ぶっくぶくの部屋

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この冬は、毎日のような雪かき重労働と夜の断・炭水化物、
そして某有名サプリの摂取によって、体重が落ち、体脂肪・血中脂肪
ともに大幅改善、ついに「メタボ非該当」となり、小躍りして喜んだ。
のも束の間、雪かきから自転車への本格移行が大幅に遅れ、
あれよあれよと言う間にもとの黙阿弥。
ちょっと結果が出ると、自信過剰になり、有頂天になり、大油断してしまう…、
こんな性格死ぬまで直らへん!

File No.347
『脊梁山脈』乙川優三郎(新潮社 1700円)
オススメ度★★★★★

ここ1、2年で読んだ本の中での最高評価、もちろん久々の五つ★!
こんな物語を待っていた。
ケチなオレにしちゃめずらしく何のためらいもなく単行本を購入。
何か予感があったのかもしれない。
毎日大事に一章ずつ読んで、ちょうど一週間で読了。
ロードショーと同じぐらいの値段だが、凡百の映画より何倍も面白い。
面白い、というよりは、しみじみと人生に感じ入る、という言い方の方が
適切かも知れない。

主人公の矢田部信幸は、太平洋戦争で九死に一生を得て本土に復員。
国元のいわきに帰る復員列車の中での出会いがその後の人生を大きく変える。
伯父の莫大な遺産を受け継いだ信幸は、近江を発祥として全国に流浪して
いった木地師を追い求めることとなる。
木地師とは、山中深くに棲み、木を切り、その木を轆轤でひきながら質の良い
生活用品を作り、それを売ることで生計を立てていく、太古の昔から
いる特殊な移動職業集団、とも言うべきか。
鳴子など、東北各地に伝承されているこけしは、その木地師の流れを
汲むもの。
木地師たちは、永い歳月の間、山から山へと移動し、ついには奥羽の山まで
やってきた。そして、奥羽山脈の中ごろまで辿ると、その後の足跡は
なぜかぷっつりと途絶えてしまう。
信幸の踏査は幾山河にも及び、その調査は10年にも及ぶ。
戦争で失ってしまった自身のアイデンティティを必死で探し求めるような
鬼気迫る旅でもあった。
その推論は、古代史の大胆な仮説にも及び、興趣を一層深いものしている。

そして、その「旅」には、二人の対照的な女が絡んで行く。
その二人の女とも境界を越えられない。
脊梁山脈とはもちろん奥羽山脈のことを指しているのだが、心の境界
つまり脊梁を越えられない男の心の葛藤をも象徴しているような気がする。

みんながみんな面白いと感じるような現代のベストセラー型の物語では
ないが、オレ的にはかなり心の栄養になった本だ。

2013.06.24:ycci:count(806):[メモ/コンテンツ]
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