ぶっくぶくの部屋

ぶっくぶくの部屋
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また知ったかぶりして難しい言葉使って…と某氏に
言われそうだが、あえて。
(そういう非難にはオレなりに大反論もあるのだが、
まあまあここはおさえて)
驚天動地「きょうてんどうち」
地が動き天が驚く、つまり天地がひっくりかえるような驚き。
この言葉がぴったりのここ2週間だった。
読みかけの本も3月10日からそのまま。
かれこれ2週間以上も本を読む気になれなかった。
ずうっとテレビにくぎ付け。
正しい報道は、世の中を是正・修正していく働きがあるんだなあ
と少しばかり実感した次第。

File No.222
『深夜特急5 トルコ・ギリシャ・地中海』沢木耕太郎(新潮文庫 438円)
オススメ度★★★★☆

昨晩は久々に寝床読書。
沢木青年の旅もいよいよヨーロッパに入った。
本編の特長は、随所に「旅論」が出てくること。
国情混沌としたインドや中東を抜け、安定したヨーロッパに
入ったことで余裕が出てきたのか…。
青年沢木はあえて言う。
「旅は人生に似ている」と。
湧き立つような興奮の毎日だった旅の始めに比べ、今はそんなに
興奮をおぼえなくなったと。
旅も人生も何かを失うことなく前に進むことはできない。
だから、旅は人生に似ているのだ。
確かに、旅を人生にたとえたり、歴史上の人物を会社経営者に
なぞらえたりすることは、沢木の感性ではまずあり得ないこと。
オレもそういうことは面映ゆすぎてキライだ。
そういう類のことを言う人に会うと、
「マジかよ、はずかしくないのかな」と心の中で思ってしまう。
だけど…
沢木の「旅は人生に似ている」には、その理由の源や、自ら実体験
してきたことの重みもあって、なぜか共感をおぼえる。
人は40歳代50歳代と進むにつれ、人生について考えるように
なると言うが、沢木もそうなのだろう。
なぜか?
それは、沢木が旅したのは26歳の時だが、この『深夜特急』を
まとめたのは10年以上も後のことなのだ。
旅の熱に浮かされるがままに書いたのではなく、少し冷静に
なってから、当時の自分の心の動きを遠距離から眺めながら
書いている。だからこそ、オレは面白く感じる。
理屈っぽい旅論だけでなく、本編では、青年沢木のおちゃめな
行動もいろいろ出てくるので面白い。
例えば、ギリシャのアクロポリスの丘に入る時に、インドで
作ったニセ学生証を提示して一蹴された話とか…、けっこう
笑える。
いよいよ次は『深夜特急』の終着駅だ。
先週末はちょいと出張なんぞに行ったもんで、しばらくぶりのアップ。
行ったのは、山陰の米子・境港・松江といったあたり。
米沢も吹雪だったらしいが、あっちも着いてからずっと雪・みぞれの荒天。
そこでお決まりの魔女探しならぬ、雨男ならぬ「雪男」探し。
「雪男はオマエかっ!」の応酬で、当然のことながら明確なオチがない
まま…。
そこで、ハタと考えてみた。
オレは雨(雪)男なのか、晴れ男なのか、と。
あれやこれや思い出してはみるものの、これまた明確な結論に至らず。
まあ無理して結論付ければ、雨(雪)男でもなし、晴れ男でもなし、
言うなら「曇り男」かな?
人格・風貌と同じで、なんとさえないハナシ…。

File No.218
『深夜特急1 香港・マカオ』沢木耕太郎(新潮文庫 400円)
オススメ度★★★★☆

出張の移動時間が長かったもんで、携えて行った4冊すべて電車や
飛行機の中で読了。
持って行ったのは沢木耕太郎の『深夜特急』シリーズ。
今回は四連発アップといこう!

なぜこの本なのか?
それは、少し前に読んだメイキングブックとも言うべき『深夜特急
ノート』がきっかけ。
こりゃあ面白そうだと思い立ったが吉日、6冊一気に購入。

今や我が国の代表的なノンフィクションライターである沢木耕太郎が
26歳の時に思い立って、香港からロンドンまでユーラシア大陸横断の
一人旅に出た時の旅ルポ。
沢木は昭和22年生まれだから、26歳の時と言えば、昭和48年頃
のことになる。
海外旅行でさえまだまだ一般的ではなかった時代に、単身で、しかも
わずかなお金で、バスを基本にした旅に出たというのはすごいパワーだ。

オレも一人旅が好きだが、26歳の時にこんなパワーはなかった。
金がない、ヒマがない、アブない、カッタるいなどなどあらん限りの
理由をつけて旅立てない、というのが大方のところだろう。
そういうモロモロのことをふっ切って旅立てることがまずスバラシイ。

この『深夜特急』は、出だしの香港・マカオ編からいきなり面白い。
沢木は、香港の街の活気と猥雑さ、そして陰と陽の織りなす怪しげさに
魅せられて、熱に浮かされたように歩き回り、思わぬ長期滞在となる。

本編での圧巻は、マカオでのギャンブル。
カジノで「大小」という博打にハマり、あやうくこれからの旅費を
摩ってしまうところまでいく。
26歳の青年がチャンブルにのめり込む姿がリアルに描かれていて
すごく面白い。
と、同時に、「ああ、みんなこういう経験あんだな」なんて妙な安心
したりして。
カジノに未練を残しながら沢木青年は次の目的地マレー半島へ。


File No.219
『深夜特急2 マレー半島・シンガポール』沢木耕太郎(新潮文庫 400円)
オススメ度★★★★☆

沢木青年が次に行ったのはタイのバンコク。
いかにも気に入りそうな街なのだが、香港の魅力の後味が強烈に残って
いるからか、いまいちピンときていない。
そういうところがまた面白いのだが。

この編での読みどころは何と言っても、マレーシアのペナン。
ひょんなことから娼館のような宿に泊まることとなり、そこの娼婦や
ヒモの男たちと奇妙な交流が生まれる。
ここでも思わぬ長逗留に。

旅はクアラルンプールからシンガポールへと続く。
どちらも街としてはビンビン来るようなものはあまりなかったようだが、
大事なことに気付きはじめる。

そのひとつは、シンガポールで会った二人のニュージーランド人。
彼らと話しているうちに、旅は「アラウンド・ザ・ワールド」で、
期間は「3、4年」、旅の後の予定は何も考えていない、という
スケールに打ちのめされる。
自分の旅にも予定なんて何もないのだ、と改めて思い直すことに。

