この重さの獅子頭にさらに幕を付け獅子舞をするのだから振り手も大変だ。
平成14年に制作し21歳となるが、その重さ故に損傷も激しく毎年の様に修理が続く。
歯打ちの度に、金箔は剥げ落ち、その下の漆の塗面もすり減り、下地も破壊して行く。
軸棒の右部分が破断し亀裂が入りボルトで修理。勢いよく口を開けると頭部の端が顎
の部分に当たり破損して修理。下顎のスペアも制作したが同じように破損してしまう。
先代の獅子は昭和39年佐藤耕雲の作の獅子頭で、昭和初期に制作された竹田吉四郎の
獅子をモデルにしたのだが、軽量化を為、薄く彫り過ぎ真っ二つになってしまった事から
厚く丈夫にと11kgの重い獅子頭を制作してしまった事が原因で重い獅子の制作を依頼され
た。木地完成時幾分軽く仕上がったが、同じ重さにと1.5kgの鉄棒を取り付けたが、次の年
取り外しを依頼された。その後、軸棒が折れたり修理が続いたが歯に衝撃を吸収する特殊
ゴムを上下の歯全面に貼り付けて落ち着いた。今回は21年ぶりに金箔を貼り直し、タテガミ
を増毛する事になった。西大塚や小松近辺の獅子舞で獅子のお清めや威勢をつける為に、
警護が清酒を口に含んで獅子に吹きかける。その為か、白の馬毛が金髪に化学変化してしま
った。脳天付近の増毛の為、白い馬毛を染料で染めて色を調整した。染色は専門外で染料の
色や染め方も不慣れだったが同様の色に仕上がったようだ。
艶消しになった黒漆もちょっと研磨剤を柔らかい布につけて擦れば艶が蘇る。
獅子頭は実家に戻ってほっとした様子で9月の出番を待っている。