最上義光歴史館
歴史館からのお知らせ
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2014年 4月 利用者アンケート集計結果
《平成２６年度４月分の入館者アンケート集計結果》 この集計結果は平成２６年４月１日から同３０日の間に入館した利用者を対象に行ったアンケートを集計したものです。 企画展 （４/１〜４/６） 常設展示 （４/８〜４/３０） 開館日数・・・・・・・・・・・・・２７日間 入館者数・・・・・・・・・・・２，４６６人 回答者数・・・・・・・・・・・・・１８１人 １．本日は最上義光歴史館に �ヾ覯菘犬鮓�に来た・・・・・・・・・・・・・・・１３％ �⊂鐇濺玄┐鮓�に来た・・・・・・・・・・・・・・４１％ �Ｎ省�見に来た・・・・・・・・・・・・・・・・・４６％ ２．�´�の方、企画展を何で知りましたか （１）ポスター・チラシ等・・・・・・・・・・・１５％ （２）歴史館のホームページ・・・・・・・・・・１２％ （３）新聞・テレビ・ラジオ等・・・・・・・・・１９％ （４）広報やまがた・・・・・・・・・・・・・・１５％ （５）知人から聞いた・・・・・・・・・・・・・・８％ （６）通りがかり・・・・・・・・・・・・・・・２７％ （７）その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・４％ �△諒�、当館をどこで知りましたか （１）旅行雑誌・・・・・・・・・・・・・・・・１２% （２）歴史館のホームページ・・・・・・・・・・・７% （３）インターネット・・・・・・・・・・・・・１２% （４）新聞・テレビ・ラジオ等・・・・・・・・・・４% （５）広報やまがた・・・・・・・・・・・・・・・２% （６）知人から聞いた・・・・・・・・・・・・・・４% （７）以前から知っていた・・・・・・・・・・・２５% （８）観光案内所 (駅など) ・・・・・・・・・・・７% （９）通りがかり・・・・・・・・・・・・・・・２３% （10）その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・４% ３．歴史館の入館は何回目ですか （１）はじめて・・・・・・・・・・・・・・・・７４% （２）２回目・・・・・・・・・・・・・・・・・１３% （３）その他・・・・・・・・・・・・・・・・・１４% ４．ご覧になられた感想 （１）内容はいかがでしたか 常設展示 �‖臺僂茲�った・・・・・・・・・・・・・４３% �△茲�った・・・・・・・・・・・・・・・４４% ��ふつう・・・・・・・・・・・・・・・・１３% �い弔泙蕕覆�った・・・・・・・・・・・・・０% 企画展 �‖臺僂茲�った・・・・・・・・・・・・・５０% �△茲�った・・・・・・・・・・・・・・・４３% ��ふつう・・・・・・・・・・・・・・・・・７% �い弔泙蕕覆�った・・・・・・・・・・・・・０% （２）最上義光と最上家について �，茲�わかった・・・・・・・・・・・・・４３% �△錣�った・・・・・・・・・・・・・・・４９% ��わからなかった・・・・・・・・・・・・・２% �い匹舛蕕箸發い┐覆ぁΑΑΑΑΑΑΑΑΑΑΓ�% 〜利用者の声〜 ◎ めがねを持ってまた来たいです。 ◎入館して想定以上の展示。とても良かった。ありがとう ◎くわしく説明されていて見やすかった（写真等）小学生の方でもわかりやすいと感じた。 ◎引き続き 山形の宝ものを拝見したい。 ◎最上家のグッズ等土産物を増やして下さい。 ◎山形に住んで居っても義光・城下町・山形城の事 良くわかり易く説明され居り嬉しいです。もっと勉強して他県の人にも説明出来る様になればと思う。今日は子供達も大勢来ておりとても良い事と思った。 ◎専称寺所蔵の「大崎夫人」「駒姫」の肖像画を月に何日かお借りして、当館に飾って頂くとありがたい。その展示日を山形新聞に発表されるよう希望します。 ◎入館左側はもっと明るくして下さると助かります。 ◎無料ということで大変ありがたいです。 ◎山形のお宝もの展について、�．院璽垢涼罎療玄�本の「字」が小さくて見えなかったので、単眼鏡をお借りした。�◆岼版賄袈蕁廚糧�行年もいつなのか見たかった。 ◎ボランティアの人の解説がよかった。 ◎着物が美しくていつまでも見ていられる様でした。ボランティアの解説がわかりやすくてよかった。これからもがんばってください。 ◎静かで見やすかったです。ゆったりできました。 ◎もう少し展示物が多いと楽しい。 ◎企画展は興味深かったです。今後もこのような展示をしていって下さい。 ◎案内を聞けてよかったです。 ◎等身大人形があれば写真とりたいです。 ◎山形の人にとても愛されていると感じた。 ◎最上義光公の有名なかぶとをはじめ、多くの貴重な資料を見ることが出来、非常に満足した。 ◎よろいが展示されている位置が部屋の角でガラスの境目がよろいの中心に重なって見づらかった。 ◎たくさん資料があり、見ごたえがありました。また今度、ゆっくり見に来たいと思いました。 ◎他の戦国武将の方と比べて、御名前を耳にする機会が（若干）少なかったのですが、ひょんなきっかけから深い関心を抱く様になりました。私は京都出身で、今も市内に住んでおります。駒姫（様）を含む方々の刑場跡（瑞泉寺）は、ふだんよく通りすがる場所で、その度に大変複雑な悲しい気持ちになります。（ここに来る少し前に、御参りさせて頂きました。） ◎ボランティアの方の説明がわかりやすかった。御苦労様です。歌に良く出る、ベニ花や最上川がありますが、深い歴史を感じます。 ◎山形城や長谷堂城の戦いをジオラマで再現した展示があるとわかりやすい。 ◎勉強になった。 ◎わざわざガイド説明していただき、良く理解することができ、興味深く楽しい時間となりました。ありがとうございました。 ◎娘と一緒だったので少しわかった！！ ◎ずっと来たかったので満足です！ ◎もともとよく知っていますからなんとも。何点か「見どころ」カードが置いていますが、文調が軽いのが気になりました。とくにおいまの辞世の句の説明は少し考えてほしい。 ◎静かにみたかった。 ◎山形にずっと暮らしていても山形城のことはよく知りませんでした。今回あらためて勉強させていただきました。小学生の時にでもじっくり教えて（授業で！）いただいていれば、各地の史跡にももっと興味が持てて楽しかったのではないかと思います。山形の子供達にもっと知ってほしいと思います。とても楽しかったです。解説もありがとうございました！！ ◎周囲の山々の地名等も教えてほしい。 ◎新たな資料などあれば、展示してもらいたいです。 ◎最上氏以外の物があって、なぜ？初めて見たので、わからなかった。うすぐらいので字がよく読めなかったのが残念。 ◎戦国時代にはあまり表舞台に出てこない人物だけに、もっと全国的に宣伝すると良い。 ◎無料でしたが中身は良かったです。 ◎最上家と伊達家のドロドロとした関係も是非コーナー化して欲しい。 ◎刀剣小道具については作者名もあった方が良いのでは。 ◎祖先が大正初め北海道の北見（当時は野付牛）に入植したこともあり、今回山形にきました。山形城のことも最上家のことも知ることが出来良かった ◎簡易パンフレットがあると良かったです。 ◎当時の資料等上手にまとめられていて見ていてとても勉強になりました。 義光以降の藩主のデータもあると、もっと面白いと思いました。 ◎説明（案内人）が解り易かった。すばらしい館です。もっと市民に利用・活用して欲しい。 ◎目抜の展示がおもしろかったです。精巧なつくりに感動しました。 ◎１時間番組でも良いのでＴＶで何か最上義光の一生をドラマで観たいですね。 ◎街絵図の氏名が判別出来る位の大きさだとよかった。 氏名を探しに入館したので。 ◎ＮＨＫ大河ドラマでもイケルのではないでしょうか。応援します！ ◎文書の説明書きが、文語体であったので、これを現代の口語体での説明書きにして欲しいと思う。 ◎一度ではよく解らないこともあり再度ゆっくり来たいと思います。 ◎説明して下さる方のおかげでとてもよくわかりました。 ◎もう一度見たいので、このまま運営を続けられるようお願い致します。 ◎もっと広報してもいいかもしれないと思います。 ◎無料でガイドの方から、いろいろお話を伺いでき、大変勉強になりました。 ありがとうございました。また、城が復元した頃お伺いしたいと思います。 ◎無料でなくても良い内容でした。 |
