6月3日(火)のひろりんモーニングセミナーは
仙台あさひ法律事務所 弁護士 伊藤 佑紀 さん
テーマ 『 話術に頼らない交渉術 』 と題してお話しいただきました。
<講演要旨>
1.交渉を始めるにあたって
①そもそも交渉するべき局面か否か
~交渉により得るもの、失うものについて検討する。
・手間ひまをかけて交渉する意義があるのか
・交渉の申入れ自体が相手の感情を害さないか
②獲得目標の設定
・その交渉によってどのような成果を得たいのかを明確にする。
・最良の結果、最低限の目標、落としどころを具体的にイメージする。
③交渉手段、交渉相手の選択
・交渉手段~方法、日時、場所の選択
・方法:電話、面談、書面のやり取り等
面談の場合:日時、時間帯や確保する時間も重要
・場所:相手の属性に応じて考える
・交渉相手の選択~立場、地位、経験の有無
④事前準備の重要性(概要理解、十分な資料、反論の予測と対策)
・概要理解:前提となる事実経過、相手の経済的・精神的状況
・十分な資料の準備:心理的な余裕、相手へのプレッシャー
・反論の予測と対策:可能な限り相手の反論をシミュレーションして、それに対する対策を検討する。
2.よりよい交渉を行うために
①心理的余裕の確保
・事前準備が何よりも重要
・面談場所の下見、時間よりも前に到着
・服装、乗っていく車にも気をつける
・録音する、されることを配慮する。
②無駄なく効果的に伝える
・合理的根拠を具体的にあげる。
・数字、図形、グラフ等の利用
③相手を観察する
・目を見る、表情を見る→どこに自信をもっていて、どこに自信がないか
どこに不満をもっていて、どこに満足しているか
・話し方、接し方→自分に対してよりも、相手側の人間に対する接し方に注意。
④相手を理解する
・相手の感情を理解するよう努める→なぜ怒っているのか、なぜ笑っているのか、なぜ不安そうにしているのか→必ず理由がある。
それを理解しようとすることで誠意が伝わり、相手も真摯に対応してくれる。
3.交渉の終結に際して
①交渉成立か決裂か~メリット、デメリットの見極め
・交渉成立で得られる利益と失う利益
・決裂によって生じる損害の大きさ
・最も時間をかける
②交渉結果の確認と検証
・粗面の取り交わしは不可欠
・内容を十分確認する:自分に不利益はないか、紛争の蒸し返しにならないよう。
③その場の勝ち負けにこだわり過ぎない
・交渉=話し合い、勝ち負けを目指すものではない。
・初めから「負け」のケースもある。
・相手を尊重し、お互いの利益を考えて初めて「交渉」といえる。
勝つべき事案に負けるのは三流
勝つべき事案に勝つのは二流
負けるべき事案にどう負けるかが一流
経験に元づく事例・反省を踏まえた内容で、わかりやすく、
伊藤さんの人柄がにじみ出ていて、よかった。
弁護士の事例だが、一般の交渉にも活用できるよい内容だった。
(文責・反田)