有限会社 しんせい
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第二話「墓石不要の時代?」
遺言・葬儀・お墓・仏壇・保険、いずれも大切な事柄ですが、私は石屋ですので、まずは墓石の話からはじめます。
お墓の発祥は・・・、などと始めても、面白くもなんとも無いでしょうから、お墓は何故必要なのか、本当の必要なのか?と言った所から、みなさんと一緒に考えて行きたいと思います。
ところで、みなさんは自分のお墓を想像したことがありますか?田舎にある昔ながらの墓(代々受け継がれた墓石)。近代的な霊園にあるモダンなお墓(お墓参りに来てくれた人達が「ふうんん」と頷く様な!)。お寺の墓地にある合祀墓(みんな一緒で楽しそう?)。しかし、どの様な「お墓」にしても、故人(自分)が生きた証がそこ(墓地・墓石)に存在するのだと、私は考えております。
でも、このところの新聞や雑誌の記事を見ますと、まるで墓石は有っても無くてもよい様な内容のものが見受けられます。ちょっと前に話題になった「樹木葬」や、海や山に散骨する「自然葬」、遺骨を小さなカプセルに入れてロケットで打ち上げる「宇宙葬」と言うのも有りました。どれも新しい形の「お墓」なのでしょうから、悪くはないと思います。
それでは改めて、お墓って何なんでしょう。お墓が在る事で人間は幸せに成れるのでしょうか?お墓なんか無くても人間は幸せなのでしょうか?
そう言えば、仲良くさせて頂いている近所のガーデナーに「石屋さんは、幸せですね。」と言われた事が有ります。「さて、私の何が、何をして幸せなのか?」と思いました。不景気でお金には追われているし、人間関係もすべてが円満だとは言えませんし、「何が幸せなものか。」と思いながら、「私のどこが幸せそうに見えますか?」と訊いてみると、「家族仲は良いし。楽しそうに生活しているし。第一、いつも前向きに活動しているように見えますよ。」との事。「そうですか!」他人にはそう見えているのですか。ならば、私は幸せなのかな。でも、若い頃の私は、自分の仕事に、いまひとつ自信が持てなかった。なんとなく「石屋」という仕事を後ろめたく思っていた。石屋にしろ、葬儀屋にしろ、他人の不幸を食い物にしている商売ように感じていたのかもしれません。しかし、数年前から考え方が少し変わってきました。毎日石を見ているせいなのか、長い歳月をかけて地中で生成された石に愛着が出てきたのか、今では人々の心の中に、「墓」を通して、家族の思い出を残すという大切な仕事をしているという自負が出てきました。そうした思いが、私を幸せそうに見せているのでしょうか。
ところで、なぜ、世界中どこに行っても「お墓」は石で出来ているのでしょう。私は、人間は「石」に永遠の生命を感じているのではないかと考えています。千年以上もの昔の石の構築物が今でも現存します。大理石や砂岩であったり、花崗岩であったりしますが、その地域にあった素材の石で出来上がっています。創った人々の思いを、今も語り続けているのです。
「自然葬」や「樹木葬」を私は否定しませんが、自分の生きた証や思いを家族に残すことも大切ではないかと思います。
自分は誰よりもがんばったと思う人は、がんばった証として。自分が幸せであったと思える人は「私は幸せだった」という思いを家族に残してあげてほしいのです。
また、残された家族は「お墓参り」をすることで、故人とゆっくり話をしていただきたいと思います。
私が所属している会では、いろいろな経営者や、あらゆる分野で働く人から、お話を聞くことが出来ます。その方達の講演でよく出るお話に「事業や、仕事に行き詰った時、先祖のお墓に行って、墓石に向って話しかける」そうです。相手は石ですから、絶対返事をしてくれる事はありませんが、墓石と向かい合っていると、何かが聞こえてくるような気がするそうです。それが何かは人によって違うと思いますが、ここに自分の基本が在ると思うことで、次に進むことが出来るのかもしれません。
いま家族のお墓がある人は、きれいに掃除をして、長く使っていただきたいと思います。また今お墓をお持ちで無い人は、これからの人達にお墓を残してあげてほしいと思います。
「千の風になって」という唄が流行し、歌詞はまるで「墓なぞは必要ないものだ」と歌っているように聞こえますが、「千の風・・」という唄は、決して墓は不要だと歌っているわけではありません。人間は死んでも、皆さんの思い出と一緒に生きているのです。と、歌っているのです。作者の新井満氏が、友人の死に対してこの唄を創った時、亡くなった友人は常に我々と共に在る事を、故人の家族に伝えたかったと聞いたことがあります。
「墓」は心の支えです。大切にしてください。人生の最終駅がお墓なのです。
2009.01.15:
yoneda
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