もうひとつは、自分が旅に出た本当の理由について。
それは、プロの書き手になるという決定的な局面から逃げたかった
のだ、ということに気付く。

そして、沢木青年の旅はさらに深く進む…。


File No.220
『深夜特急3 インド・ネパール』沢木耕太郎(新潮文庫 400円)
オススメ度★★★★☆

シンガポールを後にした沢木青年は、いよいよ前半のヤマ場となる
インドへ。
カルカッタに空路で行くためにバンコクに戻り、そこのインド航空
支店員と交渉していると、何と、インド人の彼から、
「我妻先生はお元気でしょうかね」と質問される。
そう、わが郷土が生んだ不世出の民法学者我妻栄博士のことである。
うわあ、こんなところにも出てくるんだ。
沢木青年は経済学部の出で、我妻博士の高名は知っているものの、
詳しくはない、というところが少し残念ではあるものの…。

カルカッタでは、いろんなことにショックを受ける。
例えば、まだ7,8歳の女の子が、わずか3ルピーで体を売ろうとして
くることに衝撃を受ける。
ちなみに、その当時のレートや物価から、3ルピーは日本円にして
100円ちょっとぐらいか。
イギリス人がインド人を評して、
他国の言語にあってヒンドゥー語にないのが、
「ありがとう、すいません、どうぞ」だという文化・習慣・国民性
の違いにも直面する。
(あくまでもその当時のこと)
まさに「異文化ギャップ」に自らの身をさらして、とまどい、怒り、
驚いている姿がそこにはある。
「秘密の花園」のエピソードも面白いゾ。
世界には、こんなこともあるのかって思ってしまう。

インドでの後半に沢木青年はついに体調を大きく崩し、死の影が
忍び寄り、前途が危ぶまれる。


File No.221
『深夜特急4 シルクロード』沢木耕太郎(新潮文庫 400円)
オススメ度★★★☆☆

沢木青年の病は、インドの薬でなんとか治る?のだが、それが
どんな薬なのか全然わからないところがまたスゴイというか…。

旅はインドからパキスタンへ。
「チキンレース」顔負けのパキスタンのバスの凄まじさは、読んで
いるだけでも恐ろしいやら、笑えるやら、ほんとにこんなバス
あんのか?と思ってしまう。
パキスタンのバスはあらん限りの猛スピードで突っ走りまくり、
バスがバスを抜こうものなら、もうマッチレース。
なんとなれば、対向車線にハミ出るわけだから、対向してくる
トラックとはまさにどちらかよけた方が負け、みたいなチキン
レースを繰り広げることになるそうな。
ああ、やだやだ、そんなバスぜったい乗りたくない!

旅は、アフガニスタンからイランへと続く。
今だったらヤバくてとっても行けないようなところだろう。
そこを、気の遠くなるような時間バスに乗ってただひたすら
走る。
そこを読んでいた時、オレもかなりカッタるい電車に乗って
移動中だったが、数日に亘るオンボロバスでの不毛地帯のような
ところの移動に比べれば、屁でもない(下品で失礼)気がしてきた。
でも、今どき3時間もかかる電車の中で車内販売なしというのは
いささかこたえるけど…。

イランのイスファハンのバザールでの駆け引きも面白い。
沢木青年はある時計屋にあった懐中時計をいたく気に入り、
3日間も通い詰め、ついに半値以下に値切る。
面白い話なんだが…、なんだか少し興ざめた気分になってしまった。
こういう値段の駆け引きが随所に出てくる。
それは安く旅するには必要不可欠なことなのではあるが、
ハッタリをかましたり、ナメられまいとして必要以上に強く出たり、
わずかの値段の差に一喜一憂したりする姿が、たまにだといいんだが、
こうしょっちゅうだと、ヤレヤレまたか、と思ってしまう。
「オイオイ、だんだん気持が荒んできてるんじゃないか?」
と本の中の沢木青年に言いたくなる。

それと…、
自分とヒッピーの間に距離を置いたような書き方をしているけど、
自分だってほとんどヒッピーじゃないか、と言いたくなる。

旅も中盤になって、沢木青年のそういうところが少しハナにつく
ようになったんで、今回は★3つに格下げ。
まあ、旅の中ダルミといったところかなあ。

とは言え、旅の興趣はまだまだ続く。








昨日のブログを見た知人からさっそくメール。
「オマエ、わりとそそっかしいんだなあ。安心した」
へっ?何で「安心」なの?
「緻密(≒こまい)で、厳格(≒カタい)なイメージ
あっからなあ」
何をおっしゃるうさぎさん。
電源コードひっかけてデータ消失なんて一度や二度じゃ
ありゃせんぜ。
シートベルトしたまんま車を降りようとしたことも数度に
及んでおりやす。
自慢じゃあないが、飲食店に並んで入ったことがない。
ん?、1回か2回ぐらいあっかな。
新宿の人気ラーメン店に行きたいって知人がしつこく言う
もんだから、いやいや、ほんとにいやいや並んだ。
時間にしてわずか10分足らずだけど、オレのイライラは
最高潮に達し、もう顔真っ赤!
もうそうなったら、何食べてもウマいはずがないんで…。
その上「緻密」だなんて。
オレの机見れば誰でもわかる。職場も家も。
まあ「イラチ」というよりは「せっかちのズグダレ」という
最悪のパターンだな。
この歳になって性格直んないし…。

File No.217
『八日目の蝉』角田光代(中公文庫 590円)
オススメ度★★☆☆☆

これ、昨年NHKでドラマ放送したんだって?
オレは当然観なかったけど、観た人が「すっごい面白かった」
と言ってた。
原作を読んだ人も口々に「こりゃ面白い」って言うんで、
そんじゃあオレもご相伴にあずかろうかと。
主人公の女性希和子が不倫相手の家庭から乳児を連れ去り、
日本列島を西へ西へと、いろんな女たちにかくまわれながら
逃亡を演じる物語。
確かに0章の立ち上げもいきなりリズムに入っていけるし、
1章の逃亡劇もいろんなバリエーションがあったそこそこ
面白い。
そして2章は、前半で解き明かしていないいろんなことを
ひも解いていく趣向になっている。
ラストもそれなりに劇的で、センスも良い。
だけど…、
オビに書いてるコピー
「心を震わせるラストまでページを繰る手が止まらない!」
はかなりオーバーな表現だ、とオレは思う。
確かにこういう本は一気に読んだ方が面白い。
かく言うオレも、昨晩一気に読んだ。久々に2時過ぎてしまったけど。
ふつう、このぐらいの時間まで睡魔を遠ざけて読むと、読み終わって
からも目がさえてなかなか眠れないもんだけど、あっさり眠って
しまった。
ん〜、ということは、オレにとっては、
そこそこ面白いけど、すっごく面白くはない、ということか。
まあ、前評判が高いものには懐疑的になってしまうという
「そんぴん」な性格もあっかなあ。

せっかち+ズグダレ+そんぴん=???

