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“池井戸潤”三連発・その3
山歩きは30代からのオレのちょっとした趣味のひとつだ。
いや、正確には「だった」というべきか。
そりゃ、30代の頃は、春・秋の休日には自然と4時ごろ
目が覚め、いそいそと出掛け、山と山の恵みをそれなりに
楽しんだ。
しかし…
ここ数年実感しつつあるのは「体力の減退」。
昨年まで行けたところまで行けない、ということが重なり、
この度はついに「本命」のフィールドの手前で断念。
仕方のないことだけど、少し寂しい。
「体力さえありゃ、一年中山菜に困らないよなあ、ガハハ」
というジョークもこれまた寂しく山間に響く…。
File No.234
『果つる底なき』池井戸 潤(講談社文庫 648円)
オススメ度★★★☆☆
“池井戸潤”三連発の最終回。
この作品は、今から十数年前、著者が30代中ごろの気鋭の
時に上梓されたもので、第44回江戸川乱歩賞を受賞した、
いわば出世作である。
ジャンルとしては、経済ミステリーとでも言うべきか。
前二作は、殺人などのバイオレンスは一切ないが、これは
ある経済事件に関連して多くの人間が葬られていく。
主人公の伊木は、都市銀行である二都銀行渋谷支店の
融資課課長代理。
生来の正義感のせいか、本店企画部と言うエリートコース
から少し脇道にそれている状況。
ことは、同期入行の坂本の不審死からはじまる。
ある会社の倒産から関連会社の和議申請、そして同業種の
ベンチャー企業の立ち上げ、経営者たちの不審死、融通手形の
行方などなど、銀行と言う特殊な世界をベースに事件が展開し、
その全貌解決への糸が少しずつ手繰り寄せられていくストーリー
はなかなか面白い。
企業・銀行・商社それぞれの思惑や意図が、「金」を媒体として
複雑に絡み合う構図が、この作品の基本でもある。
その「金」が引き起こす醜い思念やきっかけすらつかめない狂気、
言わば「果つる底なき暗澹たるもの」に敢然と挑む主人公の
生き方に読者の共感が吸い寄せられていく秀作である。
確かに秀作には違いないが、オレは銀行員でもないし、まあ
しばらくは銀行小説はいいかなってカンジで★3つ。
2011.05.22:
ycci
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