ぶっくぶくの部屋

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旧友が訪ねてきた。
もちろん仕事の用事で来たのだが、話は自然に
昔のことに及んでしまう。
ある時期、同じ武道で寝食を共にした間柄なので、
お互いに性格も頭の出来も恥ずかしいことも知り尽くして
いるから、懐かしいというより、まるで裸で姿見を見るようで
ちょっと気恥ずかしさがよぎる。
よくもあんな無茶したもんだ、との冷や汗ものの思い出にも
苛まされる。(出来れば思い出したくない!)
「友遠方より来たりて、亦楽しからずや」というよりは、
「友遠方より来たりて、互いに恥ずかしからずや」かも。
そういうことって、身に覚えあんべ?

File No.262
『経営はロマンだ!』小倉昌男(日経ビジネス人文庫 600円)
オススメ度★★★★☆

前にも書いたかも知れないが、成功した経営者の自伝や評伝という
類の本をオレは余り好まない。
確かに立志伝中の素晴らしい人たちなのだが、後付け・きれいごと・
自画自賛・結果論というイメージを拭いきれない。
まあ、生来の「そんぴん」「天の邪鬼」精神のなせる偏見であろう。
そんなことグチャグチャ言っとらんで、読まなきゃいいだけだろう!?
そのとおり!
でも、オレにも例外がひとつふたつあって。
そのひとつがこの小倉昌男。
ご存じ、クロネコヤマトの宅急便でお馴染のヤマト運輸の二代目社長・
会長にしてヤマト福祉財団の理事長。
会ったことも見たことも声をきいたこともないが、最も尊敬に値する
経営者の一人として今でも崇めている。
なぜか?
ひとつは、「宅急便」という一大イノベーションを成し遂げた男で
あること。(経営者は仕事の結果が第一)
ふたつめは、筋を通す男であること。それがために、お上(行政)
を相手取り、大ゲンカをふっかけたりもした。筋を通すためには
軋轢やケンカなど屁とも思わない剛直さがスバラシイ。
そしてみっつめが、慈愛の心。
小倉昌男は後年、保有していたヤマト運輸の株の殆どをヤマト福祉
財団に投じた。金を出したばかりでなく、自分自身が培ってきた経営
ノウハウを障害者のノーマライゼーションのために惜しみなく注ぎ
込んだのだ。
つまり、自分が会社経営に成功して得た財と、経営者としての経験・
知識・ネットワークなどのソフトをすべて社会のために還元して
のである。
こんな生き方、誰にもマネできない。

なんだ、これだって結果良しの成功譚じゃないか、と思われるかも
知れない。でもオレにはそうばかりには思えないものがある。
うまく表現できないが、顔をみれば何となくわかるような気がする。
筋を通す剛直さと深い慈愛、これが小倉昌男の顔(写真)には
にじみ出ているようにオレには感じられる。
ある程度の歳を重ねると、性格や気持ち、心根が顔や全体の雰囲気・
匂い(加齢臭じゃない)などに出る、と思う。
だから、心の底からまっとうで、深い「愛」を根付かせていないと
「いい顔」にはなれない。
オレはもう遅きに失しているかなあ。心根はやましくないと自分では
思っているんだけど、「愛」が足りないんかなあ。

で、この本は、日経の人気連載シリーズ「私の履歴書」を加筆編集
したもので、小倉昌男の生い立ちから晩年までの足跡をみずから
語っている。
不治の病からの生還や恋愛、「宅急便」創成の頃の苦労、顧客である
三越との決別、旧運輸省や旧郵政省との闘い、組合との闘いと協調、
福祉への道などが等身大で綴られていて興味が尽きない。

ぜひとも話を聞いてみたい、できれば謦咳に接したいと思っていたのだが、
すでに鬼籍に入られてしまっている。
せめて本からでも、啓発を受けたいものだ。
「やれば分かる。やらなければ分からない。失敗したらやり直せばいい」
噛みしめたい言葉だ。

2011.09.29:ycci:count(693):[メモ/コンテンツ]
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