最上義光歴史館

山形市制施行135周年記念事業 「第11代山形城主最上義光公フレーム切手」はおかげさまで完売しました。

最上義光公フレーム切手

 最近、地元の郵便局が「最上義光公フレーム切手」というのを企画し、84円切手10枚のシートを1,330円で限定500シートを販売したところ、市内関係郵便局では早々に売れ切れ、全国でのネット販売分も1ゕ月もたたずに売れ切れ売れたようで、当館取り扱い分もわずかとなりました。当館分は全て買い取り制で、100枚のうち8枚以上売れ残れば赤字になるため、当初は慎重姿勢ではあったのですが、赤字にならずに済みそうです。
 さて、博物館にとってこうした物販収入は、近年ますます重要になっているのですが、売れ残りなども考慮すると、そうそう好き放題にできるものでもありません。当館の場合、基本的には受託販売が主で、直売品は研究資料や図録程度です。
 山形県内のミュージアムショップで最大なのは、水族館を別にすれば、上杉博物館でしょうか。歴史博物館としてのグッズはあらかた網羅しており、米沢織物などもあります。伊達グッズを扱う仙台市博物館のショップもまた品揃え豊富で、お土産を買われる団体客で賑やかです。それらに比べるまでもない当館は、ささやかな展示ケースに物販品を並べるのみです。
 さて、こうしたグッズとしては、絵葉書や栞、ボールペンやキーホルダーなどが定番でしたが、最近はあまり多くをみかけません。今はクリアフォルダや一筆箋、マグネットなどが定番商品となっており、最近ではマスキングテープやアクリルスタンド、そしてカプセルトイいわゆるガチャなどが人気のようです。当館もガチャが設置できるほど収蔵品があればいいのですが、まあ、缶バッチ程度であれば種類をかせぐことができるかもしれません。特に「家紋」の缶バッチは手堅いです。最上義光の兜のオリジナルピンバッチなども、特に外国の方に人気です。
 戦国時代を扱う博物館のキラーアイテムには「刀グッズ」というのがあり、当館でもキーホルダーの刀などを置いています。以前、刀型の「ようかん和菓子ナイフ」というものを見つけたのですが、予算の都合で見送らざるをえませんでした。かわりに最近、物販担当者が仕入れたのは、伸び縮みする全長70cmのプスチック製の刀「漆黒刀」というものです。その名のとおり刃も柄も全て黒いので、柄にひし形で赤色を着色すれば、あの鬼を倒す刀剣のようになるらしいです。密かに売れています。
 さらに戦国時代を扱う博物館としては、「花押グッズ」というのも有力です。バッチやキーホルダー、スタンプ、一筆箋などの一連の商品展開ができそうです。あくまでも「例えば」なのですが、伊達政宗公の花押は鳥の形のようなことから「セキレイ」と呼ばれ人気がありますし、上杉謙信公の花押もかなりのインパクトがあります。最上義光の花押は、歴代の足利家との区別が難しい、いわゆる足利様式という極めてオーソドックスなもので特徴に乏しいのですが、印判はなかなかに面白いデザインで、現在、来館記念スタンプのデザインに用いています。
 こうしたグッズで個人的に好きなのはスノードームです。ガラスの玉の中に建物などの模型が入っていて、雪のような粉がちらちら舞うあれです。正しくはスノーグローブといい1889年パリ万博で登場したエッフェル塔のもので人気が広まったとのこと。そう言えば昔、東京タワーのスノードームが土産品によくありました。昨今は、水族館とクリスマスの時期ぐらいしかお目にかかれません。それでも、このスノードームには熱狂的なコレクターがいて、また、自作する方もいるようです。「最上義光の騎馬像」とか「最上義光歴史館」などのスノードームが欲しいところです。そうそう、山形城址内にある山形市郷土館「旧済生館本館」なら、スノードームがピッタリかもしれません。
 以前、雪の降る旧済生館本館を描いた絵が切手になったことがあります。こちらはあたりまえの記念切手で、「1982年近代洋風建築シリーズ第4集」として発売されたものです。ちなみに「旧済生館本館」は、あの漫☆画太郎先生の仕事場となって描かれてもいます(「漫故☆知新」第一話表紙)。是非、当館も先生の仕事場のひとつに加え描いていただけたらと。湾曲した建物、和洋折衷の石庭、モデルが同一人物の二体の裸婦像、どうでしょう。当館の学芸員も、何気に先生の愛読者です。


