火起しでっぽ 〜キャリアネットワーク〜

火起しでっぽ 〜キャリアネットワーク〜
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2003年3月に発行された本です。このあと続版(実践編)が11月に発売されています。
小泉内閣が進めている構造改革は、新しい「階級社会」を作る方向、すなわち勝ち組、負け組を生み出す社会に向かっていると決め付けています。
アメリカ型のマーケットメカニズムで物の値段が決まる仕組みを労働市場に持ち込んだためであるとも明言しています。
「格差社会」の到来と拡大を予想し、サリーマンの年収も300万台が90%占める社会になるともいっております(1%の1億稼ぐエリート90%以上の300万稼ぐグループ、残りは非正社員、フリーターなどの100万クラス)。
したがってこれからは年収300万円で豊かな生活を送るために意思改革(生活のリストラ)と行動の改革が必要であると警告しています。

目次は下記のとおりです。
 1章 〜 日本経済に起きた「最大の悲劇」
 2章 〜 日本に新たな階級社会が作られる
 3章 〜 1%の金持ちが牛耳る社会
 4章 〜 年収300万円時代の「豊かな」生き方

キャリアに関して印象に残った部分(メモ代わり)
 1)1995年に日経連が発表した「新時代の日本的経営」では、雇用形態を3つのグループ、すなわち「長期蓄積能力活用型グループ」、「高度専門的能力活用型グループ」、「雇用柔軟型グループ」に分類し、これまでの終身雇用に近い雇用形態を長期蓄積能力活用型グループに限定し、高度能力活用型グループと雇用柔軟型グループについては、契約社員や、派遣社員、パートタイマーなど非正社員で対応する方針を明らかにした。
つまり、大企業の方針としては、従来のように、一律正社員として採用する時代はすでに終わっているということだ。(136P)
 2)これまでの価値観だったら、日本は「負け組」だらけになってしまうことになるが、この後戻りできない流れに、希望がないわけではない。今までは「負け組」と呼ばれていた人たちこそが、いままでになかった働き方と従来の常識とは違った新しい価値観を築いていく可能性があるからである。(137P)
 3)景気が良くなっても、企業は以前のように正社員を採用しない。
結局、サラリーマンにとって何が売り物になるのか。
資格でも英会話の能力でもない。ズバリいうと、それは仕事の中で積み重ねてきたキャリア、実務能力だ。それしか売れるものはない。特に手に職を持たないホワイトカラーの場合はそうだ。
「経理のプロ」でも、「苦情処理のプロ」でもなんでもいい。自分ならではといえる売り物を身につける。それがキャリアなのだ。(150P)
 4)30歳を過ぎてからの転職に必要なのは、幅広い専門性である。あまり高い専門性を確立してしまうと、その職種の需要が飽和してしまったり、新しい技術に置き換えられてしまったときに、就職先を失ってしまうのだ。いわゆる「つぶしが利かない」という状態である。(171P)
 5)30歳を過ぎたら、自分のキャリアを意識して作っていくことだろう。普段から「自分はこの分野でがんばりたい」と強く主張しているのと、言われるままにローテーションに応じているのとでは、キャリア形成に大きな違いが出てくるのは当然のことである。(174P)
 6)「老後のための貯蓄」よりもすべきこと
収入のレベルに合わせて、いかに生活をリストラできるかが問題なのであって、初めに消費レベルを固定して考える必要などないのである。老後の生活のためにお金を準備する余裕があるのだったら、老後の生きがいつくりのために投資したほうがよほどましである。老後のために本当に準備しなければならないのは、生涯自分が活躍することのできる場である。会社との縁は定年とともに切れてしまう。だから、どんなことでもよい。一生、自分のことを必要としてくれる場があれば、心豊かな老後を送れる。事業でも良い、ボランテアでもよい、研究でも良い、芸能やスポーツでも良い。大切なことは、一日でも早く始めることだ。早く始めれば始めるほど、プロとして自立できるチャンスが膨らむ。
 7)夢を語ってはいけない。「いつかできたらいいね」という夢は永遠に実現しないことが多い。いざやってみたら思っていたのと違ったということも多いのだ。繰り返すが、必要なのは「ドリーム(夢)ではなく「タスク(課題)」だ。思いついたらすぐにやる。駄目だったら、すぐに別のものに切り替える。(194P)
 8)本当に「豊かな」生き方とは
もう今までのように収入が増えていく時代ではない。収入が減っていくのは避けられないし、いままでのような「安定」は失うとしても、すでに日本は物質的には十分に豊かなのだ。物はあふれるほど持っている。生活のリストラをしても、それほど生活水準が悪くなるわけでもない。それなのに「負け組」になる不安に怯えながら毎日走り回るような生活を続けるのか。あるいは「勝ち組」になるという幻想を捨てて、自由な時間を、余裕を持って楽しめる生活を求めていくのか。私は後のほうがずっとまともだと思う。人間はたった一度の人生を幸せに暮らすために生きている。
最近の日本人の生活は本当に幸せなのだろうか。「負け組」になることを恐れ、何とか「勝ち組」に残ることを目標にした人生は、手段と目的を取り違えていないだろうか(198P)
 9)これからもっともっと大きなショックがやってくる。それは日本の「安定」を根本から揺るがすアメリカ型の階級社会だ。しかも、9割のサラリーマンは「負け組」のほうに向かう。そのときに、自分は落伍者だと思うことが、本当に負け組になってしまうことなのだ。ほとんど可能性のない階級社会での「成功」をひたすら目指すのか、それとも、割り切って自分にとって本当に「幸福」な人生を目指すのかー私は絶対、自分にとっての「幸福」のほうを選ぶ。(202P)

著者 : 森永卓郎
出版社: 光文社
価格 : 1470円(税込み)

by 長朗

2006.02.06::count(1,986):[メモ/オススメの本]
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