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草岡津嶋神社の京獅子拝見
「第35回ながい黒獅子まつり」もいよいよ来週24日と開催が迫ってきたので 、今回参加予定の神社所蔵の獅子頭を中心に掲載している。 本年参加団体は14社 数字は参加回数 当工房作の制作年号 宮 總宮神社35 2002年制作 小出 白山・皇大両神社35 十日町 白山神社28 2017年制作 2作目2025制作中 白兎 葉山神社31 森 津島神社32 上伊佐沢 伊佐沢神社29 九野本 稲荷神社27 九野本 八雲神社13 平山 熊野神社12 2025年制作中 時庭 豊里神社27 河井 若宮八幡神社17 2007年 今泉 稲荷神社11 2019年 草岡 津嶋神社32 2002年 寺泉 五所神社34 2019年 本年黒獅子まつりへ参加される神社の当工房で制作させていただいた獅子頭は制作中を含め8頭となった。 ただし黒獅子まつりでの使用は不明なので、youtubeライブ中継の際確認が楽しみである。 5月4日津嶋神社の春の例大祭の前日、社務所に獅子頭四頭が準備されるので拝見する機会を頂戴した。 2002年(平成14年)津嶋神社の獅子頭を制作の何年か後、京都の彫師に依頼し獅子頭を制作したという 話をお聞きしたので、他所で作られた獅子はどんな獅子頭か興味があった。 総代の方からのお話では、平成25年(2013)宝くじ助成金を活用しての獅子頭制作で「鯉の短冊」の化 粧廻しも京都に依頼したのだという。確かに長井の各神社でも多数大相撲級の化粧廻しを京都に依頼して いる。 京都への獅子頭発注の際は手本にする神社の獅子頭や獅子舞を録画した動画などの資料も送り、歯打ちに 耐えうる獅子頭の依頼も付け加えたのだという。 下顎の歯の歯茎もしっかり彫っているが金箔が入り込んでいる 細めの白馬毛を細かく密に植えている しかし、ようやく完成して届いた京の獅子頭は稽古ですぐに破損し、制作者に修理を依頼したが再び破損。 その後数回修理を繰り返したが一度も例祭で用いられる事はなかったという。しかも修理の度に重量が加 算して獅子振りには重い獅子になってしまった。 検分して原因を推定すると、木地は柳ではなく素材で塗りはカシュー塗り、歯打ち対策の補強は講じられ ていないのではないだろうか? 獅子頭の形については現役の梅津弥平衛や渡部亨の作の獅子頭と良く特徴 を写しとって草岡津嶋神社風の獅子に造形している。 しかし、残念なことに獅子の表に見えない木地の選択や耐久性までは至らなかったのが大変勿体ない制作 だった。内部を削り軽量化し、FRPで補強し再生する提案したが成立しなかった。 昭和初期制作された竹田吉四郎の作の獅子が神社に所蔵されている。 以前このブログに残しているが、やはり獅子頭の完成後、獅子頭の目から頭部に大きな損傷が発生し、例祭 で使用出来なくなった。吉四郎はその無念を掛け軸にして神社に残している。 以前その掛け軸を拝見し写真に残しているはずだが、見つかっていない。 平成14年 渋谷の作2025.05.18 -
十日町白山神社へ子獅子奉納
令和7年5月10日十日町白山神社の例大祭にて恒例の獅子舞奉納、翌日11日は子ども獅子舞が賑や かに開催された。 天候が今ひとつで小雨に加え強風が吹き荒れ、獅子幕がめくれ上がる瞬間もあった。 祭り終了後、強風に耐えきれず幟の鉄製の竿が「く」の字型に変形した。安全の為、直ぐに撤去 されたそうだ。今年の5月は寒暖の差が激しく、もう夏の猛暑が懸念されている。 子ども獅子舞に用いられている獅子頭は白鷹町の彫師 須貝摠一氏作で昨年、破損し修理依頼があ り修繕をしている。そろそろ新しい獅子頭が必要と感じた。 現在、十日町白山神社の二作目の獅子頭の制作の依頼を受け漆塗りの工程に進んでいる。 また、同時に三人の個人の制作依頼も受け四頭同時制作である。 