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《平成２５年度３月分の入館者アンケート集計結果》 この集計結果は平成２６年３月１日から同３０日の間に入館した利用者を対象に行ったアンケートを集計したものです。 企画展 （３/１〜３/３０） 開館日数・・・・・・・・・・・・・２６日間 入館者数・・・・・・・・・・・１，６９４人 回答者数・・・・・・・・・・・・・１２７人 １．本日は最上義光歴史館に �ヾ覯菘犬鮓�に来た・・・・・・・・・・・・・・・・５％ �⊂鐇濺玄┐鮓�に来た・・・・・・・・・・・・・・６０％ �Ｎ省�見に来た・・・・・・・・・・・・・・・・・３５％ ２．�´�の方、企画展を何で知りましたか （１）ポスター・チラシ等・・・・・・・・・・・１０％ （２）歴史館のホームページ・・・・・・・・・・１９％ （３）新聞・テレビ・ラジオ等・・・・・・・・・・７％ （４）広報やまがた・・・・・・・・・・・・・・・２％ （５）知人から聞いた・・・・・・・・・・・・・１０％ （６）通りがかり・・・・・・・・・・・・・・・４１％ （７）その他・・・・・・・・・・・・・・・・・１２％ �△諒�、当館をどこで知りましたか （１）旅行雑誌・・・・・・・・・・・・・・・・１６% （２）歴史館のホームページ・・・・・・・・・・・３% （３）インターネット・・・・・・・・・・・・・１７% （４）新聞・テレビ・ラジオ等・・・・・・・・・・３% （５）広報やまがた・・・・・・・・・・・・・・・１% （６）知人から聞いた・・・・・・・・・・・・・・５% （７）以前から知っていた・・・・・・・・・・・１５% （８）観光案内所 (駅など) ・・・・・・・・・・１２% （９）通りがかり・・・・・・・・・・・・・・・２１% （10）その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・７% ３．歴史館の入館は何回目ですか （１）はじめて・・・・・・・・・・・・・・・・７９% （２）２回目・・・・・・・・・・・・・・・・・１１% （３）その他・・・・・・・・・・・・・・・・・１１% ４．ご覧になられた感想 （１）内容はいかがでしたか 常設展示 �‖臺僂茲�った・・・・・・・・・・・・・４５% �△茲�った・・・・・・・・・・・・・・・４３% ��ふつう・・・・・・・・・・・・・・・・１２% �い弔泙蕕覆�った・・・・・・・・・・・・・０% 企画展 �‖臺僂茲�った・・・・・・・・・・・・・３１% �△茲�った・・・・・・・・・・・・・・・４９% ��ふつう・・・・・・・・・・・・・・・・２０% �い弔泙蕕覆�った・・・・・・・・・・・・・０% （２）最上義光と最上家について �，茲�わかった・・・・・・・・・・・・・４２% �△錣�った・・・・・・・・・・・・・・・５２% ��わからなかった・・・・・・・・・・・・・３% �い匹舛蕕箸發い┐覆ぁΑΑΑΑΑΑΑΑΑΑΓ�% 〜利用者の声〜 ◎また見に来ます。 ◎来年も企画展開催して下さい。楽しみにしています。 ◎長谷堂合戦を再開してほしい（さけのべ隊） ◎企画展の数が増えると楽しみです。 ◎もう少し照明が明るい方がよいと思います。（入場料有料であっても） ◎「Ｐ」を考えて下さい。（駐車場） ◎よしみつではなく、よしあきと読むことを初めて知りました。 ◎合戦図などふだん目にすることのないものなどを見ることができて大変よかった。かぶとや刀など古い戦国時代のものなど歴史好きには最高でした。 ◎無料で驚きました。大変素晴らしい品々に感動しました。説明があることで、分かりやすくて良いですね。