昨日の深夜のこと。
ほぼ1週間ぶりにアップしようと思い、あれやこれや
打ち込んで、いざ「投稿」。
そしたら、な、なんと、無情の「ログアウト」。
なんでやねん!
当然、打ち込んだ内容は虚しく失われ、気持はブチギレ、
電源もブチ切って寝てしまった。
寝床で気持を落ち着けながら、つらつら考えるに、
だいぶ以前にもこんなことがあったなあ、と苦笑い。
今をさかのぼることン十年前、オレがルーキー社会人だったころ、
職場に初めて「ワードプロセッサー」なるものが入った。
バカでかくて、バカ高いその機械は当時先進的なオフィスの
象徴でもあった。
物珍しさのほとぼりが冷めたころ、その機械の操作は当然
最下っ端のオレの役目に。
仕事に燃えに燃えてた頃のある日(今が燃えてないということでは
ないので誤解なきよう)、深更に及ぶまでワープロをひたすら
打っていた。自慢の?力強いストロークでバシバシと。
もうあらかた終りの頃、一服つけて「ふあ〜」と手足を伸ばした
とたん、ディスプレイがプツン…。
一瞬何が起きたのかわからない???
察しのいい方はわかるでしょ、身に覚えがあるでしょ。
そう、伸ばした足でコンセントを外してしまったのよ。
あれやこれやいじくりまわした結果、失われたデータが復元しない
ことを悟り、奈落の底へ…。
確か、かなりの分量の名簿だったような気がする。
期限は明日だけど、もう帰らないと終電ないし、打ち直す気力もない。
そして、なぜか、そのあとどうしたかの明確な記憶もない。
家人の証言から類推すると、駅についてからどっかの飲み屋でバカ飲みし、
かつてないほどの泥酔に陥り、あらん限りの大声で演歌をがなりながら
玄関に倒れこんだとか…。
その演歌とは、「矢切りの渡し」だったそうな。
「連れてえ〜、逃げてよお〜」
どっかに逃げて行きたかったんだろうなあ、きっと。

File No.216
『ヘボン物語』村上文昭(教文館 1800円)
オススメ度★★☆☆☆

前置きがかなり長ったらしくなってしまって恐縮至極。
先日読んだ清水義範の『銅像めぐり旅』に触発されてか、ヘボンの
ことがもっと知りたくなって、図書館でこの本を借りてきた。
ヘボンと言えば「ヘボン式ローマ字」ぐらいしか知らなかったが、
ところがどっこい、この異人さんは日本の近代化のために、数多くの
偉業を遺している。
ヘボン、本名ジェームス・カーティス・ヘッバーンは、アメリカ
生まれの医師にして宣教師。
44歳の時に夫人を伴って幕末の日本にやってきた。
目的はもちろんキリスト教の布教。
ところが、当時の日本はまだ禁教令がでていたため、ヘボンは
庶民に病気の治療を施してやったり、私塾を開いて英語や医学を
教授したりした。
とくに眼疾の治療の腕がよく、またたく間にその名声が広がって
いく。
そして、最大の偉業が、現代の英和辞典・和英辞典の基礎となった
『和英語林集成』を編集・刊行したこと。
日本語を殆ど知らない外国人が英和辞典を作るなんて気が遠くなって
しまうようなことだ。どれだけの艱難辛苦を乗り越えたかわからない。
ヘボンが横浜や神奈川の街に出て、片言の日本語で、
「コレナンデスカ?」
と聞いてはカードに書き込み、毎日毎日語彙を拾っていく姿が
彷彿としてくる。
この辞書の刊行によって、それ以後の英米と日本の交流・コミニュ
ケーションの扉が開いていくのである。
また、彼のヘボン塾は、後の明治学院の淵源となり、彼自身、明治
学院の初代総理を務めている。
クララ夫人も英語教育にあたり、それは後のフェリス女学院の
ルーツとなる。
ヘボンが日本を後にしたのは77歳の時。
滞日は33年の永きに及んだ。
人生の黄金の時を日本の近代化に捧げた、と言っても過言ではない。

それなのに、なんで★2つなのか?
それは、この本の構成や記述がオレ的にはいまいちの感があったから。
これだけの人物なんだから、もっと情緒的に、熱を込め、時系列的に
ヘボンの人生の足跡を丹念に、真正面から描いてほしかった。
でも、それはオレの勝手な言い分でもある。
学者(研究者)とライター(作家)のアプローチ・表現は根本的に
違うのだろうから…。

蛇足ながら…。
ヘボンは、東北を旅して『日本奥地紀行』を著したイザベラバード
とも交流があったようだ。
なんとなれば、お雇い教師として米沢に赴任したチャールズ・ヘンリー・
ダラスとも会っていたのではないだろうか。
そして、しばし米沢の話に花が咲いたのではないだろうか…、
なんて想像すると何だか面白いなあ。



所用で山形に行った折、お昼に某外食チェーン店に入った。
メニューを開き、ラーメンよりはるかに安いパスタの値段を
見てビックリ。当然オーダーはソレ。
これまた信じられないスピードで出てきたパスタを、得意の
早食いで平らげ、ナプキンで口を拭って昼食終了、それまでの
所要時間18分。さしたる会話もなし。
連れはかなり怪訝そうだったが、オレはこのスピードに満足。
そりゃ、ウマいものは食べたいけど、根は何でもいい雑食性の
タチ。好き嫌いもあまりない。
沢木耕太郎の言う「旅する力」には「食べる力」も含まれて
いる。
その意味だけにおいては、オレは間違いなく合格だろう。
でも、食べる量は最盛時の半分から3分の1ぐらいに激減。
えっー、それで!?
とよく言われるがホントのこと。
だから今の立派な?カラダがある。