近代洋風建築シリーズ「旧済生館本館」

(→裏館長日記へ続く)
 山形市で5月8日〜10日、「薬師祭植木市」が開催されます。熊本市・大阪市の植木市と並び日本三大植木市の一つとされています。
 さて、植木市で売り買いされる庭木というと、かつてはツツジなどが人気でした。母の実家では、わずかな庭に3段くらいの鉢棚をこしらえ、ツツジの鉢植えを50鉢くらい並べていて、植木市のたびに手頃なものを1、2株程度買っていたのでしょう。枝ぶりや花の柄の違いでいろいろ買っていたのでしょうが、小さい頃の自分には、全て同じにしか見えませんでした。盆栽のような作りこみをするわけでもなく、育つのに任せている感じでしたが、それでも買い置きの植木鉢が縁側の下にいくつもあり、植え替えに使う砂も一坪程度の小山ぐらいあり、自分は何の砂かもわからず、きっと孫のために砂場を用意してくれたのかと、ありがたく遊んだりもしていたのですが、そのうち猫の糞などが混じったりもしました。
 最近の植木市では多肉植物の寄せ植えなどはよくみかけます。あと植木市ではまだあまりみかけませんが、人気なのはテラリウムでしょうか。密閉されたガラス容器の中で水分が循環し、しばらく水を与えなくとも植物を育てることができます。容器の中には多肉植物とか、最近はコケも人気です。テラリウムであれば湿度管理もしやすく、そこに鉱石とか鉄道模型の人物フィギュアとかを組み合わせて楽しむ方もいるようです。またコケは、植木市ではコケ玉などが売られています。
 コケの世界はなかなか奥深く、「全国博物館園職員録」をみますと、国立博物館のみならず県立博物館でもコケを専門とする学芸員さんがいます。コケの研究者や愛好者は全国にいて、またコケの名所というのもあり例えば京都の苔寺が有名ですが、以前、青森の奥入瀬を旅行したときに、コケを観察するツアーというのに参加しました。そのガイドさんは若い方で、コケが面白くて面白くてたまらない、という感じの方でした。奥入瀬渓流には300種類以上のコケ植物が生息し、日本蘚苔類学会の「日本の貴重なコケの森」に選定されており、コケ観察ツアーには90分のライトと180分のディープのコースがあります。ルーペ片手に見て歩くのですが、自分はコケよりもルーペに愛着がわき、お土産にしっかり買って帰りました。このルーペは顕微鏡や望遠鏡で有名なメーカー品で、単品の他に「コケ観察セット」もあり、ルーペとともにスプレーボトルやコケ観察ガイドブック、ポーチなどがセットされています。コケがなくても気分がでます。
 山形市内にはコケを専門的に扱う会社があり、コケによる壁面緑化などを手掛けています。この会社では「富士の樹海コケ手作りセット」という約25cm四方の箱の中に樹海の複雑な色合いを楽しめるキットなども販売しています。もっとも、これに人物フィギュアを組み合わせてしまうのは、いかがなものかと。
 また、山形市に隣接する町には世界的な緞通メーカーがあり、コケ柄の絨毯があります。緑のまだら色の模様の柄で、なんとなくコケのモソモソ感が醸し出されていて癒されます。これは某国立競技場も手掛けたあの世界的な建築家がデザインしたもので、お値段も世界的な感じではあります。
 それでは最後に、いつものようにことわざを。「転石、苔(コケ)をむさず」ということわざがあります。" A rolling stone gathers no moss."(転がる石は苔を集めない。)というイギリスの諺が由来とのことです。実はこれがなかなかの曲者でして、場面や文脈によって意味が真逆になります。伝統を重んじるかの英国では、「頻繁に住所や職業を変えたりする人は成功しない」という意味でしたが、これが新天地の国アメリカでは、苔は否定的なものとなり、「活発に活動している人は、いつまでも古くはならない、新鮮だ」という意味になります。ということで、あのローリングストーンズは、イギリスでは風来坊とか根無し草となるのですが、アメリカでは活発で新鮮という評価になるのかと、どっちも合っているような。とにかく結構長い間、転がっています。もう、私が生まれた年から転がっています。
 日本の国歌には「さざれ石のいわおとなりて こけのむすまで」とあり、「小石が成長して大きな岩となり、それに苔がはえるまで」続いてほしいと願うものですが、この歌からは昨今、なんとなく「持続可能性」という語が想起させられ、すると現状維持ではだめなわけで、それこそ"like a rolling stone"というか、"How does it feel? "というか、なぜかボブ・ディランに行き着いてしまうのですが、あ〜、グダグダですみません。

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