鮭様（義光公）が山形市の方々に愛されているんだなぁとほっこりしました。これからも頑張ってください。 ◎地元にいながら、知らなかった義光の事をわかる様になったからよかった。 ◎ボランティアガイドもいて良かった。 ◎分かりやすい説明ありがとうございました。 ◎長谷堂合戦図屏風で義光が鉄の指揮棒を振り回している場面をみて驚きました。その後、本物の指揮棒が展示されていてさらに驚きました。刀よりも重い棒を振り回すなんて相当な腕力ですね。 ◎歴史上、必要な情報ですので大切に保管して下さい！ ◎無料なのをもっとアピールすればよいと思う。来るまでお金がいると思っていた。 ◎ボランティアの方の案内がよく、理解できた。ありがとうございました。 ◎上杉家との関連が分かるような資料があると面白いと思いました。 ◎ボランティアガイドさん（たぶん研究者）は大変よかった。 ◎今まで知らないことをガイドさんに説明していただき認識を新たにしました。 ◎最上家後の山形城主の活躍についてもコーナーを設けてもいいのでは。 ◎楽しく見学できました。 ◎係員の方が荷物をあずかってくださって助かりました。 ◎見る順番を床などに矢印で表示したら良いと思います。 ◎ボランティアのガイドの女性が熱く教えてくれたのがよかった。 ◎わかりやすく、素敵なガイドさんにガイドしてもらえてうれしい。なみだが出そうだった。ありがとう。 ◎もう少し説明があった方が良いと思います。 ◎歴史上、有名な人物は多くテレビでドラマ化され知っているが、その周辺の家来、敵方については少ない。伊達政宗のドラマで知り興味があった。 ◎義光と最上家の共通点などもっと知る事ができたらいいと思った。レンタルものがなく移動はつらくないかって思った。ベビィカー等 ◎施設もいい所ですぐわかりやすかったです。 ◎歴史（山形）にまつわる展示お願いしたい。 ◎ボランティアの方のお話がとてもお上手で今まで以上に山形に親しみが持てました。２０年後、復元が完了するのを楽しみにしています。 ◎ボランティアの方の説明を伺い、山形の歴史の一端を知ることができた。 ◎一般情報では知りえなかった人物像が伺えてよかった。 ◎駅に近くていい。その土地ならではのことがわかった。たくさんあるわけではないので見やすい。 ◎とても充実した展示内容でたいへん驚きました。ボランティアガイドさんの丁寧な解説がおもしろかった。入館料をとっても良いのではないでしょうか。また、山形に来た際に立ち寄らせていただきたいです。 ◎説明があり本当に良かったです。説明がなければ５分で出てしまいます。 ◎山形には仕事で何度も来ておりますが、これから少しづつ見に来る機会を作ろうと思います。 ◎ガイドさんの説明が大変わかりやすかったです。地元にいても知らなかったことが沢山わかりました。 ◎駒姫の存在をはじめて知った。歴史好きの人にはボランティアの方の説明があってすごくよいと思った。 ◎ガイドの方が丁寧に説明して下さり、とてもよくわかりました。かぶとがかっこよかったです。ありがとうございました。 ◎企画展、最上義光とそんなに関係なかったように思えましたが楽しかったです。 |
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訃報
最上家第四十七代当主最上公義氏が平成26年4月22日に永眠されました。 謹んでご冥福をお祈りいたします。 公益財団法人山形市文化振興事業団/最上義光歴史館 |
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(C) Mogami Yoshiaki Historical Museum
誉田慶恩『奥羽の驍将 最上義光』（人物往来社）は、５０年近く前の１９６７年に刊行されたものであるが、現在も最上義光（１５４６−１６１４）研究の際の必読書といえる。誉田氏は多数の最上義光関係史料の博捜のもとに、等身大の最上義光像に肉薄している。本書の特徴は、最上義光を英雄としてではなく、実像を実証的に明らかにしようとしているだけに、大いに示唆に富んでいる。本書を読めば、現在においても最上義光研究のおおよそを知ることができる。
