ぶっくぶくの部屋

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今日は久々に晴れた。
となると、延び延びになっていた「雪囲い」をやらざるを
得ないか、と少々ユーウツな朝の目覚めになった。
午後からようやくおっとり刀で作業にかかったオレ。
杭を打ち込んで、庭木をナワでグルグル巻きにして、
はい一丁あがり。
そもそも狭い庭(畑?)だし、庭木と言ってもほんの
2、3本だから、作業は30分足らずで終了。
(本当なら、もっと丁寧にすべきだろうし、冬を迎えるに
あたり家周りのことも、もっともっとすることがあるハズ
なのだが…)
近所の立派な雪囲いと比べると自己嫌悪に陥ってしまうから、
そそくさと家に引っ込んだ。
うむ〜、衣食住に頓着しないのはもう一生直らないなあ〜。
最近は、自分のズグダレさに愛想を尽かすのを通り越して、
自分自身で容認しはじめているようなフシがあるので、
かえって始末が悪い…。

File No.279
『一命』滝口康彦(講談社文庫 476円)
オススメ度★★★★☆

六編を集めた短編集だが、久々に面白い時代小説だった。
理不尽な世間や掟を前に、哀しいまでに武士道を貫き通し、
一矢をむくいるという趣向の物語。
肉体や日常生活よりも、サムライとしての自らの精神美学を
最優先する生き方が潔くてカッコイイ。
日本人にはこういうDNAが宿っているのである。
例えば「相撲」もそうだ。
勝者が土俵でガッツポーズするなんてことは有り得ない。
敗者に対して手を差しのばす。
お互いがお互いを尊重することから始まり(だから礼にはじまり
礼に終わる)、勝負は時の運。勝者は勝利の喜びよりも、
敗者へのいたわりを優先させる。
極端な喜怒哀楽はあらわさない。
こうした「抑制の美学」がオレたちの琴線にふれるのである。
かつては野球もそうだったが、今ではプロまでがガッツポーズや
雄たけびなどのオーバーアクションばかりで辟易させられる。

こういう世の中になったとは言え、心の奥底にサムライの血が
宿っているからこそ、この『一命』に感動を覚えるのかも知れない。
とくに冒頭の『異聞浪人記』は秀作だ。
切ないまでの男の矜持、哀しい結末、そしてその想いを一命を賭けて
晴らす意地…。
この武士道の物語は、二度にわたって映画化され、いずれもカンヌ
国際映画祭に出品された。
世界も一目置く、日本の精神美学である。
オレ自身は飽食無摂生の徒であるが、こういうストイックなものは
メッチャ好き!


File No.280
『上杉かぶき衆』火坂雅志(実業之日本社文庫 648円)
オススメ度★★★☆☆

『天地人』で一躍有名になった火坂雅志氏だが、考えてみれば、
そのほかの作品では『沢彦』ぐらいしか読んだことがなかった。
そこで、この本を手にとってみたのだが、『天地人』では
脇役的存在だった面々の物語を綴った掌編で、なかなか興趣が
尽きない。
著者が「上杉かぶき衆」にとりあげたのは、
前田慶次郎
大国実頼
上杉三郎景虎
上杉景勝の妻
上泉主水泰綱
本多政重
水原親憲
の7人。もちろんいずれも実在した人物であり、それぞれの
物語も脚色はあるものの史実に基づいている。
そして、いずれも上杉謙信・景勝・直江兼続のメインストリーム
に深くまつわる人物たちである。
しかし、この上杉メインストリームとも言うべき「将」たちを
主体に描いているわけではなく、それぞれの立場での憤悶や哀歓
などを描いているところがサスガである。
それは、「上泉主水泰綱」の章でも如実に表れている。
物語では、兼続との誤解が完全には解けぬまま、長谷堂からの
撤退戦で「捨て構え」という壮絶な戦死を遂げる。
まさに自らの一命をもって上杉を救う一助となった。

これを読んでツラツラ思うに、「かぶき衆」とは、何か
「そんぴん者」につながるような気がしてきた。
米沢の人は知ってるように、それはそもそも人を揶揄する言葉
ではなく、ブレない生き方を貫き通す者に対する畏怖の形容
だったのではないだろうか…。
少し穿ち過ぎかな。


2011.11.26:ycci:count(773):[メモ/コンテンツ]
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