「55億円の総事業費に占める市負担分、つまり私たち納税者に直接、かかわる部分は…」―。新花巻図書館の「設計状況」についての市民説明会(10月13日、14日、19日、20日)で相次いだのが、この素朴な質問だった。市側はその都度「市民に負担がかからないよう財源確保に努めたい」と答えるに止まった。よほど、表には出したくない数字だったのだろう。今回の計画見直しでは蔵書数(30万冊減)や床板面積(300平方メートル減)などが縮小されたのに対し、概算事業費は逆に当初の39・9億円(約40億円)から55億円に膨れ上がった。市側がこれまで説明してきた財源のスキーム(国庫補助と合併特例債)に沿って、その内訳のシミュレーションを以下に示す。
●39・9億円~国庫補助(15億円)、合併特例債の交付税措置(16・9億円)、市の実質負担(8・4億円)。「ざっと40億円もの大事業がわずか、8億円余りの市負担でできる。国の補助制度を上手に活用した成果だ」と上田東一・前市長は胸を張った。さて、「55億円」を電卓に入力してみた。開けてビックリ、玉手箱…
●55億円~国庫補助(15億円)、合併特例債の交付税措置(26・6億円)、市の実質負担(13・4億円)。つまり、全体で15億円増のうち、三分の一の5億円が市の実質負担分(市民の税負担)として、上乗せされる可能性があるということである。
市側は概算事業費の増額(55億円)を1,37倍に「抑制した」と強調するが、逆に市の実質負担分(13・4億円)が当初の8・4億円に比べて、1,6倍も「増える可能性がある」ということについては、どう説明するのか。さらに、今回の説明資料には「整備にあたり、国の補助金を活用」と明記されている。ところが、令和8年度分の補助金(「都市構造再編集中支援事業費補助金」)は約4・4億円の要望額に対し、約1・6億円の交付に止まっている。今後も減額傾向は続くとみられているが、今回の市民説明会の場でもこうした肝心な「数値」は伏せられたままだった。
“5億円”事件をふと、思い出した。2024(令和6)年3月22日、花巻市議会で開催された議員説明会は物々しい雰囲気に包まれていた。入り口には職員が立ちはだかり、私たち傍聴希望者だけではなく、マスコミ関係者の入場も阻(はば)まれた。前代未聞の「非公開」のこの場では、総合花巻病院への5億円の財政支援についての案件が説明されていた。2年前にオープンした同病院に対し、市側は当初約20億円の補助金を提供したが、経営難からさらに5億円の追加支援を要請され、直後に開かれた市議会臨時会で即決された。
「市民の皆さん、花巻病院の案件で議会のライブ中継が始まっています。すごい内容になっています。病院の経営状態に無関心ではいられない内容です」、「税金の“私物化”ではないでしょうか。民間の病院に多額の税金をつぎ込むことにはもう少し、慎重であるべきでは」…。議会中継を見たある市民はさっそく、X(旧ツイッタ‐)にこう書き込んだ。当事者であるベテラン議員も「議会の当日にいきなり、議案が提出されても精査する時間すらない」「まるで、”ガス抜き”みたいな雰囲気だった」と不満をぶちまけた。
「5億円」という同額の数値は単なる偶然だとしても、私はそれをひた隠しにする行政の姿勢に同根の”病癖”(びょうへき)を感じた。地元紙の岩手日報はこうした手法を手厳しく批判した。「後顧の憂(うれ)いを断つ」という意味で、以下に転載する。
「…急転直下の臨時議会前、内容が告知されないまま開かれた市議会議員説明会は非公開。密室で議論がほぼ尽くされたのか、その後の議会は淡々とした説明になった。24年度は長年懸案とされてきた新図書館建設候補地の選考について、重要局面を迎える。今回の市当局の対応は、市政課題への姿勢に疑問を残した。財源を生かした大胆な政策は必要だが、市民への説明責任を怠ってはならない」(2024年3月29日付)
私は当時、非公開になった議員説明会での説明資料と会議録の写しなどの文書開示請求をしたが、結果はいずれも「非開示」と「不存在」。あの時からわずか2年余り…今度は10月5日開催の議員説明会における会議録の録音記録の開示請求(10月20日付当ブログ「追記―1」参照)をしたが、これまた「不存在」だった。新花巻図書館にかかわる予算審議はこれから、本格化する。“5億円”事件の教訓を無駄にしないためにも、当局と議会とが互いに監視し合うという「二元代表制」の確立と、さらにその制度を監視するという“市民の眼”が試されることになる。
(写真は新図書館の「設計」に関する説明資料から)
《追記ー1》~スクラップ・アンド・ビルドの徹底
「1人の市民」を名乗る方から、以下のような長文のコメントが寄せられた。早くも「13・4億円」ショックの到来か。HPの記事を一読して、私も「これは納税者たる市民への宣戦布告ではないか」と憤(いきどお)りを感じた!!??