しかし、その後の武田喜八郎氏、片桐繁雄氏らの研究や、『横手市史』ほかの研究によって、ようやく誉田氏の提示された最上義光像にも疑義が提起されている。
私自身もここ１０年ほど最上義光研究に従事し、できる限り史料の博捜に努め、２５０点ほどの最上義光書状などを収集できた。そうした史料などを使って見ると、誉田氏の玉著にもいくつかの問題があることがわかってきた。とりわけ、美術作品や文学作品が史料として使用されていない点なども大きな問題といえよう。そこで、『奥羽の驍将 最上義光』の問題点に注目しよう。
まず第１に、最上義光の幼年時代に関して、八日町の最上氏ゆかりの寺院宝光院旧蔵（現、山形大学図書館所蔵）の文殊菩薩騎獅像が全く利用されていない点がある。本像は刺繍仏であるが、それには、制作年・制作者名が刺繍されていてわかる。すなわち、この文殊像は、中野（山形市北西部）寿昌寺に住む源氏末葉の永浦尼が刺繍して、永禄６（１５６３）年４月１７日に法（宝）光院住職増円に寄付したという文言が刺繍されている。宝光院は、最上家の改易（１６２２年）後は、最上氏の氏寺ではなく上野寛永寺の末寺として生き延びたために、最上時代の史料、とくに中野時代はまったく不明であった。本文殊像により、宝光院の住職は、永禄６年当時、増円であったことがわかる。
ところで、刺繍者である永浦尼が住む寿昌寺は最上義守の菩提寺であったと考えられ、そこに住む尼は、最上義守の嫡妻か母と推測される。母だとすると、当時、６０歳を超えていたと推測され、当時は、平均寿命は短く、義守の母が生きていた証拠がないことから、ひとまず、永浦尼は妻だと考えたい。もっとも、尼だといっても、当時は在家の尼として、普通の生活を送っていた。
義守の正妻は、系図によって相違があるが、そのうち、最上氏と密接な関係にあった寺院の一つである「宝幢寺系図」によれば、小野少将の娘とされる。それゆえ、永浦尼とは、小野少将の娘であったと推測される。
ところで、注目すべきことに、永禄６年６月１４日には最上義守・義光父子が京都にのぼり、将軍義輝に拝謁している。この拝謁は、義光が元服し、その際、将軍の義輝（第13代将軍、１５３６〜６５）の一字をいただいた事に対するお礼と考えられる。すなわち、臣従の礼を行ったのであろう。
そこで、本刺繍の制作が、同年４月１７日であり、京都へのぼる２箇月ほど以前であることなどから、義守妻（義光の母）が、夫と息子の上洛の旅の安全と武運長久を祈って刺繍したものと考えられる（拙稿「山形市宝光院と文殊菩薩騎獅像」『山形大学大学院社会文化システム研究科紀要 第6号』, ２００９）。
次に問題となるのは中野義時である。誉田氏は天正２（１５７４）年の最上氏の内乱を通じて、最上義光の弟で、中野の城主となった中野義時と最上義光との対立に光りを当てている。誉田氏は、最上義守が義光の弟義時を寵愛して跡を継がせようとし、元亀２（１５７１）年に義光に家督を譲ったにもかかわらず、天正２（１５７４）年には娘婿の伊達輝宗の援助のもとに義光と戦った。これを最上の乱という。
この中野義時の存在に関しては、片桐氏ほかの実在を否定する見解が出、大いに注目されている。といのも、大澤慶尋『青葉城資料展示館研究報告「天正二年最上の乱」の基礎的研究』 （２００１）によって、天正２（１５７４）年に起こった最上の乱の実態が明らかになり、天正最上の乱関係史料に出て来る中野殿とは最上義守であることが確実となった。すなわち、最上の乱とは義守と義光との対立であったのである。それゆえ、天正２年の最上の乱を最上義光と中野義時との抗争とみる説は成り立たないといえよう。とすれば、中野義時は実在しなかったのかというと、少し疑問が残る。
義守・中野義時と義光との対立・抗争説は、古くは『乩補出羽風土記』（１７９２年刊）あたりから見られる。それは、両所宮の里見光當氏らが作成を企画したが死去したために、結局、弟子平田一元が遺志をついで刊行した。その「中野城」の項目には
