吉村龍一:著(講談社 2012年1月発行)
第6回小説現代長編小説新人賞受賞作品の単行本化されてものだ。
南陽市在住の、新人作家のデビュー作である。
このところ小説が読めなくていたのだけれど、一気に読んでしまった。
昭和初期の東北地方のある寒村(山村)で話しが始まる。
その地方の描写が、どうやら置賜地方から日本海側の地方が舞台としているように感じられる。
村の中で、差別的な扱いを受けて、貧しい日々の暮らしを送っていた主人公が、あることから殺人を犯し、村を出奔して流浪するなかで出会う人々や、遭遇する事件の中で、生きてゆく姿を描いている。
差別やいじめに遭う中で、生きていることの苦しみ、苦しむ中でも生きる喜びも感じる。それは、肌のぬくもりであったり、人との出会いで会ったりする。
しかしそれすらも、後々味わうことになる苦しみの因縁として受け止めざるを得ないものになったりするのである。
暴力や性の描写において、ひじょうに生々しいというか凄惨な場面もあるのだが、それすらも人が生きるという根源的なチカラを表現するものと感じられる。
人の闇を描いているようでありながら、じつは、人は動物や植物にしても、他の命をいただいて生きているもの、いただかなければ生きていけないものという、仏教的な思想が、作者の根底に流れているような感がある。
久しぶりにドキドキして読み終えた。