個人用の三獅子は飾り獅子仕様でカシュー塗料の塗りで仕上げる予定である。 四獅子の同時制作の途中から、子ども獅子奉納をひらめいてしまい遂には五頭同時制作となり、 子ども獅子を繰り上げて今年の例祭まで仕上げ、お披露目しようと目論み間に合った。 子ども獅子の木地制作 頭部に合わせ顎を作る 顎の完成 桐材で耳と舌を作りしばらく放置乾燥 子ども獅子舞用の獅子であるが、激しい歯打ちに耐えうるFRPによる補強を施工した。 獅子の木地には木地の湿気で硬化する塗料を含浸させ、塗りの下地はポリエステル樹脂カーボンフ ァイバー入りの下地を用いた。塗料はカシュー塗り、仕上げに本金箔を貼り白ヤク毛を使用した。 小振りの獅子にしては長すぎるが白ヤク毛は最長の60センチのヤク毛を二つ折りにして取り付け ている。 FRP補強し樹脂下地と研磨 カシューのサーフェイサー塗料を塗布し研磨する 子ども獅子用の獅子頭木地は昨年11月から神社二作目と個人三頭、子ども獅子は清水町原野産の 同じ柳材で兄弟獅子となる。 1回目の上塗り 金箔の部分を黄土に色分け 金箔の部分にマスキングテープを切り貼りし金箔を外注 金が高騰し昨年の倍以上に値上げされた 子ども獅子の眼の金と黒目の縁には、極細の赤いラインを入れた。 飯豊町に寄贈された椿の旧家伊藤嘉六家に伝わる山神神社の獅子頭は総宮神社型の逸品の獅子だが 獅子の額には有るはずの星(金のコブ、北極星説から)の代わりに三本のシワがあり、目の輪郭と 黒目の縁に赤い線が描かれていた跡を発見している。獅子頭には記名があり嘉永五年とあり、また 作風から高橋小兵衛と推測している。それをヒントにしての赤いラインなのである。 金箔が仕上がり保護剤塗布し顎の歯の部分に衝撃緩和ゲルシートを取り付ける 一日おいてタテガミの取り付け 長井の獅子らしさが見えてくる 鼻髭と頬毛は長めだがこのまま様子見 来年はこの新しい子ども獅子が祭りでデビューする予定。 神社二作目と個人用の三頭の獅子頭も一緒にお披露目できるだろう。 今回の子ども獅子の施工法で注視したい事は、耐久性である。漆塗りの仕上げが理想だが、あの手 この手を使い、あの強烈な歯打ち耐えうる獅子に近づけたいものだ。 今後の制作に反映させていただきたい。 ズラッと並んだ獅子頭のシーンを考えると楽しみで指が震える。 十日町公民館にて獅子頭の引き渡し さっそく若大将が振り心地を確認2025.05.15 -
河井若宮八幡の獅子2007制作
本年5月24日開催予定の「ながい黒獅子まつり2025」の参加神社15社が発表された。 その中の7社の獅子頭を当工房で制作させていただいている。 その全社の獅子が参加するかどうかは不明なのだが、制作年月日を調べてみた。 几帳面に記録簿なる資料を作っていなかったのが悔やまれるのが常。 一々PCの隅々を調べなくてはならない。 ポッと出てきたのが平成19年(2007年)河井の若宮神社の獅子頭完成時の写真だった。 携帯電話に江口漆工房さんから送付されてきた写真である。 このブログに河井の獅子の新調記事をアップしたかな?と思って調べても何故か探せな かった。 その写真はタテガミを植える前と取り付け後のもので、木地の制作時は見つかっていな い。 モデルの獅子は神社蔵の明治18年の梅津弥兵衛の頭部が高い獅子だった。 タテガミは白馬毛でコシが有り毛穴に挿すと一段と頭部が高く見える。 馬毛は純白の太い直毛で、獅子の動きに合わせ、しなやかになびいて獅子の霊獣感を表せ るアイテムの一つでもある。 同年、平成19年は白鷹西高玉稲荷の一対の獅子を制作していて偶然、河井の獅子頭の後に 漆の下地制作中の二頭が見える。またその左には修復前の小出白山神社所蔵の高橋小兵衛 の作の獅子も見えるので面白い。 後日江口漆工房から届いた獅子頭の下地進捗写真が見つかったので追加しておこう2025.05.02 -
今泉稲荷神社の獅子頭の手直し
