ぶっくぶくの部屋

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今年のプロ野球日本シリーズは最終の第七戦までもつれこむ
好ゲームだった。ワンサイドになったゲームはひとつもなく、
ロースコアで最終回まで緊張感が持続していた。
誰かが言っていた「玄人好みの展開だった」と。
要するに、素人のオレには面白くなかった。
ホークスもドラゴンズも嫌いなチームじゃないんだけど、
何だか手堅過ぎるし、意外性もないし、血沸き肉躍るような
場面が殆どなかったような気がする。
(すべてを観たわけじゃないけど)
前回も書いたけど、ハデなガッツポーズや雄たけびを観たい
わけじゃなく、闘志と華麗さ、フィジカルのぶつかり合い、
戦術のカケ引き、そしてそこから生まれる感動のドラマが
観たいのである。
150km以上の球速を持ってるピッチャーなら、妙な小細工
なんかせず、堂々と直球で勝負して欲しい。
なんとなれば、空を切るフルスイングにも、剛球をはね返す
打棒にも、それなりの輝きが生まれるのではないだろうか。
それを、必要以上に球を長く持ってバッターのタイミングを
狂わそうなどとするから、もうイライラして観たくなくなって
しまう。
日本野球よ、もっと潔く、エキサイティングであれ!
熱が冷めかかっているプロ野球ファンの繰り言かも知らんが…。

File No.281
『ワシントンハイツ −GHQが東京に刻んだ戦後−』
秋尾沙戸子(新潮文庫 705円)
オススメ度★★★☆☆

「ワシントンハイツ」って何だっけ?
読む前までは、何だか聞いたことがあっておぼろげにわかっている
つもりになっていたが、読んでみてその正体がよくわかった。
それは一言で言うと「進駐軍家族住宅」。
太平洋戦争が終戦になって、日本には米軍(正確には連合国軍)が
大量に進駐し、軍事国家を徹底的に解体し、民主国家を人為的に
つくった。
その進駐軍部隊、通称GHQの将校や隊員たちとその家族が住まう
住宅約八百数十戸が旧代々木練兵場の広大な敷地を強制的に接収して、
日本政府のお金で作らされたのである。
因みに、ワシントンハイツが形成された旧代々木練兵場とは、現在の
代々木公園や代々木体育館、NHKのあたり一帯。
この本は、この「ワシントンハイツ」をひとつの象徴として、戦中・
終戦・戦後にわたるアメリカの日本に対する占領政策を検証する
という狙いで書かれている。
それは安易なGHQ批判にとどまらず、きわめて冷静な眼で
パックス・アメリカーナの功罪を描き出している好著でもある。
著者の主旨は次の一文に集約されている。
「日米蜜月の果てに、アメリカに比肩する大国となりたがる空気が
濃厚である。だが、私たちは『複眼的』に見る力を発揮すべきだと
痛感する。空から焼夷弾が降ってきた経験も、被曝した経験も、
いま一度心に留めてみたい。その上で、したたかに知恵を絞れば、
日本にしかない『国の形』を探し出せると信じている」

戦記や戦史などをいろいろ読んだことがあるが、この本を読むまで
知らないことがたくさんあった。
例えば、B29戦略爆撃機による焼夷弾空爆で東京をはじめとした
各都市は火の海と化し、夥しい死傷者が出た。
非戦闘員である民間人をも巻き込んだ無差別大量殺戮。
米陸軍航空軍を指揮し、日本への大空襲を実現させた張本人が
カーティス・ルメイ。
なんと、このルメイに日本政府は昭和39年、勲一等旭日大綬章
という最高級の勲章を贈っているのである。
何と言うことだろう。
同種のことは、建築家アントニン・レーモンドにもあった。
戦前日本にいたレーモンドはアメリカに帰って、焼夷弾による
爆撃効果実験のために日本家屋を設計建設していた。
そして、終戦後にまたも日本にやってきて建築家活動をしている。
ルメイと同じ昭和39年に勲三等旭日中授章を贈られている。
一体こんなこと誰が決めたのだろうか。
反対する人間はいなかったのか。
著者も大いなる反発を感じていることが行間からうかがわれる。

かくしてワシントンハイツは昭和39年の東京オリンピックの
選手村として供された後、接収解除となり、その姿を完全に
消した。
オレが生まれた頃はもうすっかり戦争の余燼さえない時代だと
思っていたが、そうではなかった。
現に今でも六本木に「ハーディ・バラックス」という日本の
中のアメリカがまだある。
戦後65年になるが、まだまだ余燼は払拭されていない、という
ことをこの本は教えてくれている。


2011.11.27:ycci:count(757):[メモ/コンテンツ]
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