アーキビストのノート

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2018年度アーカイブズカレッジ修了論文報告会の様子をご紹介いたします。

報告会概要
日時:2019年3月16日(土)13:00〜17:00
場所:学習院大学目白キャンパス中央教育研究棟401教室
報告会と終了後の希望者による懇親会まで、多くの方に御参加いただき、活発な意見の交換が行われました。



4本の報告に関して概要をご紹介いたします。

第1報告:有薗舟仁(一橋大学大学院社会学研究科)「ボランティア団体による資料保全活動とその可能性 〜茨城史料ネットの活動から〜」

 
 有薗氏は自身における茨城史料ネットの活動を通して、茨城史料ネットの概要やその活動と果たし得ることができる可能性、また、その組織と活動の成果が失われる危機とそれに対する保全の方策について報告をした。
 報告の中で茨城史料ネットの活動について、2011年に発生した東日本大震災を契機にして発足したこと、その活動は茨城大学の教授・大学院生などを中心にして運営されているため、人員の入れ替わりが2年毎にあるため人材の流動性と不安定性、茨城史料ネットの組織データの損失という危機から発信と受信による資料情報の共有などを提示した。


第2報告:白山友里恵(上智大学大学院)「病院アーカイブズ構築のモデル研究」

 
 白山氏は、医療アーカイブズの中でも、その構築が進んでいない病院アーカイブズの構築について報告を行った。
 病院アーカイブズは、診療記録など個人情報が多分に含まれており、その扱いの難しさによりアーカイビングが進んでいない。そのような状況の中でも、作成段階から管理にかかわるアーカイブズの構築を検討する必要があるとした。そのために、保存場所や公開に関すること、評価選別など現状を鑑みながら具体的な可能性を検討し、モデルを示した。
 病院アーカイブズの構築は、現状を鑑みると非常に困難であり、モデルとして示した条件も厳しいと言わざるを得ない。しかし、そのような現状であるからこそ、今構築を進めていく必要があるとした。


第3報告::伊藤陽平(國學院大学大学院博士後期課程)「行政改革と稟議制の変容―1950〜60年代における公文書管理改善運動の展開を中心に―」

 
 本報告は、稟議制をめぐる相対する2つの学説が唱えられた空白の時期を検討するものである。その検討に際して、報告者は公文書管理改善運動に注目することで、多様な決裁規則が整備されたことを明らかにしている。
 報告者は、戦後間もない時期から検討を始め、当時の官僚のなかに「生地引」と呼ばれる事務に精通しているベテラン下級官僚の存在を指摘する。こうした「生地引」は、「個人知識」という一個人の能力によって行政を運営し続け、文書管理の面においてもその影響を受けていた。だが、高度経済成長による行政事務の肥大化は、徐々に行政事務の能率化を図る運動への気運を高め、「公務能率研究会」を立ち上げることにつながった。また、1960年前後より行政改革が実施され、上記の運動は一層進められた。その成果の一つとして、多様な決済規則を持つ稟議制であった。
 「生地引」と呼ばれる一個人の能力に依存してきた文書管理行政は、公文書管理改善運動などの影響を受けることで、一定のマニュアルに基づくシステマティックな行政運営への変化が見られた。本報告では、当時の史料を読み込み、行政事務の事例を扱うことで、その過程を実証している。


第4報告:藤本貴子(文化庁国立近現代建築資料館)「近現代建築資料の編成記述―大眄疑遊築設計資料群を事例に」

 
 藤本氏は、国立近現代建築資料館において大眄疑遊築設計資料群の整理に携わった経験を踏まえて報告を行った。
 2013年、文化庁によって設立された国立近現代建築資料館は、2017年に歴史資料等保有施設に指定された。公文書管理法の適用対象外となる歴史資料等保有施設として、近現代建築資料をいかに編成記述し、早期公開を実現するかが課題になったという。大眄疑遊築設計資料群については、目録記述にISAD(G)2ndを採用するとともに、建築資料の編成記述に有用な考え方としてスタンダード・シリーズを取り入れた。その際に直面した課題をより一般化して紹介し、近現代建築資料の編成記述に関する今後の見通しを報告した。


コメントカードより
・(有薗報告に対して)茨城史料ネットの事務局員として携わってこられた報告者ならではの報告で、民間ボランティア団体自身の資料をいかに保存すべきか、また活用すべきかの提案を伺うことができました。
・(白山報告に対して)報告で扱われた病院アーカイブズはとても興味深かったです。病院ならではの特性に配慮してアーカイブズを構築すべきであると思いました。
・(伊藤報告に対して)研究史上説の分かれていた稟議制についてその変容を公文書管理改善運動の進展を追うことで、クリアに整理していた点が説得的であった。
・(藤本報告に対して)建築資料の閲覧・公開に際し、公開の範囲を対象の設定で注意しなければならない点(注意している点)についてふと疑問に思いました。〜1980‘sまで対象としている為、現役の建築も含まれると考えられますし、物騒な世の中ですので、悪意のある利用者の存在も懸念しなければならないのが残念です。
・参考になる質問が多く、議論の活発さに驚きました。
・積極的に質問が出ていて良かったと思う。どの発表も発表者自身の経験に基づいていたり、具体的なアーカイブズの提案がなされていたように思う。レジュメも詳しく、分かりやすくしてあったので、書き方の参考になるものであったと思う。
・今年も多様なテーマ、詳細なご研究を聞けて非常に勉強になりました。毎年思いますが素晴らしい会です。感謝申し上げます。
・4者4様の異なる分野からの研究報告でしたが、個別専門のテーマから普遍的な問題を見出すことができ、いずれも興味深い内容でした。スムーズな運営ありがとうございました。

以上となります。
最後に、ご報告いただいた4名の方々、ご参加くださった皆様、そして会場をご提供いただいた学習院大学の関係者の方々に心より御礼申し上げます。

2019.04.05:archives:count(319):[メモ/コンテンツ]
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