有限会社 しんせい

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 あるお寺の墓地にお墓を建てるべく、図面等の準備をして、住職が住んでいる庫裏にお邪魔したところ「○○さんの所は、たしか跡継ぎが、居ませんでしたよね?」と玄関先で言われ、お墓の建立は見合わせてほしい様な事を、何気なくほのめかされたのです。この度の仕事のお施主さんはかなり高齢の方です。二十年ほど前に、永代使用出来る墓地の権利を買い、すでに外柵(墓地の土台となる石工事)まで出来ています。確かに、このままこの外柵の上にお墓を建てると、無縁墓地になる可能性は有ります。
「そうか、工事は出来ないか?」と思っていますと、畳み掛けるように「私どもの寺は、新しく墓地の開発工事をした墓石販売店数社を指定業者としています。その店が墓地の永代使用と、墓石の販売をしていますので、指定店以外の石屋がお墓を建てる場合は『手数料』を頂く事になっています。」と、墓石販売店の営業マンさながらに、言われるのです。
「え、手数料を出せば、お墓を建てる事が出来るの?お寺は元来、檀家さん達の物のはずだけどな?新しく開発した墓地なら仕方が無いとしても、それと同じ様に昔からの墓地まで指定店だけにしか仕事をさせないのも、おかしな話だな?」と心の中でつぶやきながら「それでは、施主様と相談してきます」と言ってその場を辞しました。
 確かに私たちは、お寺や、墓参りに来られる方に迷惑を掛ける事がない様、充分に気を付けて作業をすると共に、感謝の心を『お水代』とか『お布施』というお礼(僅かばかりの金額ですが)で、お寺にお渡しする事があります。
 殆どのお寺で「ありがとうございます。」と本当にありがたそうに受け取って頂けます。また「こう言った物は、当山では一切頂いておりません。」と言って、堅くお断わりになる御寺もございます。中には、目の前で袋の中を確認して「うんん?」と言う顔をされる寺や、最初から一定の金額(結構、高額)を提示されるお寺も有ります。
 私どもは、仕事をお寺でさせて頂いておりますのでお寺の要望には出来るだけお答えするようにしております。しかし、それ以上に多くのものを要求される『お寺』も(少数ですが)有ります。
 何故そうした事に為ったのかと考えますと、一部の『墓石販売店』が、何かに付けてお寺に『品物』を贈ったり、お寺で行われる色々の行事の時『お手伝い』を提供したりすることで、そのお寺の檀家さんの建墓の仕事を、優先的に住職から廻して貰おうとした結果かもしれませし、また、最終的には墓地の『永代使用権』の販売をも独占しようと、必要以上にお寺の要望を石材販売店が引き出そうとしたからなのかもしれません。   
 ただの噂ですが、とある大手の墓石販売店の社長が、隣県のお寺に墓地開発のお願いに行った時、手土産の菓子の下には、福沢諭吉さんが集団でお隠れになっていたなどと、冗談ともつかない様な話が有ったそうですから、一部の墓石販売店の行動が、お寺を惑わせる事に為ったのも確かでしょう。
 そうした、お菓子の下から表に出てこないお金の話は、どの様な業界でもあるのでしょが、先日朝日新聞の記事にこの様なお話が書かれていました。
 定まったお寺の檀家になっていない施主様の葬儀の場合、葬儀社に僧侶の手配までしてもらう事が有ります。その場合、葬儀社から指名されて呼ばれた僧侶は『お布施』の一部を、手数料として葬儀社に納めるそうです。
 新聞記事によりますと、これはある意味での「節税(脱税?)」行為だそうですが(詳しくは二月十一日の朝日新聞朝刊)、『手数料』分を上乗せされて『お布施』を請求されるご遺族は、たまった物ではありません。
 私の知り合いのご住職も、おかしな習慣だと思った様で、施主様から頂いた『お布施』から支払うべき手数料の代わりに、皆さんで食べて頂こうと『菓子折り』を持って葬儀紹介のお礼に行ったところ、その葬儀社からは、二度と葬儀の依頼が来ないそうです。やはり菓子の下に『諭吉さん』の団体が居なかったので駄目だったのかもしれません。
 また、葬儀が終った後、葬儀社の紹介で建墓の依頼が指定の墓石販売店に行く事が有ります。この場合も、墓石販売店から葬儀社に多額の『お礼』が支払われるようです。(そのお金は、お墓の代金に上乗せされる可能性も有ります)
 こうしたお金は、世の中を円滑に動かすために、ある意味必要な物かも知れません。しかし、やり方次第では、そう言った不必要なお金を出さなくても良くなると思うのです。
 それは、元気な内に、やれる事をやってしまえば良いだけなのです。法律的な事の相談。お寺・教会など、宗教が必要ならば自分の眼で、その宗教者の人柄を確認しておく事。または墓地・墓石。準備しておけば、残される人に、必要以上の手間や、お金を掛けさせる事も無くなります。
 何が家族の『あんしん』なのか、今一度考えてみてください。
2011.02.15:yoneda:count(130):[メモ/仙台発・大人の情報誌「りらく」]
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