File No.215
『きことわ』朝吹真理子(文芸春秋2011年3月号 860円)
オススメ度★☆☆☆☆

先日、平成22年度下半期(第144回)の芥川賞受賞が発表された。
受賞作は2つ。
朝吹真理子の『きことわ』と、西村賢太の『苦役列車』。
両受賞作の全文が掲載されている『文芸春秋3月号』を買って
さっそく読んでみた。
まず『きことわ』から。
ん〜、正直言って何度読むのを止めようかと思ったかわからない。
「だからナニ?」と幾度も心の中でつぶやき続けていた。
主人公の永遠子(とわこ)15歳と貴子(きこ)8歳が逗子の
別荘で過ごした夏の思い出からはじまり、25年後に再会する
というストーリー。
主題は、選者の村上龍の言葉を借りると、
「失われた時間は取り戻せないが、それはそれで美しいし、
現在とつながっている」ということらしい。
確かに、過去の記憶とか、時間の流れなどを描写するセンスには
キラリとしたものを感じる。
オレが読むのを止めようと思ったワケは、
まず、ストーリーが退屈。時の流れの描写も、そういう感性に
ピタっとはまる人でないとちょっと…。
そして、文章が少しヘンだなあと感じるところが随所にある。
オレだけそう感じるのかも知れないが。
さらに、あってもなくてもいいようなウンチクが少しハナにつく。
会話で「デボン紀の…」とか、「マリアナ海溝の…」とか言われたら、
無学なオレは「はいはい、わかったから」と思わず言っちまうだろう。
そして、なんで、「およそ350,000,000ねんまえ」と
ここだけ横書きで書くのよ。
これも、時間描写の趣向のひとつなのかな。

それにしても、今回は選者の多くがこの作品を好評価している。
石原慎太郎と村上龍は別として。
もっとも石原慎太郎はいつも激辛口の選評で有名。
それはそれで読者としては面白い。
選者たちは好評価の理由をあれやこれやと尤もらしく述べているが、
オレにはいまいちよくわからない。
なんだか文学のためのブンガクを小難しそうに論じているだけで、
読者のための文学になっていないのでは、と思うのだが。
まあ、今に始まったことじゃないけど。


File No.216
『苦役列車』西村賢太(文芸春秋2011年3月号 860円)
オススメ度★★☆☆☆

今回の芥川賞受賞2作品は、その著者の経歴も含めてすごく対照的
で面白い。
もしかして、意図的にそうしたのでは、と勘繰ってしまうほど。

『きことわ』は、逗子の別荘という富裕層の中のセッティング。
著者も私大大学院在学中で、華麗なるブンガク家の系譜に生まれている。
一方、『苦役列車』は、中卒の荷役日雇い労働者が主人公。
著者自身も社会の低層を這いずってきているらしい。

オレとしては、『苦役列車』の方にシンパシィを少し感じるなあ。
知的でハイクラスなお嬢様より、薄汚れた貧乏でモテない男の方が
オレに合っているからかも。
さらに、『苦役列車』では、低学歴・低所得・低容姿(こんな言葉
ないけど)ゆえのあきらめや嫉妬心、そして根拠なき高い自尊心など
が赤裸々にえんえんと続いている。
おそらく、著者自身の体験からくるものもあるんだろう。
この主題も村上龍の評を借りると、
「人生は不合理で不公正で不条理だが、それでも人は生きていかな
ければならない」となる。
不合理・不公正・不条理は山ほど出てくる。
それから生じる主人公の人格の歪みもよく描かれている。
しかし、「それでも生きていかなければならない」があまり感じ
られない。
ここでも、「だからナニ?」と思ってしまう。
「だからナニ」は読者それぞれが考えることだろうが、考えさせ方
が一番大事なんじゃないかなあ…。


いやあ〜、今年もきたねえ、健診結果。
どっこも悪いところなく、健康そのものオールA!…
なんてことは夢のまた夢、どっぷりブルーに浸るこのごろ。
「一体何がいけないんじゃ!」
と自問してみれば、
「不規則、喫煙、運動不足、カロリー過多、偏食、飲酒、ストレス、
無趣味、不感動、少涙 などなどなど…」と洪水のような自答の数々。
そして、酒飲んで盛り上がるのは健康話とくりゃ世話ない。
その上に、毎年なぜか身長が少しずつ縮んでいる。
わずか2〜3mmほどだが、ここ3年ほど続落している不気味さ。
なんでやねん?

File No.214
『旅する力 深夜特急ノート』沢木耕太郎(新潮社 1600円)
オススメ度★★★★☆

健康を蝕むストレスから解き放つひとつの手だてに「旅」がある。
それも、連れとワイワイガヤガヤの宴会旅や物見遊山ではなく、
一人っきりで見ず知らずの土地に行って、風や光を感じながら
気持のおもむくままに流れるような旅。
そんなことを前に知人に話したら、
「くっらいなあ〜オマエ」
なんて言うもんだからアッタマきたおぼえがある。
まあ、話す相手を見誤ったオレが悪いのかも。
一人で風浪の旅に出てみたいという人間が少ないとしたら、
沢木耕太郎の『深夜特急』がこんなに支持されるハズがないではないか。

この『深夜特急』は、著者が26歳の時に、ユーラシア大陸をアジアから
ヨーロッパまで、基本的にはバスで一人旅した記録である。
それは、「第一便」から「第三便」まで出版され、今回読んだこの本は
そのメイキング・ブックとでも言うべき「最終便」にあたるもの。
読み進めていくにつれ、これは旅に関する珠玉のようなエッセイだと
いう感を深めていった。
奇しくも、この本の中に、なぜ一人旅なのかということがうまく書かれて
いる。
「ひとり旅の道連れは自分自身である。周囲に広がる美しい風景に感動
してもその思いを語り合う相手がいない。それは寂しいことには違いないが、
吐き出されない思いは深く沈潜し、忘れがたいものになっていく」
そうそう、オレが思っているのもそういうこと。
また、こんなことも書いている。
「旅は人を変える。しかし変わらない人というのも間違いなくいる。
旅がその人を変えないということは、旅に対するその人の対応の仕方
の問題なのだろうと思う。人が変わることができる機会というのが
人生のうちにそう何度もあるわけではない。だからやはり、旅には
出ていった方がいい」
うむ〜、これほどインパクトのある旅へのいざないはないなあ。
なんだか、この本を読んでると、失いかけてた「旅する力」が少し
ずつ甦ってくるような気がする。

確か40歳になった時、これからは年に一度必ず一人旅に出るゾ、と
決意したのだが、実行に移したのはわずか2、3回。
年々「旅する力」がダウンして、億劫になっている自分に気付かされる。
これでは人間としての「仕込み」が足りないと痛感しつつも、日常に
流され紛れてしまうばかり。
それはオレだけではないだろうが。
まあ、とにもかくにも今年は『深夜特急』を携えて一人旅に出よう、
と思う。
この本は、オレにそんなモチベーションを与えてくれた。

著者も書いているが、10代後半から20代前半のころの旅って
なぜ忘れられないんだろう。
オレも、30数年前に初めて誰にも告げず一人旅に出て、平泉の
義経堂から眺めおろした北上川の早春の風景が未だ忘れられない。
そんな、忘れられないような旅をしてみたい。
著者が言うように、自分を変えられる機会なんて、そう多くは
ないのだから…。

