内永ゆか子(うちながゆかこ 日本IBM㈱取締役専務執行役員)の「戦略としてのダイバーシティ」と言う講演を聴きましたので報告します。
IBMのダイバーシティは、90年代初めにルイス・ガースナーの経営改革によって大きく進展した。それまでのメインフレーム中心からソフト・サービス中心へのビジネスモデル転換が有名だが、組織マネジメントの改革として着手したのがダイバーシティ・マネジメントである。ダイバーシティ・マネジメントとは、女性・高齢者・外国人などの多様な人材を活用する企業戦略である。
ダイバーシティの具体的な取り組みとして、「ウイメンズ・カウンシル」がある。98年当時、女性社員比率は13%、管理職比率は男性の1/8、女性の離職率は男性の2倍であった。これを5年間で、女性社員比率は16%、管理職比率と離職率は男性と同率にまでもってゆく目標を掲げて実現した。
ダイバーシティを阻む三つの理由(女性が早期に辞める理由)がある。
1.将来像がみえないこと
結婚や出産で辞めていくだけでなく、転職やMBA取得のために辞めていく人が多い。このまま仕事をしていても将来の展望が開けない。目指すべきロールモデルがない。と言うのが閉塞感を生む大きな原因になっている。
2.家事と仕事の両立
今もって女性の職場進出の障害として存在している。
3.オールド・ボーイズ・ネットワーク
男性社会が作り上げた「仕事はかくあるべし」という暗黙のコミュニティ文化のことで、さまざまな機会を通じて男性には伝承されるが、女性には伝えられないことに特徴がある。例えば、意見をはっきり明言すること、正論を吐くこと、誤りを指摘することなど、表向きは正しいとされる行為が、「場が読めない」「ひと言多い」「余計なことを言う」と敬遠されてしまう。
対策として、トップ・エグゼプティブのコミットメントによるメンタリング・プログラムを実行した。
1.女性社員のネットワークとロールモデル確立
2.Eワーク、オンデマンドのワークプレース(在宅勤務)
3.信頼できるメンターの存在 とりわけネットワークは重要である。
キャリアアップはしんどくないかとの質問には、管理職はイタキモ(痛いけど気持ち良い)景色が違ってくる、と言っている。
女性活用をダイバーシティ・マネジメント戦略と捉えている点が新鮮に感じられた。
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