米田ノート
▼第十三話「こころの時代 その2」
新年明けましておめでとうございます。
昨年の一月号から始めたこの連載に対し、皆様から色々なご意見を頂き、自分自身の世界が広がった事を心より感謝します。
また、引き続き連載させて頂ける事にもお礼を申し上げます。
ところで、一年の計は元旦にあると申しますが、私の先輩の奥様は、元旦に必ず毎年行う、重要な作業が在るそうです。
それは『遺言状』の確認と修正だそうです。
想うに、過ぎた一年の感謝と、これから迎える新たな一年に対する心構えなのでしょう。思いついてもなかなか実現出来ない作業を、毎年繰り返されている事に、驚きと共に畏敬の念を感じざるを得ません。
そもそも、現在有る自分は、祖先から受け継いだ物です。それをまた、子孫に受け継いで行って貰わなくては、生物としての人類の存在は有り得ません。そうしたあらゆる生き物の生存の積み重ねが、この世界を作り上げているのですから、今の自分が存在することを、心から祖先に感謝し、真摯な態度でこの一年間過ごさなければと思っています。
昨年末近くに、『りらく』編集長の田中さんから二通のお手紙を受け取りました。お手紙の内容はお知らせ出来ませんが、お寺と戒名(法名)に関することです。お二人とも、これまで誰にも話できず、私の様な者にでも吐き出さなければならないくらい「悩まれたのだろう」と思われる内容でした。
こうした仕事をしていると、お寺に関してのお話は色々と耳に入ってきます。聞いていて、心地好い内容も有りますが、聞き苦しいものも時として在ります。しかしそうした事は、心の持ち方や、少し見方を変えたりするだけで「なんだ、そんなことか!」と思える事も有るのかも知れません。
すぐに解決できるような答えを、私が出せるとは思いませんが、こうした疑問の積み重ねによって、より良い方向に向かうことが出来るのではないでしょうか。お二人には私なりに考えて、後日ご返事させて頂きたいと考えております。
昨年の夏、息子たちの通っていた中学校のお世話を一緒にしていた知人が、五十を少し過ぎたばかりの年齢で亡くなりました。ご葬儀を終えたばかりでしたが、奥様からお墓の相談を受けましたので、すぐにご家族と一緒に寺院墓地や霊園を数箇所に見て周りました。
話し合いの後、一番気に入った墓地の永代使用の契約をして頂き、お墓のデザインや石種の打ち合わせが出来るよう、図面を製作して、石材のサンプルも準備をし、亡くなった知人の為にも、なるべくならば四十九日までに建墓したいと思っておりましたが、それまでの張り詰めた気持ちから心身とも解き放たれ為なのか、数日後に奥様も息子さんも体調を崩され、打ち合わせを少し延ばすことにいたしました。
しかし、そのことが幸いしたのか、昨年のお彼岸の頃は天候の良い日が続き、納骨の日も穏やかな日和になりました。
その日、奥様は亡くなられたご主人が好きだったお菓子を手作りされ、息子さんは故郷のお酒を用意し、遠方から来られた親戚も御一緒に、和やかな、気持ちの好い納骨となりました。
お手伝いさせていただいた私の心も洗われるようで、『良い仕事をさせて頂いた』と心地好くなりました。
故人の想いは、こうして息子さんや娘さん達の心に受け継がれてゆくのだと思います。
人によって感じ方は違うでしょうが『お墓は家族の思いを受け止める大切な存在で有る』事を、私は改めて認識したのです。
今でも毎週、毎月の様にお墓参りをされているようで、墓地に行く度に新しい綺麗なお花が、お墓に供えてあります。
2009.12.15:yoneda
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