獅子宿燻亭10

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  • 十日町白山神社へ子獅子奉納

    令和7年5月10日十日町白山神社の例大祭にて恒例の獅子舞奉納、翌日11日は子ども獅子舞が賑や かに開催された。 天候が今ひとつで小雨に加え強風が吹き荒れ、獅子幕がめくれ上がる瞬間もあった。 祭り終了後、強風に耐えきれず幟の鉄製の竿が「く」の字型に変形した。安全の為、直ぐに撤去 されたそうだ。今年の5月は寒暖の差が激しく、もう夏の猛暑が懸念されている。 子ども獅子舞に用いられている獅子頭は白鷹町の彫師 須貝摠一氏作で昨年、破損し修理依頼があ り修繕をしている。そろそろ新しい獅子頭が必要と感じた。 現在、十日町白山神社の二作目の獅子頭の制作の依頼を受け漆塗りの工程に進んでいる。 また、同時に三人の個人の制作依頼も受け四頭同時制作である。 個人用の三獅子は飾り獅子仕様でカシュー塗料の塗りで仕上げる予定である。 四獅子の同時制作の途中から、子ども獅子奉納をひらめいてしまい遂には五頭同時制作となり、 子ども獅子を繰り上げて今年の例祭まで仕上げ、お披露目しようと目論み間に合った。 子ども獅子の木地制作 頭部に合わせ顎を作る 顎の完成 桐材で耳と舌を作りしばらく放置乾燥 子ども獅子舞用の獅子であるが、激しい歯打ちに耐えうるFRPによる補強を施工した。 獅子の木地には木地の湿気で硬化する塗料を含浸させ、塗りの下地はポリエステル樹脂カーボンフ ァイバー入りの下地を用いた。塗料はカシュー塗り、仕上げに本金箔を貼り白ヤク毛を使用した。 小振りの獅子にしては長すぎるが白ヤク毛は最長の60センチのヤク毛を二つ折りにして取り付け ている。 FRP補強し樹脂下地と研磨 カシューのサーフェイサー塗料を塗布し研磨する 子ども獅子用の獅子頭木地は昨年11月から神社二作目と個人三頭、子ども獅子は清水町原野産の 同じ柳材で兄弟獅子となる。 1回目の上塗り 金箔の部分を黄土に色分け 金箔の部分にマスキングテープを切り貼りし金箔を外注 金が高騰し昨年の倍以上に値上げされた 子ども獅子の眼の金と黒目の縁には、極細の赤いラインを入れた。 飯豊町に寄贈された椿の旧家伊藤嘉六家に伝わる山神神社の獅子頭は総宮神社型の逸品の獅子だが 獅子の額には有るはずの星(金のコブ、北極星説から)の代わりに三本のシワがあり、目の輪郭と 黒目の縁に赤い線が描かれていた跡を発見している。獅子頭には記名があり嘉永五年とあり、また 作風から高橋小兵衛と推測している。それをヒントにしての赤いラインなのである。 金箔が仕上がり保護剤塗布し顎の歯の部分に衝撃緩和ゲルシートを取り付ける 一日おいてタテガミの取り付け 長井の獅子らしさが見えてくる 鼻髭と頬毛は長めだがこのまま様子見   来年はこの新しい子ども獅子が祭りでデビューする予定。 神社二作目と個人用の三頭の獅子頭も一緒にお披露目できるだろう。 今回の子ども獅子の施工法で注視したい事は、耐久性である。漆塗りの仕上げが理想だが、あの手 この手を使い、あの強烈な歯打ち耐えうる獅子に近づけたいものだ。 今後の制作に反映させていただきたい。 ズラッと並んだ獅子頭のシーンを考えると楽しみで指が震える。 十日町公民館にて獅子頭の引き渡し さっそく若大将が振り心地を確認
    2025.05.15
  • 河井若宮八幡の獅子2007制作