今日、街で自転車乗ってる人を見つけた。
もちろん米沢で。
冬でもがんばって自転車乗ってるオジさん・オバさんって
米沢には結構いらっしゃるんだけど、今日の人は明らかに
スポーツMTB系の自転車に乗っていた準本格派。
今日は暖かかったし、大通りの路面は乾いていたし、
きっと待ち切れずに乗り出してきたんだろうナァ。
オレもちょっと「ムズ」(ムズムズまではいかない)と
したけど、もう2カ月以上もブランクがあると、
大丈夫かなって不安がよぎって…。
冬の間のトレーニングもしてないし…。
もう少ししたら、車に自転車積んで、どこか暖かいところで
走ってみようかなあ〜。

File No.213
『銅像めぐり旅』清水義範(祥伝社 1500円)
オススメ度★★★☆☆

久々に図書館に行ってみた。
新刊本(新規購入本)のコーナーを見ると「県出身・在住作家
一覧」なるものが掲出されてあった。
前からあったのかも知れないが、ほう、なかなかやるじゃん。
その調子で、鈴木由紀子サンの近著も10冊ぐらいズラっと
並べてもらえると、ますます図書館が好きになるんだけどなあ。
そのあとはどうすんだって?
そりゃあ、保存用に2〜3冊残して、あとは希望する市民の方に
抽選で進呈すべきよ。
希望者がいなかったら?
皆無ということはない。
まず、オレも手を挙げる。
あれ、買って読んだんじゃないのって?
実は、昨晩の宴会で酔った調子で、山形からいらっしゃった客人に
あげちゃったのよ。まあ、後悔はしてないけど、オレとしても
一冊は所有しておきたいかなあ〜って…。

で、表題の本は、図書館に行ったときに借りたもの。
今春、米沢にもうひとつ象徴的な銅像が建立されることになったので、
銅像に関する本でもよんでおこうかなあ、ぐらいの動機。
写真があって、小難しいウンチクがあって、みたいな本をイメージ
してたんだけど、この本はまるで違う。
確かに、多少のウンチクはあるんだけど、「銅像をめぐる旅」そのものと
その街の全体像というか風土・雰囲気みたいなものをつづった
紀行文になっていて面白い。
寝っころばって、センベイでもかじりながら読むようなカジュアルさだ。

この著者は、銅像を題材にして旅をし、その街全体を自分なりにつかんで
いこうとしているので、とても共感を覚える。
そういう旅のスタイルがオレも好きだ。
だから、「食」のことも随所に出てくる。
「内陸部の郷土料理にあまりウマイものはない」などと言い切って
しまうところにはア然とさせられるが、まあ許容範囲。
著者なりの、街が元気かどうかを見定める尺度は、若者がはしゃいだり、
バカやったり、たむろしていたりする姿があちこちに見れるかどうか
だそうだ。
その点、米沢はどうなんだろう…。
「旅はじめ」の「伊達政宗」の章でいきなりわが米沢も登場するが、
あんまり突っ込んだ記述がなくて、少しザンネン。
今度銅像ができたら、ぜひ来て、エッセイを書いてもらいたいもんだ。
街をどんな風に書かれるか、少し不安ではあるけれど。

この本で紹介されている銅像・街の中でオレが最も感銘を受けたのは
ヘボンさんだ。
そう、あのヘボン式ローマ字を作った人。
この人の足跡がひととおり紹介されているが、それを読んだだけでも
銅像を作って永く顕彰するに値する人だと感動した。
この人が来てなければ、日本の近代化はもう少し遅れていたのでは
ないかと思ってしまう。
今度、ヘボンさんの伝記でも探して読んでみよっと。

蛇足ながら…
オレにとっての銅像ベスト3をあげるとすれば、
(わが米沢にあるものは身贔屓になってしまうので除くと)
高知桂浜の坂本竜馬像
札幌羊が丘のクラーク像
函館の高田屋嘉兵衛像
ということになるかなって、つれづれに考えたりして…。
まだ見てないものの方が圧倒的に多いんだけど、今のところは
ということで。

降雪もここ数日小康状態になったようだ。
降雪が続いていた時は、早朝にうなりをあげてくる
ブルトーザーの音にハッと目を覚まし、寝ぼけ眼で
モゾモゾと雪払いの準備をする。
それが、数日なかったというだけで安眠できる、と
思いきや、今朝、ブルの音で目が覚めた。
ん?、雪降ってないから来るハズないのに…。
うへぇっ、幻聴かよ〜!

File No.212
『女たちの戦国』鈴木由紀子(幻冬舎新書 780円)
オススメ度★★★★☆

地元出身・地元在住の作家である鈴木由紀子サンが
1月30日に新刊を出した。
このところの彼女の健筆、地元住民の一人としてたいへん
嬉しく思っている。
ただ、題名がなあ〜。
というのは、つい先日読んだ『江』が、オレには少し読みづらくて
余り印象が良くなかったので、つい億劫になって。
でも、ぶっくぶくとしては、地元作家の著作は外せない、との
半ば義務感のようなもので読み始めたのだが…、あにはからんや、
登場人物の人生がまるで浮かび上がってくるようで興趣が尽きなかった。
かなりの史料を渉猟しているようだが、引用は殆ど現代語訳に
なっていて、オレみたいに古文が苦手な者には読みやすいこと
この上ない。
史料を原文引用する人が多いが、専門書ならいざ知らず、一般読者
が対象の新書ではいかがなものか、と前々から思っていた。
作家ならではの配慮であり、センスのひとつである。
とどのつまり、買ってもらって、読んでもらってなんぼのもの、
ということ。
それが作家と研究者・学者の違いのひとつかも知れない。
著者にとってみれば、
「本筋以外のところで褒められても嬉しくない」だろうが。
じゃあ、本筋のところで…。
著者の意図である、男たちが中心になって引き起こされる
政争・戦争に翻弄されながらも、その情況を甘受しながら、
したたかに、力強く生きる女性の姿、というものが、オレには
存分に伝わってきた。
とくに最終章の、茶々・初・江の三姉妹の人生はまさに波乱万丈
である。父や母を失い、姉と敵対関係になり、子供たちも数奇な
運命をたどることとなる。
その境遇はあまりにも過酷だが、その中を女性たちは力強く生きて
いるということに、改めて感動がこみ上げてくる。
著者自身の思いも迸っている。
「こうした地に足をつけた女性の発想と行動力は、いつの時代も
困難な状況を突破する行動力になると思われる。男のつくる歴史に
おし流されているように見えながら、その底流では、戦争のない
平和な社会をめざして、ともに連携した女たちの歴史があった」
少し胸が熱くなってくるような名文である。
作家の赤々と燃えるパトスが感じられる。
そして、歴史を見つめる熱き眼と、熱き心が、次の壮大な歴史
ドラマを産むよう期待しつつ…。


