有限会社 しんせい
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第四十六話「病気を考える。お話 の続き」
昨日、検査の結果を聴きに病院に行ってきました。待合室の椅子に座って待っていると「米田さん、七番にお入りください。」とのアナウンス。私が、ちょっとドキドキしながら診察室に入ると、最初に先生が発した言葉は「米田さん、セーフです」との事。「はあ、それは・・」と答える私の顔を見ながら「でも、まったく心配が無くなった訳では有りませんので、半年ごとに検査をして数値が上がれば、また生体検査をしましょうね」と付け加える。「また、あれをするんですか」と私が言うと、「そうなりますね」と先生はあっさりと言いました。「あれは、出来る事ならお断りをしたい検査だな」と思う。
しかし何にしろ「笑って話が出来る結果でよかった」とも思う。頭の中では「俺は、絶対に大丈夫」と思いながらも、この数日は「もしもの事が有れば、どの様にすれば?」と思う事も無くはなかったのです。「本格的に、準備を始めなくてはならない時が、私のも来たのか」とも考えました。
そう言えば、流通ジャーナリストの金子哲雄さんが先日お亡くなりになり、彼が生前から、周到に準備した『葬儀・お墓・参列者に渡すお礼の手紙など』が話題になりました。世に産れ来る者は、いつの日か亡くなって行きます。これは誰にも止めることが出来ない事実ですが、金子哲雄さんの場合は、あまりに早すぎるお迎えだったかも知れません。
昔から『憎まれっ子、世に憚る』とか言って、嫌われ者が長く生き、世の中に残ってほしい人は早く、あちらの世界に行ってしまうような言い方がされますが、金子さんもその一人だったのかもしれません。
しかしその反面、日本で活躍されている芸術家や哲学者・科学者など、日頃は表舞台には出て来ない人でも、結構長生きされている方は多く居ます。その方達はかなりの高齢になられても、その世界で重要な仕事を今も続けています。世の中が必要としている方は、やるべき仕事が終わるまで、次の世界には行かせて貰えないようです。でも金子さんの場合は、短くても中身の濃い人生を思いっきり過ごされ、身の回りの整理もされ、残される人に出来るだけ負担を掛けないよう考えて、次の世界に旅立って行ったのだと思います。
以前も書かせて頂きましたが、私の奥さんの父親も、私の実家の隣のおじさんも、お墓を用意し戒名も頂き、残される者に迷惑を掛けないように生前から準備していました。
昨年話題になった、映画「エンディングノート」の砂田知昭さんも、自分の逝くべき姿を考え、熟慮してあちらの世界に行かれました。「金子さん、砂田さん、みなさん、お見事です」としか言いようが有りません。
その金子さんの話題をテレビの画面で見ていた我が家の奥さんが「金子さんが用意したお墓って、共同墓(血縁に関係ない他人同士が一緒に埋葬される墓)だよね。」と言いました。「金子さん、奥さんは居るけど子供がいないから、奥さんの事考えて個人墓、代々墓にしなかったのかな?」と言います。何の事かと思っている私に向かって「そうでしょ。個人や家族の墓を残されたら、奥さんが再婚出来なくなるもの。『残ったお前が、おれの墓を守れ』って、事でしょ」と言います。その話を聞いて、私は「なるほど」と思いました。彼女は続けて「でも子供がいれば、話は別だけど。子供には亡くなった親の『お墓参り』をして、子ども自身の存在を意識してほしいと思うもの。」
なぜこの様な事を彼女が話し出したかと言うと。それは、最近お墓の話をしていた女性が「私の所は娘しかいないから、『○○家之墓』と言うお墓は要らないと、嫁いだ娘から言われたの。だから共同墓にした方が良いのかな?と思うのよ」と話していたからです。また、子供が跡を継いでくれるかどうか解らないから「墓なんていらない」と言う人もありました。でも、良く考えてみるとそういう方は、自ら先祖・子孫との縁を切っているとしか思えないのです。「本当にそれで良いのですかと」うちの奥さんは言いたくなったのだと思います。
九月の中旬、私達の子供が卒業した中学校の、開校二十周年の記念式典で『相田みつを美術館』の館長さんのお話を聞く機会が有りました。その講話の中に「自分を生んでくれた両親二人から始まって、その両親の親は四人、そのまた親と数えていったら十代前で千二十四人、二十代前では・・?、なんと百万人を超すんです」と言う、『自分の番、いのちのバトン』と言う詩の話が有りました。その話を聞き、私はなぜか、すごく感動したのです。
私たちは数えきれないくらいの多くの祖先の思いを受け継いで此処にいるのです。私は先祖に対する『感謝の証』、また、これから世に産れ来る子孫に残す『家族の絆』のシンボルとして『お墓』が有るのだと思いました。そうした考え方が日本人の中に流れているから、今の自分が有るのではないのでしょうか?
2012.10.16:
yoneda
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