英のノート

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 転勤の無い私立学校に勤めることは,そこで働きたいという職場選択が前提となる。
 私が九里学園高校を選択したのは,九里学園が偏差値教育に毒されていないからと言える。
 学校教育の目的は,その人が豊かな人生を歩んでいけるように後押しすることだと考える。そのために一番必要なことは,その人を否定せず,良いところを伸ばし,周りの人から愛され信頼されるように導くことである。つまり,長所や夢を大切に伸ばし,他人のために頑張れる人に育てることだと思うのである。そのためには,生徒本人が自分を肯定し,自分を守ることよりも他人のために苦労できる強さを身につけなければならない。そして,そのためには,導く大人の側も強い信念と自信を持たなければならず,その前提として大人はしっかりとしたアイデンティティーを持っていなければならない。
 しかし,65年前の敗戦で日本人は自分たちのアイデンティティーを見失ったのではないかと思えてならない。アイデンティティーを失った集団は金儲けに走る,というパターンがある。自分が確立していないからこそ,自己保存に努め,競争意識を持つようになる。そんな中で日本経済は急速に成長し,競争社会は助長され,そこを上手に勝ち抜くために偏差値が普及した。偏差値教育では「他人に勝つことが自己保存につながる」という意識が育ち,負けないために短所が叩き鍛えられる。成績はタテ一列に並べられ,生徒は順位の上下に一喜一憂する。そんな「勉強」を子供たちは嫌い,あるいは数値を上げ他人に勝って認められることに喜びを感じるようになる。
 九里学園高校では教科目選択制がおこなわれている。生徒たちは個々に自分の時間割を持ち,成績に順位などつけられない。生徒一人一人が自分と向き合い,その長所を生かす進路を目指す。それに対し学校は,普通科高校でできる限りの後押しをするため,経済効率を度外視してたくさんの授業を準備し,生徒はそれを選択する。授業以外でも,部活動で準備しきれない体験・経験のために教養講座クノリ・ユースフルー・スクールが準備されたり,国際交流を望む希望者には長期交換留学・短期研修旅行・来日留学生のホームステイ受入れなど多段階の体験プログラムが準備されている。校外活動でも単位が取得できる制度や,高校では珍しいホームヘルパー2級取得のための授業,CGの授業まである。また,生徒の進路が多岐に渡ることで,生徒同士が互いに学び合うこともとても多い。私は九里学園高校の教育について,生徒にとってのキーワードは「選択」であり,学校のキーワードは「総合」であり,その行き着く先は「個性」「自己肯定」「社会性」であると感じている。
 「情報化」が叫ばれる昨今,良き情報発信・良きコミュニケーションが社会のニーズである。勉強嫌いの「受身」人間や「自己保存」「他者排斥」習慣人間では,このニーズには応えられない。「自己肯定」に裏づけられた「個性」と「社会性」が大切なのである。今こそ,戦後日本が見失いかけた本当の学校教育に立ち返り,一人一人の笑顔が輝く社会人を育てなければならないと思う。そういう思いを持って見たときに,九里学園高校は私の思い描く学校といえるのである。
2009.10.21:ei01:count(1,087):[メモ/コンテンツ]
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