昨晩というか、今早朝というか、サッカーのアジアカップ、
日本はよくがんばったなあ。
アッパレ!
素人のオレから見ても、フィジカルの強さ、スピード、高さ
ともオーストラリアの方が上回っていて、わがニッポンは
押されっぱなし。ハラハラ、ヤキモキも極まって、ついに
延長を見ずして寝ちまった。
そしたら、そしたら、ナント、ナント!
勝負って見かけではわかんないよなあ。
だいぶ以前に、戦前の下馬評では劣勢だった法政大学が
ラグビーの大学選手権決勝を制した時、監督は、
「勝負はいつも五分五分です」という名文句をはいたことを
思い出した。
強者に臆することなく、弱者を侮ることなく、という
戒めでもある。
うむ〜、サッカーはそれほど好きじゃないけど、今回の
アジアカップは感動をもらった。

File No.211
『フィッシュストーリー』伊坂幸太郎(新潮文庫 514円)
オススメ度★★☆☆☆

前回の勢いに乗って、伊坂幸太郎の二冊目にチャレンジ。
この本は、表題作をはじめとした短編四作が収録されている。
どれどれと、読みだしたはいいが、うむむ…。
この本のオビには、確か「第一位」と大きく宣伝文句が
書いてあったハズだが。
それをもう一度確認すると、「今、おすすめの作家アンケート」
と小さい字で書いてあるではないか。
この本が第一位ということではないのね、つまり。
さもあらん。
なかなか味わい深い短編ばかりなのだが、オレが鈍なのか、
いまいちピンとこない。
とくに表題作の『フィッシュストーリー』は期待して読んだの
だが、「これで終わり?」ってなあっけない感じだった。
疑問が残るので、あとで誰か読んだ人と話をしてみたいもんだ。
『ポテチ』はなかなか面白かった。
登場人物やストーリー展開に独特の味がある。
最後にこれを読んで、少し救われた感じかなあ。

総じて言うと、泣かせたいのか、驚かせたいのか、考えさせたいのか、
オレには意図があまり伝わってこなかった。
著者にしてみれば「そんなんじゃねぇんだよ」ということかも
知れないが、やっぱ、時間とお金を使って読む限りは、何らかの
感動はもらいたいもんだよなあ。
前回読んだ『ゴールデンスランバー』はなかなか良かったんだけど、
あとはしばらくいいかなあ、今週もいろいろあるし…。



昨日、大雪の米沢を後にして久しぶりに東京に向かったオレ。
本やら資料やらを読んで余り車窓から外を眺めることもなく、
列車は東京駅へ。
な、なんじゃあ、この天気、暖かさは。
ぶ厚いコートに手袋なんてここでは無用の長物!?
その上、すんでのところで「長靴」のまま来るところだったし…。
2時間ちょっとぐらいの時間距離でこの落差はどうよ。
街ではサイクラーが風切って走ってるし。
う、うらやましい〜。
でも、永く厳しい冬があるからこそ、春の喜びはひとしおなんだ。
そだなごどもわがんねべ、都会衆のおまえったには。
強がりじゃねぇぞお。

File No.210
『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎(新潮文庫 857円)
オススメ度★★★☆☆

「ゴールデンスランバー」と聞くと、ビートルズの?とピンとくる
人は嬉しいねえ。
そう、ビートルズの数あるアルバムの中でも最も人気の高い
「アビー・ロード」B面の終りの方に収録されているポールの曲。
このアルバムには、そのほかにも「サムシング」や「ヒア・カムズ・ザ・
サン」等々名曲がたくさん収録されていて、4人がアビーロードを
渡っているジャケットも超有名だよなあ。
高校時代、友達ん家でレコード盤が擦り切れるまで聞いて、輸入盤の
ものを手に入れた時は一晩中聴いていたような記憶がある。
今も当然、CD盤を持っていて、たまに聴くと懐かしさにこみあげて
くるものがある。
こんな気持がわかるのは、わが社では「かちょー」と「Y大兄」ぐらい
だろうなあ…。

そんな曲名をタイトルにした小説って、と思いながら読んでみると、
「ゴールデンスランバー」に主人公たちの想いが重なっていて
実にいい。
出だしの
「Once there was a way to get back homeward」
(昔は故郷へ続く道があった…)
に主人公たちの学生時代の想い、いや、学生時代への想いが重なる。
みんな、それぞれにそんな想いを抱いてこの曲を聴いている
のかも知れない。
読んでいて、思わずオレも口ずさんでしまって、隣の人から
怪訝な目で見られてしまった。

運送会社の配送係だった主人公・青柳雅春が首相暗殺事件の犯人に
仕立てられてしまう、というのがこの物語の設定。
舞台は仙台。
読みどころは、追手から逃げる主人公とその周りの人々の言動や
心理の動き、そしてア然とするような結末。
ちょっと長いけど、なかなか読みごたえがある。
構成が『1Q84』とちょっと似てなくもないけど…。

この著者の本を前に読もうとしたことがあったが、普通は2〜3
ページ読むと書き手のリズムみたいなものに入っていけるんだけど、
なかなかシックリこなくて、途中で止めてしまった。
つまり、リズムや感覚が合わないのだろう、と思っていた。
今回は、強い勧めもあって、あまり乗り気でないままに読み始め
たが、やっぱ最初のころはあんまりスムーズじゃなかった。
が、中盤ぐらいなるとようやく慣れてきて、物語にズボっと
入ってしまった。
この調子でもう一冊読んでみっか。

風邪でぼうっとした頭のまま、朝刊を眺めていたら、
眠気も覚めるチョーうれしいニュースが目に飛び込んできた。
米沢出身の大投手、故皆川睦雄氏がついに野球殿堂入りした。
同じ米沢の人間としてこんなにうれしいことはない。
今から10年ほど前、氏の近くでしばしそのオーラを浴びた
時のことを思い出した。
その柔和な物腰と謙虚な人柄にふれ、いっぺんで氏の大ファン
になってしまった。
しかし、氏はその数年後に鬼籍に入ってしまった。
かえすがえすも残念でならない。
でも、雪国から来たサブマリン、皆川睦雄は永遠に不滅だ!
ガンバレ米沢球児たち、先輩に続けえ!