    本年5月24日開催予定の「ながい黒獅子まつり2025」の参加神社15社が発表された。 その中の7社の獅子頭を当工房で制作させていただいている。 その全社の獅子が参加するかどうかは不明なのだが、制作年月日を調べてみた。 几帳面に記録簿なる資料を作っていなかったのが悔やまれるのが常。 一々PCの隅々を調べなくてはならない。 ポッと出てきたのが平成19年(2007年)河井の若宮神社の獅子頭完成時の写真だった。 携帯電話に江口漆工房さんから送付されてきた写真である。 このブログに河井の獅子の新調記事をアップしたかな?と思って調べても何故か探せな かった。 その写真はタテガミを植える前と取り付け後のもので、木地の制作時は見つかっていな い。 モデルの獅子は神社蔵の明治18年の梅津弥兵衛の頭部が高い獅子だった。 タテガミは白馬毛でコシが有り毛穴に挿すと一段と頭部が高く見える。 馬毛は純白の太い直毛で、獅子の動きに合わせ、しなやかになびいて獅子の霊獣感を表せ るアイテムの一つでもある。 同年、平成19年は白鷹西高玉稲荷の一対の獅子を制作していて偶然、河井の獅子頭の後に 漆の下地制作中の二頭が見える。またその左には修復前の小出白山神社所蔵の高橋小兵衛 の作の獅子も見えるので面白い。
    2025.05.02
  • 今泉稲荷神社の獅子頭の手直し

     あっという間に桜が咲き、来月24日開催の「ながい黒獅子まつり」の話も聞こえてきた。 正一位今泉稲荷神社の令和元年に制作した獅子頭が久しぶりに里帰りした。 軸棒の留めのネジが緩み外れていたのだという。 他に気になる部分もありメンテナンス入院をすることになった。 令和元年以降、コロナ禍でお祭りが休止し昨年のデビューだったという。それでも右眉の金箔 に軽い擦過傷、牙も幕に擦れて金箔が擦れていた。下顎の歯に取り付けた衝撃緩和ゲルシート も損傷が見られる。口の中に鼻ひげや頬毛を噛んで切れたヤク毛が落ちていた。新調したての 獅子頭が長めのヤク毛を巻き込んで切れるのだろう。 獅子頭を眺めると現在制作しているフォルムより頭部が高く、現在制作している獅子の頭部を 合わせて比較すると幅は同じだが3.5cmも高い。下顎の唇も曲線で彫られで、めくれている様 に見える様に作られている。五年経過すると見え方も変わってくるものである。 今泉稲荷神社の獅子舞は總宮神社系だが、この辺の警護の衣装では珍しく神社紋入りの腹掛け を着けている。その理由は大頭(役職名)もご存知なかったので調べてみよう。 お隣の川西町西大塚薬師堂の警護も確か腹掛けをしていた。 もともと薬師堂の獅子は白鷹の鮎貝八幡の獅子とよく似た赤獅子で練り歩く追い獅子のスタイ ルで昭和初期まで続いたが、その後、竹田吉四郎作の畔藤(くろふじ)熊野神社型の獅子頭を 黒にした獅子を用いている。今泉稲荷神社から吉四郎作の獅子頭が譲渡されたという説もある が、薬師堂の神殿にはこの獅子頭の奉納札が残されているのを確認している。 昭和九年に西大塚字岡の梅津藤雄氏が獅子頭の原木を奉納している記録があるが、その後 「1943年(昭和18年)大東亜戦争必勝祈願 奉納會」という奉納札があった。 獅子頭木地が奉納され吉四郎に制作の依頼がされたが、改めて戦争の影響で順延され戦時中の 9年後に獅子頭が完成し奉納されたのではないか。その吉四郎作の獅子頭は破損し、昭和39年 に南陽市法師柳の佐藤耕雲が超ヘビー級の獅子頭を制作している。 その他「弘化三年の葉山大権現堂再建 大工 渋谷嘉藏」    寺泉渋谷嘉藏は米沢笹野観 音堂の建設に関わっている。  五所神社の獅子頭も平成元年制作の兄弟獅子。 初めて黒獅子まつりで舞う令和元年生まれの今泉稲荷の獅子の晴れ姿が楽しみである。 警護の腹掛けの謎を調べていると、今泉稲荷の拝殿にあった年代不詳の例祭の記念撮影を撮影し た写真が出てきた。警護は二人いて左手の警護の化粧廻しはずいぶん豪華で、右の警護のそれは 神社紋が入ったシンプルな化粧廻しである。裾の馬連が擦り切れている。どちらも腹掛けをして いる。 今泉稲荷神社 西大塚薬師堂 昭和36年の記念写真 西大塚薬師堂は今泉稲荷神社から獅子舞を習った際、警護の衣装スタイルも導入したのだろう。 兄弟獅子のご対面  左が今泉稲荷と五所神社の獅子
    2025.04.22
  • 一対の小振りの獅子頭

