ぶっくぶくの部屋
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やっぱり落語は面白い!
酔っぱらって本も読めないような夜は落語を聴くに限る。
しばらく聴いていなかったのだが、ここ最近また静かに
ハマりだした。
昨晩は志ん朝の「品川心中」に聴き入っていたのだが、
いつの間にか寝てしまって、最後にどうなったかわからなかった。
今晩また最初から聴き直そうと思ってる。
先日、談志の「紺屋高尾」を悦に入って聴いていたら、聴き耳を
たてていたらしい家人が、
「この話、この間歌丸が話してたなあ〜」
そうか、先日米沢に歌丸が来た時、直前になってオレの券を
とっかばいして行ぎやがったんだっけ。
「何年も働いたお金で遊郭で遊ぶ話でしょう。男って今も
昔もバカだずねえ」
おいおい、そういう解釈かい!?
人情の機微がわからん奴は落語なんて聴くなよ、もうっ!
File No.306
『おしまいの噺』美濃部美津子(アスペクト文庫 724円)
オススメ度★★★★☆
落語の前振りをしたのはこういうワケ。
この本は、名人と謳われた五代目・古今亭志ん生の長女が書いた
父・志ん生とその家族の物語である。
志ん生の破天荒な言動や、常軌を逸した貧乏生活については、
志ん生自身が書いた『なめくじ艦隊』や『びんぼう自慢』などで
読んだ。
それはそれは、もうびっくりするぐらいの貧乏ぶり。
落語『文七元結』の中で、遊郭に逃げ込んだ娘をもらい受けにいく
親父が、着るものがなくてカミさんの着物を引っ剥がして着て行く
というシーンがあるが、まさにそれを地で行くような実話だ。
若き日の志ん生は、カミさんが内職で預かってきた着物さえも
質に入れて酒代にしたというから凄まじい。
しかし、もっとスゴいのは、カミさんも娘(著者)も、決して
志ん生を恨んだり憎んだりしていない、ということだ。
「まったく困った人だ」と言いながらも、心の中では、志ん生の
稚気や才能を愛していたことが窺われる。
だいたいこういうオヤジを持つと、子供はグレるか家を離れるか、
憎しみを募らせて手を挙げてしまうか、というふうになるのかも
知れないが、志ん生一家はさにあらず。
志ん生を輪の中心にした優しい愛で包まれている。
だからこそ、志ん生は稀代の名人落語家になり、その子馬生(長男)、
志ん朝(次男)も父のDNAをしっかり受け継いだ名人となった
のだ、と言えるのではないだろうか。
ダンナに男を上げさせたいなら、女房はゴチャゴチャ小言いわないで、
大きな慈愛と信頼感を寄せてやることだ、ということだよねえ。
まあ、オレの場合は何の才能も甲斐性もないから、甘くされると
いい気になって堕落していくばかりだろうけど…。
残念なのは、多くのファンからその才能を愛された志ん朝が円熟期に
差しかかった頃に亡くなってしまったこと。
志ん生も馬生も志ん朝も、もはやCDやDVDでしか聴けなくなって
しまった。
落語はやっぱ噺家の熱が伝わってくる「生」が一番いいなあ。
2012.03.31:
ycci
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