File No.209
『40代からの節制は寿命を縮める』和田秀樹(朝日新書 740円)
オススメ度★★★☆☆

これは完全に「オビ買い」。
だって、オビに大きく「ちょいデブが一番長生き」って書いて
るんだもん。これは読むっきゃないって。
しかも、著者が前に読んだ『テレビの大罪』の和田秀樹とあれば
期待は膨らむ。
読んでみると、これはこれは…。
期待を裏切らないどころか、ちょいデブには光明ともいうべき内容。

まず、前にも書いたかも知れないが、BMI25〜30のいわゆる
太り気味の人が一番長生きという統計上の事実。
BMIを復習すると、体重(kg)を身長(m)の二乗で割ったもの。
オレの場合は、◯◯kg÷(1.71☓1.71)となり、
その答えは、まさに25〜30にジャストイン。
さらに、コレステロールが高いと、「血管の弾性をよくする」とか
「がんになりにくい」とか「長生き」という疫学データがあるあそうだ。
もちろん、高すぎれば脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まるのだが。

この本は、無理な節制(我慢)や非科学的なダイエットは
かえってがんのリスクを高め、身体の老化を促しかねない、という
ことを、いろいろなデータや精神科医としての経験や考えなどから
論じている。

EQ(こころの知能指数)は歳を経るごとに高くなっていくという
のは間違いだということも。
歳をとればとるほど、自分の考えや好みを変えられない。
これはみんな覚えがあることかも知れない。
この人は好き、この人はキライ。あの人はこういう人、という
固定観念に縛られ、いわゆる「バカの壁」を厚く作ってしまう。
それこそが、脳の老化だと著者は警鐘を鳴らしている。
言動に表れる老化とは
1.欲望の低下
2.創造性の低下
3.思考の柔軟性の低下
4.イライラしやすい
5.自発性の低下
6.感情失禁
の6点だそうだ。
まあ、程度はあれど、いずれも当てはまるような感じで、オレも
少しヤバイかも。
認知症の初期に低下するのは前頭葉の機能。
その前頭葉を刺激するのがギャンブルやバイアグラ(≒恋愛)。
まあ、ギャンブルはたまに麻雀や競馬やってるからなあ。
もう少し、アツくやってみようかなあ。
バイアグラ?、それはちょっと…。

まあ、BMIが25以上の人は、この本をぜひ読むべきだろう。
18.5未満の人は読まない方がいいかも(自信なくすかもよ)。




ついに風邪を引いた。
夏場に自転車で鍛えていたので、少しばかり自信みたいのが
あったのだが、ついに踏ん張れなかった。
数日前に、少しノドがイガイガするので、イソジンで何回も
うがいしたり、ビタミンCを意識して摂ったり、水際で懸命に
食い止めようとしたのだが…。
そうそう、今年こそ早朝乾布摩擦をして免疫力を高めようと
密かにおもってもいたハズ。
でも、実際に零下の朝を迎えると、とてもとても。
まあ、せめて風邪ひきは2回ぐらいにとどめるのが関の山か。
(ということは、すでにもう1回引くことを覚悟してんのか、オレ?)

File No.208
『ルームメイト』今邑 彩(中公文庫 781円)
オススメ度★★★★☆

前回の『東京島』の前に読みかけていたのがこの本。
確か、誰かの書評を読んで買ったような記憶がある。
「まんまと騙されました」とオビに誰かの感想が載っていたが、
まさにそんな感じ。
今までにないような結末のミステリーだ。

この物語は、地方から上京してきた大学生の萩尾春海が、ひょんな
ことから、同じ年頃の西村麗子とルームメイトになることから
始まる。
西村麗子が、ある日ナゾの失踪をとげることからミステリーが
展開し始める。
英語学校の外人校長を皮切りに、次々と殺人事件が起きる。
ナゾがナゾを呼びながら物語は展開していくのだが、だんだん
犯人像に焦点が合っていく。
それもそのハズ、登場人物がさほど多くないので、だいたい
予想がついてくる。
はは〜ん、こいつなのか…と思いきや、ある記録テープから筋書きが
ガラリと変わってしまう。
こんなのアリなの?

ミステリーだから、あらすじは書けないが、この物語のテーマの
ヒントは、ダニエル・キースのベストセラー『24人のビリーミリガン』。
読んだ人はこれだけでピンとくるだろう。
オレも読んだけど、ほぼ実話だけに少し気持ち悪かった憶えがある。
一方、こちらのミステリーは創作ものだけに、もうひとつ仕掛けが
重なっている。

そして、最後はハッピーエンドに終わる…、と思いきや、
「文庫版はここまでにしたが、原作は本当はバッドエンド。それを
あえて読みたい方はどうぞ」みたいな著者の断り書きがあって、
まるで付録のようにモノローグ4がある。
こんなこと言われたら、みんな読んじゃうよなあ。
オレも迷わず読み進めて。
そしたら…
こ、こんなことって!

ひさびさに、ミステリー読んで時間を忘れるような感覚に浸りたい
アナタ、とくに女性の方にオススメだ。



久しぶりに映画(DVD)を借りてきた。
前から観たかった「アバター」。
ごぞんじ、一昨年公開されたキャメローンの3D映画。
スクリーンで観なきゃ魅力半減じゃん、と言うなかれ。
最初はグロっぽいかなと思ったけど、そのめくるめく
世界の展開にオドロキの連続。
あっけにとられて時間がたつのも忘れてしまった。
なんなんだ、このすごい想像力は。

File No.207
『東京島』桐野夏生(新潮文庫 552円)
オススメ度★★★☆☆

「年に1回ぐらいアッシーくんしてよっ!」
という家人の強いご要望に敗け、買い物にシブシブ付き合ったオレ。
実は魂胆があって。
家人が買い物に狂奔している時間はオレは自由。
つまり、コーヒー飲みながら、タバコ吸いながら、ゆっくり本を
読める至福の時間なのだ。
待ち合わせ時間を決めて、小走りに売り場に走る家人の背中を
ニヤっと見送り、では、さっそく…、と思いきや、本がない。
出掛けに忘れてきたんだ!
オーマイガッ!
ん〜、かくなる上は近くの本屋で新たに買ってか、と思い手にとったのが
この本。
ファストフード店に入って読みだすと、これはなかなか面白い。

