さがえ九条の会
▼2006年政治展望
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〜五十嵐仁の転成仁語より〜 「講演と対談」には、40人ほどの方が出席されました。このHPを読み、「五十嵐というのはどんな顔をしているのか」と見に来て下さった読者の方も何人かおられたようで、声をかけていただきました。 このHPを読んでおられる方だと、すぐに話が通じます。初対面なのに、旧知の方のような不思議な感覚を味わいました。 読者の方からは、このHPを読むのを楽しみにしていると励ましていただきました。ありがとうございます。この場を借りて、お礼申し上げます。 小林さんとは、直接お話しするのは初めてでした。ただ、2004年秋に札幌で開かれた政治学会の分科会での報告を聞いたことはありますし、そのことは拙著『活憲』第1部第1章のなかの「『非武装論』と『墨守・非攻論』の間」(52頁以降)に書きました。 小林さんの方も私のことはご存知で、この政治学会の感想についても読まれていたそうです。このとき、共通論題U「グローバルパワーとしてのアメリカ内政構造」について、私は「内容的にも期待はずれで、門外漢の私であっても多くの不満と問題点を感ずるものでした」と苦言を呈しました。 小林さんは、このとき企画委員でこの共通論題を企画されたそうです。私の書いたことに反論されるのかと思いましたら、「私も全く同感だったんですが、企画したものが文句を言うわけにはいきませんから、率直に問題を提起していただいて、かえって有り難かったです」と言われ、恐縮してしまいました。 ところで、拙著では、小林さんの「墨守・非攻論」について、「『保持』が許される『武力』の水準については何も述べてはいません。たとえば、今日の自衛隊はその水準を超えているのでしょうか、いないのでしょうか」(54頁)と書きました。これについて「ご意見をうかがいたかった」(55頁)と……。 今回の「講演と対談」は、このような点についてご意見をうかがう絶好の機会でした。結論を言えば、この点でも小林さんと私との違いはほとんどありませんでした。 その他の点でも、ほとんど違いがありません。ただし、小林さんは、同じ卯年で私よりも一回り若く、それだけにエネルギッシュで行動的であり、現状についてのより強い危機感を表明され、より鋭い告発を行いつつ、地球平和公共ネットワークの代表を務められるなど、現状打開のための具体的な行動に取り組まれています。 小林さんは、その著『非戦の哲学』(ちくま新書、2003年)で、「テロ特措法はもはや解釈改憲ですらなく、争う余地のない完全なる憲法違反行為であり、そのようなことを行う政府は、すなわち『クーデター』を行うことになる」(112頁)と書かれています。まして、イラク特措法やそれに基づいてイラクに派兵された自衛隊を合憲であると考えられるはずがありません。 私は、政治学会の時点ではこの本を読んでおらず、したがって、小林さんのこれほどの厳しい見方を知りませんでした。今回、このような質的な意味だけでなく、量的な水準においても、自衛隊の現状は自衛力の範囲を超えているので縮小をめざすことを明らかにされました。 ということであれば、小林さんの「墨守・非攻論」と私の「気休め防衛論」との違いはほとんどなくなります。この場を借りて、拙著の記述を訂正させていただきます。 特に重要だと思ったのは、憲法九条については時代状況に応じての解釈が可能であり、憲法制定過程においてもそれは否定されていなかったという指摘です。この点で、「憲法原理主義」の立場を排するということ、そのような解釈においても、許されるのは「武力」の保持であって「軍事力」を持つことは許されないと主張されました。 つまり、「武力」の範囲にとどまる「自衛隊」でなければならず、「軍事力」を持つ「自衛軍」(日本軍)であってはならないというわけです。このような「武力」と「軍事力」との厳密な使い分けは、「政治哲学」や「公共哲学」を専攻されている研究者の面目躍如たるところがあります。 私は、拙著『活憲』で、「九条によってもたらされたさまざまな制約」について指摘し、九条改憲はその制約を取り払うことになると指摘しました。このような制約によって「軍事力」として機能することを抑制されているのが「武力」としての自衛隊だということになります。 今日の自衛隊は、長年にわたる「実質改憲」の積み重ねによって、質的にも量的にも「九条の制約」を部分的に踏み越えています。「武力」としてのあり方をはみ出すようになってきているということになるでしょう。 その「制約」を全面的に取り払い、アメリカにとって「使い勝手の良い軍事力」に変身させようというのが、九条改憲の狙いです。それを押しとどめるだけでなく、気休め程度の「武力」にまで縮小させるというのが、「活憲」の課題だということになります。 小林さんのお陰で、大変、理論的にスッキリさせることができました。これが、この「講演と対談」に出席した私の大きな収穫でした。
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