    コレクションの豪華な黄金の獅子頭と同じ様式と思われる獅子頭一対が入荷した。 一見黒ずんだ茶色の様だが、銀箔が酸化して渋い色に変化している。 耳や目、歯、宝珠や角は金箔と思われる。 黄金の獅子   造りは、関東に多く見られる神輿と共に行列に加わる、大型の飾り獅子である。 獅子頭本体のサイズは高さ10cm、幅16cm、奥行き13cmと小振りながら精度の高い 獅子である。小振りの獅子ほど仕上げに手間がかかり、彫刻や塗りに緻密な技術が問 われるサイズでもある。タテガミは麻か青苧系の植物繊維である。 幕を取り付けていた竹釘があり、わずかにその繊維が付着しているが、幕についての 情報は得られない。現在の石岡型の獅子は頭部が大きく眉やもみあげの巻毛の装飾が 複雑だが、おそらく明治以前の茨城系の獅子頭は、こういうスタイルだったのだろうと 推測している。 小振りの獅子一対に取り付ける為に早速、青と紺のツートンカラーの生地を発注し届く のを待っている。
    2025.04.01
  • 黒獅子の木地制作

    制作途中だった總宮型の獅子木地制作を再開した。 木地が乾燥の際に変形する場合があり、放置し乾燥を促す。案の定、歯の輪郭ラ インが5mmずれ、きつくなった軸棒穴を修正し輪郭ラインを彫り直して整えた。 同時に同じ柳から彫り出した四頭の獅子木地だが、ほとんど変形しない木地もあ り材の部位の性格も様々だ。この木地はとある神社の二作目の獅子に仕上がる予 定で、一作目より軽量化なるように依頼されている。大抵は神社総代の御大が関 わり獅子の重さについてのリクエストは無い事が多いが、実際に獅子を振る若い 衆が関わると細部まで検討の余地が入る。總宮型の黒獅子のデザインといっても 様々有る。獅子の作者によってこだわりや癖があり「高橋小兵衛風の裏の彫り込 み」とか「竹田吉四郎風の耳」、「梅津弥兵衛風の目」とかのオーダーが話に出 ると「おっ!この方は獅子頭をかなり勉強してる御仁だ」となる。最近、年配の方 よりネット情報に長けた比較的若い年代に多い。こちらのブログのレアな獅子の 情報源にもなっているのだろう。 獅子木地は一昨年末に清水町から出た柳で良い状態で、かなり乾燥が進んでいる。 軽量化の為、横に計量秤を置いて制作するが「獅子の内部の彫り込み」が重さを 左右するので重要だ。軸棒は重いが堅牢な樫材を使用し、耳や舌は軽い桐材で作り FRP(強化プラスチック)で補強する。FRP補強は獅子の内外部の鼻や歯、破損し やすい部分に施工し、さらにそのガラス繊維の上に薄い麻布を貼り付け覆う。FRP 補強工法のない時代は、せいぜい漆で麻布を着せる補強が主流だった。獅子頭に FRP補強をすると200gから300gの加重で済み効果的と考えている。 これから仕上げる獅子頭にFRP補強の工程に入る。 かなりハードでタフな使用が予想される神社の獅子舞なので気を抜けない。一作目 の獅子は大雨の中でデビューし軸棒が水を吸って膨張し口の開閉に支障を来たした。 また、上の軸棒が折れ応急処置し取り替えた軸棒が再度折れるというトラブルもあり 自作の木工旋盤加工したイタヤカエデ材の使用を廃止し、樫材に変更した経験もある。 上下の歯を強烈に打ち合わせる「歯打ち」は總宮型の獅子舞にとって無くてはならない 所作だが大抵、破損箇所は上下の前歯である。やはりこの神社の獅子も上の前歯の下地 が破損し、FRP修理で初めて「カーボンファイバー」を使用した。 一晩に何回歯打ちをするかのデーターを一度でも調査する価値がある。 例えば歯打ちセンサーの装置を開発し獅子頭に取り付ける方法もあるだろう。 漆の下地の骨材にガラス繊維を混ぜて強度を増すような工夫も検討している。 また珍しいオーダーも依頼されている。本来は破損した舌の根元周辺を補強するための 棒状の補強で、總宮神社の明治江戸期の獅子の修復に使われている工法だ。注がれたお神 酒を流すドレイン穴を開けている。舌自体は後付けしたものでFRPで固定し念には念をい れボルトでしっかり固定する。
    2025.02.20
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