有限会社 しんせい
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第四十七話「縁(えにし)を考える。お話」
今、名古屋港から仙台港までの大型フェリーの中でパソコンのキーを叩いています。十月初めに、東京から岡山県に転勤になった次男の所に、純ちゃん(私の奥さん)と一緒に、息子がどんな生活をしているのか様子を見に行った帰りの船上です。
数年前までは、四人の家族と共に愛犬を自家用車に乗せ、仙台から故郷の広島までの全行程を、ただひたすら走りました。犬の死と息子たちの自立で、純ちゃんと二人きりの生活になった今は、仙台・広島を往復する全行程の半分以上の距離を稼げる太平洋フェリーのお世話になっています。広い船内で他の乗客に迷惑を掛けることも無く、ただ海しかない太平洋を目の前にして、こうしてパソコンを使っての仕事もできますので、今はこれが一番良い移動手段だと思っています。
昨年の震災からの忙しい日々が、今も続いています。今年はお盆も、秋彼岸にも『お墓参り』が出来ませんでしたので、『息子の様子見』を兼ねて、純ちゃんのお父さんのお墓参り、私の両親のお墓参り、ついでに(もしかするとこれが最重要事項だったのかもしれない)我々にとっての初孫を妊娠している長男のお嫁さんの見舞も兼ねて、岡山県から広島県へと十三万キロ以上も走行している愛車で、目一杯走り回ってきました。
今回の里帰りは、岡山の息子の所に行った『ついで』のお墓参りと言った形になっていますので、『ついで参りはいけない』と言われる人から見れば、とても悪いことをしているのかもしれません。しかし、二つのお墓参りも、息子の様子見も、お嫁さんのお見舞いも、全部大切な事で、どれも『ついで』と言う気持ちは有りません。「ここまで来たのだから、ついでに○○さんのお墓にでも、行っておこうか!」と言う心持でお参りする態度がいけないと、昔の人達が言った事が『ついで参りはいけない。』と言う言葉になったのだと、私は思います。
ですので、名古屋港から岡山までの行程の途中にある京都にも立ち寄って、昔通った学校の近く、京都市北区にある「わら天神」に久し振りに二人でお参りし『安産のお守り』も頂いてきました。ここは長男が生まれた時、『お守り』を頂いた神社です。懐かしくて近くを散歩していると、純ちゃんが学生の頃に下宿していたアパートが三十年前と同じ、昔のままの姿で建って居るでは有りませんか!若い頃の妻が下宿して居る時でさえ結構古い建物だったのに、今も学生が住んでいるようです。本当に京都は不思議な街です。多くの人が集まる繁華街に行くと、大きく街の姿が変わっているのに、そんな中にも昔ながらの建物がひっそりと建って居ます。それが実に見事に街並みに溶け込んで、ぜんぜん違和感がないのです。まあ、そんな姿が全世界から観光客を呼ぶ所以だとも思います。
京都は太平洋戦争の時、私の母親が住んでいた街でもあります。母が何故京都に居たのかは、今はもう判りません。私が幼い頃の原爆の日、原爆ドームの前を流れる川へ『灯篭流し』をしに行った時に母の口から出たのが「原爆投下の数日後に、親戚の安否の確認に、京都から帰ってきたの」と言う言葉でした。私が小学生になったばかりの頃の記憶ですので、それ以上は覚えていません。若い母が放射能の溢れていた、瓦礫だらけの何もかも無くなった広島の街を歩く姿を、なんとなく思い浮かべるのが精一杯だったように思います。
三十年以上前、私が学生生活を京都で過ごすことになったのは「母の縁(えにし)だったのか?」とも思います。また、今二人の息子が、広島・岡山に暮すのも、私と妻の縁なのかも知れません。「そんなのは、只のこじつけ」と言われる方も有るかとは思いますが、何かの理由が有るから、人と人とは繋がって居るので無いでしょうか?
お墓の仕事をさせて頂いて「ああ、そうでしたか!あの方のご親戚でしたか!」などと言う事も結構ありますし、街や駅、空港などでばったり会った友人や知人は、いつの間にか自分に関することで、重要な役回りをしていてくれることも有ります。逆に、結果的には「ひどい目に合った」などと言う事も有るかもしれませんが、それも何かの縁なのでしょう。
いま県内でも有名な洋菓子屋さんの仕事を、二十数年来取引のある石屋さんを通してさせて頂いていますが、その施主さんは、私が仲良くさせて頂いている保険屋さんの大切な友人だと言う事が、後日判明しました。大切な仕事だから、この人にお願いする。そうした気持ちが『縁』と為って、そこに有るのでは無いでしょうか。
2012.11.15:
yoneda
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