ぶっくぶくの部屋

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今回は前振り話題をふたつ。
ひとつは、我が家を見捨てたか、と思ったツバメが戻ってきたこと。
先週のとある日の深夜、家に帰還して何気に部屋の窓の上をみたら、
なんと、ツバメが二羽仲良く並んで寝てるではないか!
酔眼の見誤りかと思い、もう一度眼をこすってよく見てみると、
確かにいる!
よくぞ戻ってきてくれたツバメくん、もうどこにも行くなよ。
少しウキウキした気分で数日過ごしているうちに、
ちょっと待てよ、なんで営巣しないんだ?
なんで、なんでと思っているうちに、ある日突然一羽になっちまった。
どうしたんだよお、連れ合いは?別れっちまったのかい?
なんて思ってると、今朝なんか二羽一緒に軒先から飛び立って行ったりして、
まったくどうなってんだか…。
でも、吉兆には違いない!

もうひとつの話題は「夕日」。
今日は、山奥の秘湯で宴会だった。
西陽を背に受けて飲んでたせいか、何だか暑くて汗が止まらない。
やがて暮れなずんできて、ふと後ろを振り返ってみたら、
おおっ!
紅色の夕日がまさに山間に沈みゆく絶景だった。
しばし宴会そっちのけで見とれてしまった。
こんな時に一杯気分で露天風呂に浸かりながらぼうっと夕日見てたら
最高だろうなあ、なんて不謹慎なことを考えつつ…

File No.237
『悲しみの歌』遠藤周作(新潮文庫 590円)
オススメ度★★★★☆

人間の心に貼り付いているような深い悲しみを正視し続けるような
小説である。
悔やみきれない過去を持つ開業医勝呂が、正義感を振りかざす
若き新聞記者折戸が追いつめる。
タテマエとホンネが全く違うエセ文化人の大学教授。
今わの際の独居老人とその孫娘。
ぐうたらで無知な学生。
そんな、いろんな人間模様が新宿で繰り広げられる。
その底流にあるのは、人間の深い悲しみと救い。
勝呂は言う。
「…人間なんて不幸せになるために、この世に生れてきたもんだ…
人間が他人を助けるって、そう簡単にできるもんじゃない」
というような調子で、救い難いような悲しみが深まっていくのだが、
そこに得体の知れないヘンな外人ガストンが絡んでくる。
無垢なまでの純粋さ、無類のお人好し、そして人を愛することしか
知らない…、そう、彼は、現代の新宿に降臨してきたイエス・キリスト
なんだろう、きっと。
そして、深い悲しみから救うのは、人への関心・思いやりと無条件の
愛であることを示唆しているのである。
人が人を裁けるハズがない。「赦す」ということが大事なんだなあ。
最近は、人を赦せない人が多くなっているような気がする。
オレだって、「これは赦せん!」というような激情にかられてしまう
ことがままある。
でも、ぐっと溜めて「赦す」という境地に立たないと、人の「生」を
認めることにならない、ということなのだろう。

確か遠藤周作の他の著作に同じようなことが書いてあったなあと
思い出しつつ探してみたら、あった、あった。
彼のエッセイの中で、大学時代の友人やお世話になった先輩の自殺に
遭遇する場面があって、遠藤青年は、
「人間についていい気になるなよ」と自戒し始めることによって、
文学への関心が深まって行った、というもの。
友人や先輩といった身近な人の悩みや悲しみさえ悟れなかった奴が
人生を語る資格なんてない、という猛烈な自戒でもある。

暗くて陰鬱なストーリーではあるが、人の心に思いを致すことの
大切さをシミジミと教えてくれる作品でもある。




2011.06.08:ycci:count(780):[メモ/コンテンツ]
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