
10月29日(月)まで開催中!(火曜日休館)
2012.10.07:hiroshige:コメント(0):[コンテンツ]

今月展のみどころ〈1〉

  • 今月展のみどころ〈1〉
現在、広重美術館では開館15周年記念展「山形・天童×広重・浮世絵」を開催中です。
今日から数回にわたって、展覧会のみどころをご紹介します。

まず1作品目は「湯殿山道中略図」。
これは、山形市内の八日町、十日町、七日町の羽州街道沿いの町並みを描いた浮世絵版画で、絵師は初代広重、出版は十日町にあった崑崙堂という版元です。
当時、広重が山形に来たかどうかは定かでありませんが、作品中に「霞峰先生図 東都一立斎廣重 応需模写」と書かれているため、山形在住の絵師・霞峰の絵をもとに広重が模写したものと考えられます。
またこの作品には、街道から蔵王山方面を眺めた【東方】と、出羽三山方面を眺めた【西方】の2種類があります。
それぞれ“変わり摺り”があることがわかっていて、今回は県内の施設等から複数の作品をお借りしています。空の色が違ったり、のれんの紋が違ったり、同じ店でも開いているのと閉じているのがあったり…ちょっとした変化ですが、そこには崑崙堂の意図があるように思います。「なぜそうしたのか」謎はたくさん残されていますが、興味深い作品です。
何より山形県民にとっては馴染みの場所ですので、より身近に浮世絵を感じてもらえるのではないかと思います。現在も続いている老舗も描かれていますし。

ぜひご覧ください!


開館15周年記念展
【山形・天童】×【広重・浮世絵】
10月29日(月)まで開催中!(火曜日休館)
2012.10.06:hiroshige:コメント(0):[コンテンツ]

ラオスの布とライフスタイル ~江戸に通じる自然と共にある暮らし~

  •  ラオスの布とライフスタイル ~江戸に通じる自然と共にある暮らし~
トークイベントのお知らせです。
ゲストは、ラオスで布づくりをしている牧さんご夫妻です。

天然の繊維と染料で手間ひまかけた布づくり…
自然と一体になったラオスの生活…
そこには近代文明が忘れてしまった大切なものがあります。

江戸時代の日本は循環型社会といわれ自然とともにありました。浮世絵に描かれている江戸とラオスの生活には通じるものを感じます。

このイベントでは、牧さんご夫妻のお話をうかがいながら、ラオスと江戸に学び、これからのライフスタイルを考えてみませんか。


日時 11/4(日)14:00~16:00

講師 牧雄彦さん、牧喜代子さんご夫妻

一般/前売 1,500円 当日1,800円
学生 /前売・当日1,000円
※入館料込。広重美術館の11月展「お江戸ライフスタイル」もご覧いただけます。当日は13:00~展示解説を行います。

主催/広重美術館・スローファッション山形

ご予約は広重美術館まで…
tel.023-654-6555
e-mail yoyaku@hiroshige-tendo.jp
2012.09.30:hiroshige:コメント(0):[コンテンツ]

開館15周年記念展【山形・天童 × 広重・浮世絵】

  • 開館15周年記念展【山形・天童 × 広重・浮世絵】
このたび、おかげさまで開館から15周年を迎えることができました。
そこで10月の企画展は、開館15周年を記念し【山形・天童 × 広重・浮世絵】と題し、山形や天童にゆかりの作品を展示いたします。
「なんで天童に広重美術館があるんだろう?」そんな疑問をお持ちの方にもおススメです。

ちなみに写真の中の作品は、初代広重が描いた出羽国(山形)の月山と最上川です。
浮世絵ってむずかしそうと思っている方でも、こうして見慣れた風景が描かれていると見やすいのではないでしょうか。ほかに、山形市街地や酒田、米沢の風景も展示されます。

ぜひこの機会にご覧ください。



開館15周年記念展【山形・天童 × 広重・浮世絵】

会期 9月28日(金)~10月29日(月)

 初代歌川広重(1797~1858)は、四季折々の美しい日本の名所絵を数多く手がけ、今なお人々に愛されている浮世絵師です。幕末、広重は天童織田藩の依頼を受けて大量の肉筆画を描ました。現在その作品群は“天童広重”と呼ばれています。また同時期には、山形藩の版元・崑崙堂(北条忠兵衛)からも錦絵や絵暦(正月引札)などが出版されています。江戸で活躍した広重と地方との意外な繋がりはこれまで部分的には知られるものの、詳細については未だ謎が多く残っています。
 当館の開館15周年を記念して開催する本展では、肉筆画依頼のきっかけとされる狂歌を通じた天童藩士や藩医・田野文仲らとの人物交流を紐解き、天童と広重の関係に焦点を当てるとともに、広重以外の絵師の作品も交え、江戸後期から明治時代にかけて浮世絵に描かれた山形の風景を紹介します。また、広重と山形の絵師や版元との関連性にも注目しながら、知られざる広重の一面を探り、新たな魅力に迫ります。
2012.09.24:hiroshige:コメント(0):[コンテンツ]