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市のHPに公表された「令和9年度予算編成方針について」では本市の財政について、「財政の硬直が進んでいる。公債費は図書館整備事業等の大型事業開始に伴う市債の発行や近年の金利上昇の影響に伴い増加していく見通しである」と記し、新花巻図書館の事業費が55億円へ増加することで、更に借金返済が苦しくなることを含意している。一方で、「スクラップ・アンド・ビルドの徹底」として、「コスト意識を持って既存の各種施策についても徹底的な見直しを行い」と記載していることから、市民に直結する各種事業を徹底的に見直す姿勢が示されている。高額な新図書館など大型事業のおかげで市民生活を支える普通の事業が削減されることが懸念されている。
なお、「スクラップ・アンド・ビルドの徹底」のところには「なぜその事業が必要なのか、経費の必要性について責任を持って市民に説明できるよう」とあるが、新図書館整備の説明会の様子からはそのような説明責任は窺い知ることができない。ダブルスタンダードという他ないように思える。
《追記―2》~プロパガンダとは!?
「Gemini」を名乗る方から、次のようなコメントが届いた。「なるほど」と納得した。
「プロパガンダ(Propaganda)とは、特定の思想・世論・意識・行動へ誘導する意図を持って行われる宣伝活動の総称です。主に政治的・宗教的な目的で大衆を操作・説得するために用いられ、情報の一部を誇張・歪曲したり、都合の悪い事実を隠蔽したりする特徴があります。(例:新花巻図書館の事業費が55億円に増加しても市は1.37倍に抑制したと広報。でも、市の負担(市民の負担)が1.6倍になるということは広報しない)」
《追記―3》~「あり得な~い!」
「市政堂」を名乗る方から、こんなコメントが届いた。なんか、炎上気味の気配が漂ってきた。「事業費がはね上がって、国からの補助金もどうなるか先行き不透明。それでも『市民に負担がかからないように財源確保』って可能なの?執行する側の皆さん、その言葉にちゃんと責任取ってください!」
《追記―4》~「病院跡地」との事業費比較をしてみたら、こっちの方が5億円の割安に
候補地比較検討時の概算事業費は「駅前」(39・9億円)に比べて、約3・6億円も安い(36・3億円)うえにすでに市有地化されており、新たな土地取得は不要。その財源内訳は国庫補助(15億円)、合併特例債の交付税措置(14・1億円)、市の実質負担(7・2億円)。駅前と同じように事業費が1・37倍に増えたとすると、ちょうど50億円となり、それでも5億円の割安になる。病院跡地への立地を求める署名が6千筆を超える中、なぜ市側はこれほどまでに「高い買い物」にこだわり続けるのか。謎は深まるばかりである。
《追記―5》~花巻駅前への市の投資
追記―2の投稿者と同じ「Gemini」を名乗る方から、「駅前」開発にかかる投資効果についての綿密な分析が届いた。なかなか見えにくい部分なので、とても参考になった。そういえば、年間80万人の「交流地」人口増という大風呂敷を広げた総合花巻巻病院の総総事業費は約87億円(うち2年前の5億円を含め、当市の総支援額は約25億円)に上る。病院経営が綱渡りを続ける中、周辺の中心市街地は「80万人」どころか、閑古鳥が鳴いている。
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「公表されている現時点でのJR花巻駅橋上化・東西自由通路整備事業費は44.4億円。基本設計時から5.4億円の増。新花巻図書館整備事業は当初の予想より15億円増の55億円。これら2事業の合計は99.4億円。新花巻図書館整備基本設計から実施設計へ仮に同じ5.4億円増となると全体事業は104.8億円」
「花巻駅周辺の不動産評価と関連税収を総体で100億円以上増加させる効果がないと、投資したお金は関連業者の収入だけに終わることとなる。花巻駅周辺への投資額がこのような多額になることが判明した現時点で、この多額な投資が花巻市全体にどのような利益をもたらすことになるのか―ステークホルダーたる市民の議論が必要。特に合併に伴う行政需要の増を保障する合併特例債の使用には十分な検討が必要。花巻駅と周辺の100億円を超えると思料される投資が花巻市全体にわたる効果の検証が必要」