義守嫡義光に山形を領せしめ、二男義時を中野の領主とせり、然るに兄弟不和にして、兄義光を亡さんと企、中野村山王別当宝光院、山形吉事宮の神職大宮司と両家にて、調伏の祈祷有けるに、其催し既に顕れ、義光大に立腹有て、義時は切腹被仰付亡ひたり＊天正三年の頃とそ、その子備中仙台へ逃行＊山王別当宝光院は追放、大宮司は改易に成、吉事宮別当には成就院に被仰付、家中より宮の内え引越、（中略）、其後義光、薬師寺別当国分寺え御入之時、国分寺法印種々御詫言申上ければ、御厚免有て、山王社並宝光院共に山形に引地に被仰付、今の鉄砲町の宝光院是也、＊此時里見氏先祖、両所宮え押へのために、被付置しか、最上家改易の後威勢衰へ、いつとなく社家となれりとぞ、此事国分寺へ証文有＊
とあり、宝光院と山形両所宮の大宮司が中野義時に味方して義光を呪詛した。おこった義光は山王別当宝光院を追放し、大宮司は改易され、山形両所宮は成就院の支配下になり、城内から宮の内へ移した。その後、国分寺法印の取りなしで、山王社並宝光院共に山形に移ってきたという。
この話は、山王社並宝光院が中野から山形城下に移ってきた理由を示していて興味ぶかい。というのも、中野時代の宝光院の資料については、文殊騎獅像以外になく、別当についても、はっきりせず、なぜ山形へ移転したのかも不明だったからである。この話は、一方の当事者であった両所宮に伝わった伝承で、「此事国分寺へ証文」が当時においては残っていたと考えられ、大いに示唆にとんでいる。
ところで、義時は、最上系図の菊地本にのみ見えるとされるが、注目すべきは、光明寺本（１７４６年編纂）最上系図には、最上義光の弟に「中野殿」と見えることである。
光明寺は、最上ゆかりの寺院であり、義光兄弟の一人に「中野殿」という、中野を拠点とした人物がいた可能性は残る。
とすれば、一つの可能性として、最上の乱に際しては、元服前の子供であったために、父義守が主導者であり、前面にはでなかったにせよ、義守は「中野殿」と呼ばれる義光の弟を擁していた可能性はまだ残っているのではなかろうか。
近年の研究によって、明らかになったいま一つは、文化人としての最上義光像であろう。すでに国文学の方では、最上義光の連歌を詠む文人としての側面に大いに光りが当てられてきた。しかし、誉田氏はそうした側面には光が当てられていない。近年は、片桐氏らによって、文化人としての側面が大いに注目されている。最上義光は決して田舎侍ではなかったのである。
さらに、最上義光の「目指していたもの」、理想が明らかにされていない。最上義光が戦国の動乱を武力とたくみな外交戦略によって、しだいに最上川を下って庄内に勢力を拡大していった。それは、偶然ではなかった。
というのも、最上義光は、「羽州探題」たらんと夢見ていたからである。最上家は、斯波兼頼が羽州探題として入部したことに始まる。義光は、この羽州探題として山形・秋田を支配することが夢であった。その夢は、天正１６（１５８８）年に豊臣秀吉によって、羽州探題職に任命される（閏５月１１日付中山光直書状、『横手市史 史料編 古代・中世』４３４頁）ことによって達成することになる。
ところで、私は、最上義光発給文書を２５０点ほど収集してみた。最上義光文書は年欠文書が多く、義光の活動を年代順に追うことは困難であった。だが、『横手市史』などによって、伊達のみならず、小野寺らの戦国大名との関係を通じて年が確定されつつある。
また、従来は、１００点ほどの文書を使って最上義光の活動が論じられてきたこともあって、最上義光の生涯、とりわけ５７万石を領有した江戸時代の叙述も十分とは言い難い。
たとえば、図のような七得の小印が押された横折り紙の印判状は数多く残っている。とりわけ、慶長１７年６月４日付けのもは１００を超える寺社に出されたが、まさに慶長１７年こそは庄内支配も完成した最上時代の一大画期であったのだ。
この他にも論じたいことは多いが、紙幅がつきたのでこれで筆をおこう。
■執筆:松尾剛次(山形大学人文学部教授)「歴史館だより��20」より
松尾剛次先生の研究室のホームページ＞＞こちら