物語の舞台は「トウキョウ」と呼ばれている無人島。
ある中年夫婦のクルーザーが難破して、この島に漂着し、
続いて日本人の若者たち、中国人たちと島人が増える中で
繰り広げられるドラマ。
いちばんの問題は、この島人たちの中で、女性がたった一人ということ。
その「清子」は、中年・肥満・十人並みの容姿と、ごくごく平凡な
女性なのだが、男たちに囲まれて生活していくうちに激変していく。
平凡⇔非凡、日常⇔非日常という対立項は、いとも簡単に置き換えられ
ていくもの、というのが著者のテーマになっているようだ。
「オンナは怖いのよお」とでも言いたいのだろうか。

物語は劇的な展開を経て、劇的な結末を迎える。
「アバター」の想像力もスゴいが、こちらもジャンルや質は違えど
スゴい想像力と展開力だ。
そう言えば、著者の代表作とも言うべき『OUT』や『柔らかな頬』
なんかも、想像力そのものが勝手に生きている、ような感じがした。

ふと気がつくと、両手に抱えきれないほどの荷物を持った家人が
ニコニコと「お待たせ〜」ってがあ。
いきなり現実に引き戻されてガックシ。
やっぱし、「平凡」な男は「日常」の繰り返しなのかなあ。



「元気な中高年」
こう書くと、いかにも「きみまろ」風だが、さにあらず。
雪かきのこと。
ここ数日、米沢らしい本格的な降雪の日々が続いた。
そして今日は、晴れ間が覗く、絶好の雪かき日和。
市内のあちこちで作業している人を見かけるが、
圧倒的に中高年が多い。
若者もいるんだろうが、元気に雪かきに勤しんでいる
中高年の方々が目に付く。
高齢化社会と言ってしまえばそれまでだが、米沢の
中高年は元気だ。
というより、元気を出さなければ厳しい冬を乗り切ること
なんかできないんだなあ。
それにくらべオレは…。
幸い、まだ風邪は引いていないけど…。

File No.206
『デフレの正体』藻谷浩介(角川Oneテーマ21 724円)
オススメ度★★★★☆

年末年始にぜひ読みたかった本のひとつがコレ。
だいぶ以前に購入して、少しづつ読んではいたのだが、
今頃になってようやく読み終えた。
著者も述べているように、この本は、産業経済に関わる仕事を
している人にとっては、「必読書」に値するかもしれない。
著者は、日本政策投資銀行の社員でありながら、年間400回もの
講演をしている御仁でもある。
オレも以前、講演を拝聴したことがある。
ナルホド、分かりやすいし、説得力がある。
この本も、講演の趣旨に基づいて書いているので、忘れてしまった
ことの復習をしているような感じだ。

前半は、「100年に1度の不況」と言われている現在の
状況を、統計上から解き明かす。
その主因は、生産年齢人口の減少に伴う、労働力の低下と
消費の減退だと言う。
生産年齢人口とは、15歳から65歳までの年齢層を指す。
15歳からが生産年齢というのは多少異論のあるところだが、
まあ統計上そうなっているのだから仕方がない。
いわゆる、社会の主力として働いて、その給料で商品やサービス
を購入するという、活力の源になる年齢層だ。
この層が、団塊の世代の一斉退職期を迎えて大幅に減少し、
経済の低迷を招いているというもの。
ナルホド、ナルホド、そういうことか。
でも、高齢者だって金持ちの人はいっぱいいるのじゃないだろうか。
それについて著者は、高齢者の個人資産は確かに多いが、それは
あまり消費に向かない、と述べている。
そのお金の向かう先は、晩年の医療・介護などの準備金、いわゆる
ストックオプションになってしまっていると。
確かにそうだなあ。
現在の不況が、単なる景気サイクルの話ではなく、今後もずっと
続くものだということか。
じゃあ、打つ手なしなのか。

著者は、後半に、おおきく3つの将来提言をしている。
ひとつは、高齢富裕層から若い世代への所得移転の促進。
ふたつめは、女性就労の促進と女性経営者の増加。
みっつめは、訪日外国人観光客・短期定住者の増加。
とくに3点目は注目に値する。
観光産業がいかに高付加価値であるか、改めて認識し直した。

これから、来年度の経営計画や行動計画、年次計画などを
考える際には、まずこれを読んでからかかると、必要とされる
視点が、より明確なものになるかも知れない。

オレもそんなに経済書を読んでるわけじゃないので大きな
ことは言えないが、まあ、この本ぐらいは読んでおかないと
始まらないんじゃないかなあ。



今年もいろんな方々から年賀状をいただいた。
それぞれ趣向もさまざまで読むのも楽しい。
凝った写真を載せたもの、近況報告、俳句・短歌、
今年の金言・格言、ジョーク、エトセトラ…。
オレ自身も、3〜4パターンを作っている。
手書きしなくなってから、いくらかでも誠意が伝わる
ようにと工夫しているのだが、図らずも、そのうちの1パターンが
爆笑・嘲笑・失笑のタネになってしまって…。
続々と反響メールをもらって、まあまあ嬉しいのだが、
返事が少々面倒くさくなるほど。
そもそも、ウケねらいで作ったワケではなく、大真面目
なんだけど、今さら言えない…。

File No.205
『明治を支えた「賊軍」の男たち』星 亮一(講談社+α新書 838円)
オススメ度★★★☆☆

この本を買ったそもそもの動機は、正月に長編を読んでたぶん
疲れるから、その合間に気分転換としてだった。
新書版に10人の男たちの足跡が載っているので、他のものと
並行して読むにはもってこいだと思った。
が結局、長編は次の機会ということになったので、この本も
最初からまともに読んだ。
なかなか面白い。
タイトル中の「賊軍」というのは、戊辰戦争の時に「官軍」の
敵にまわった旧幕府や奥羽越列藩同盟などを指す。
禁裏内で鉄砲を放った長州が「官軍」というのも釈然としない
ものがあるが、奥羽越の主だった藩が「賊軍」として討伐の
対象になってしまったことは史実である。
攻められ、篭絡されたり、蹂躙されたりした歴史を背負ってる
からこそ、こういう男たちの生きざまにシンパシーを感じるのかも
知れない。
ここで取り上げられている10人全員に、ちゃんとした肖像写真
が載せられているのも感心する。
改めて、それぞれの面構えに「男」を感じる。
中でも、南部藩出身で総理大臣になった原敬の評伝は面白い。
もっと知りたくなった。

こういう男たちを尊崇する気持ちも大事なのではないか。
徒に大声で称揚したり、実像以上にあげつらったり、何かに
つけこじつけたりする必要は毛頭ないが。

そういう意味で、「かちょー」が今年の目標にあげた
「リスペクト」は同感する。
相手の存在を認め、そのプライドに配慮することが、
現代に生きる「男」に最も必要なことなのではないかと思う。




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