貝塚茂樹氏。武蔵野大学の教授で日本道徳教育学会会長。
そんな方の講演を聴く機会に恵まれました。
午後一番、ランチをとってすぐの時間に眠くならないか心配でしたが、
自分でも驚いたことに、どんどん話に引き込まれ、1時間まったく眠気を
感じることなく学ぶことができました。
道徳とは何か?
それは「つながり」だ、と。「へぇ」です(笑)。
言われてみれば、確かに。まったく道徳心の無い人と一緒にいたいとは
思わないですよね。人は一人では生きられず、道徳をもってはじめて
人とのつながりを持てる。なるほどそのとおり。
いろいろ興味深い話がありましたが、天野貞祐という哲学者の言葉を引き
合いに、日本人が戦前の国家全体主義の反動から、極端な個人主義に陥り、
日本人の美しい徳性が失われていることへの危機感を語っていたのが、
心に残りました。
以下は、貝塚先生が活用されたスライドをそのまま掲載します。
極端に走りがちな私達。見失ってはいけないことだと感じました。
肥大化した「私」を「公」に結びつける
― 天野貞祐の「中庸」―
戦前 =「国家あるを知って、個人と世界の存在理由を無視していた」極端な国家主義の時代
戦後 =「個人のみを主張し、ややもすれば国家を単なる手段化しようとする」極端な個人主義の思想が蔓延している時代
→ いずれも中庸・中道を逸した時代
私生活についてみても、政治や思想においても、極端に走る傾向の強いことは、わたしたち日本人の大いに反省を要する点ではないでしょうか。わたくしは一個の哲学学徒として、つねに中道を求めて止まないつもりでいます。ひとたび右に走ってもついて走らず、左に走っても立ち止まって中道を求めようと思います。それ故にひとりが国家あるを知って、個人と世界とを知らない時代には、人格の尊厳を力説し、今日ひとりが個人あって、個人が国民であることを忘れる時に当たっては、国家の存在理由を主張することは、哲学学徒の使命だと信じています。
(『今日に生きる倫理』)
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