あっという間に桜が咲き、来月24日開催の「ながい黒獅子まつり」の話も聞こえてきた。 正一位今泉稲荷神社の令和元年に制作した獅子頭が久しぶりに里帰りした。 軸棒の留めのネジが緩み外れていたのだという。 他に気になる部分もありメンテナンス入院をすることになった。 令和元年以降、コロナ禍でお祭りが休止し昨年のデビューだったという。それでも右眉の金箔 に軽い擦過傷、牙も幕に擦れて金箔が擦れていた。下顎の歯に取り付けた衝撃緩和ゲルシート も損傷が見られる。口の中に鼻ひげや頬毛を噛んで切れたヤク毛が落ちていた。新調したての 獅子頭が長めのヤク毛を巻き込んで切れるのだろう。 獅子頭を眺めると現在制作しているフォルムより頭部が高く、現在制作している獅子の頭部を 合わせて比較すると幅は同じだが3.5cmも高い。下顎の唇も曲線で彫られで、めくれている様 に見える様に作られている。五年経過すると見え方も変わってくるものである。 今泉稲荷神社の獅子舞は總宮神社系だが、この辺の警護の衣装では珍しく神社紋入りの腹掛け を着けている。その理由は大頭(役職名)もご存知なかったので調べてみよう。 お隣の川西町西大塚薬師堂の警護も確か腹掛けをしていた。 もともと薬師堂の獅子は白鷹の鮎貝八幡の獅子とよく似た赤獅子で練り歩く追い獅子のスタイ ルで昭和初期まで続いたが、その後、竹田吉四郎作の畔藤(くろふじ)熊野神社型の獅子頭を 黒にした獅子を用いている。今泉稲荷神社から吉四郎作の獅子頭が譲渡されたという説もある が、薬師堂の神殿にはこの獅子頭の奉納札が残されているのを確認している。 昭和九年に西大塚字岡の梅津藤雄氏が獅子頭の原木を奉納している記録があるが、その後 「1943年(昭和18年)大東亜戦争必勝祈願 奉納會」という奉納札があった。 獅子頭木地が奉納され吉四郎に制作の依頼がされたが、改めて戦争の影響で順延され戦時中の 9年後に獅子頭が完成し奉納されたのではないか。その吉四郎作の獅子頭は破損し、昭和39年 に南陽市法師柳の佐藤耕雲が超ヘビー級の獅子頭を制作している。 その他「弘化三年の葉山大権現堂再建 大工 渋谷嘉藏」 寺泉渋谷嘉藏は米沢笹野観 音堂の建設に関わっている。 五所神社の獅子頭も平成元年制作の兄弟獅子。 初めて黒獅子まつりで舞う令和元年生まれの今泉稲荷の獅子の晴れ姿が楽しみである。 警護の腹掛けの謎を調べていると、今泉稲荷の拝殿にあった年代不詳の例祭の記念撮影を撮影し た写真が出てきた。警護は二人いて左手の警護の化粧廻しはずいぶん豪華で、右の警護のそれは 神社紋が入ったシンプルな化粧廻しである。裾の馬連が擦り切れている。どちらも腹掛けをして いる。 今泉稲荷神社 西大塚薬師堂 昭和36年の記念写真 西大塚薬師堂は今泉稲荷神社から獅子舞を習った際、警護の衣装スタイルも導入したのだろう。 兄弟獅子のご対面 左が今泉稲荷と五所神社の獅子2025.04.22 -
一対の小振りの獅子頭
コレクションの豪華な黄金の獅子頭と同じ様式と思われる獅子頭一対が入荷した。 一見黒ずんだ茶色の様だが、銀箔が酸化して渋い色に変化している。 耳や目、歯、宝珠や角は金箔と思われる。 黄金の獅子 造りは、関東に多く見られる神輿と共に行列に加わる、大型の飾り獅子である。 獅子頭本体のサイズは高さ10cm、幅16cm、奥行き13cmと小振りながら精度の高い 獅子である。小振りの獅子ほど仕上げに手間がかかり、彫刻や塗りに緻密な技術が問 われるサイズでもある。タテガミは麻か青苧系の植物繊維である。 幕を取り付けていた竹釘があり、わずかにその繊維が付着しているが、幕についての 情報は得られない。現在の石岡型の獅子は頭部が大きく眉やもみあげの巻毛の装飾が 複雑だが、おそらく明治以前の茨城系の獅子頭は、こういうスタイルだったのだろうと 推測している。 小振りの獅子一対に取り付ける為に早速、青と紺のツートンカラーの生地を発注し届く のを待っている。2025.04.01 - ...続きを見る