下流社会の実像

 三浦 展(みうらあつし カルチャースタディーズ研究所主宰、消費社会研究家)の「下流社会の実像」と言う講演を聴いてきましたので報告します。

 30歳前後の階層意識は40%が下流とのことである。未婚男性の7割が下流意識を持ち、非婚化・少子化にも色濃く影響を与えている。女性の階層意識も低下しており、非正規雇用による経済的問題や所属意識が低下していることが、安定と安心感を阻害し下流意識に結びついている。

 雇用対策が少子化対策の特効薬だと考えている。結婚率(y軸)と年収(x軸)をグラフ化すると、見事なS字カーブを描く。年収500万円が結婚できるか否かのポイントである。年収700万以上は数%しかないが、女性の要求は7割を超す。下流化する人間の特徴は、体力・精神力がなく、就職活動が苦痛(コミュニケーションが苦手)であるとの共通点がある。

 女性の生き方は多様化したが、幸福は多様化していない。女性の所得格差は拡大している。階層意識が高い女性は多くの商品の価値を決めている。結婚すれば階層意識を上げることができる。既婚で正社員は“所属感”があるが、未婚で派遣社員には“所属感”はない。ステータスとして「ホームパーティが上流の証」になってきている。

 階層意識が下流の人には、食育が必要である。米国にホワイトトラッシュと呼ばれる人達がいるが、総じて下流の人達は食べることに関心がない。正社員と非正規社員では読む雑誌も異なる。上流の人達はCanCanや日経ビジネスを好み、下流の人達はSEDAなどストリート系の雑誌を好む。上流の人達は仕事にもファッションにも意欲がある。

 団塊の世代に転じると、男性は上流(15%)中流(38%)下流(46%)、女性は上流(19%)中流(47%)下流(34%)の階層意識である。団塊の世代の半数は年金が待ち遠しく、65歳まで働くつもりでいる。

 階層意識が上流であることと、いわゆる上流階級・富裕層の概念は異なる。階層意識が下流であると、暴力化や反社会的行動(犯罪)の発生も懸念される。職業体験教育は、経済的自立の必要性の観点からも必要と考える。少子化対策は、安心と安定を保証する政策であるべきで、終身雇用は日本のセーフティネットと言う民主党の主張は千葉補選で支持された。自由が増えれば不安も増える。下流社会の犠牲者とも言える若者が自民党を支持するのは、自分たちの現状を良く認識出来ていないと思われる。
2007.04.18:dai:[学習]

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