ぶっくぶくの部屋

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松岬公園の桜もほぼ満開となった。
上杉まつりが秋に延期になって、大きな祭りイベントは
ないものの、あちらこちらから人がやってきて、公園周辺は
まずまずの賑わいを見せている。
世の中は騒然としているけど、いつもと変わらず春は来て、
桜が咲く。
何となく気持ちがたおやかになってくる。

File No.228
『津山三十人殺し』筑波 昭(新潮文庫 590円)
オススメ度★★☆☆☆

「八つ墓村」をご存じだろうか。
横溝正史の名作ミステリーで、何回も映画化・ドラマ化された。
若い人はトヨエツ主演・市川昆監督の映画を思い浮かべるらしいが、
オレは何と言っても、野村芳太郎監督・渥美清主演の映画が一番
面白かった。
岡山の僻村の旧家・多治見家の主・要蔵がある夜突然発狂したかの
ように村人32人を次々と惨殺していく。
懐中電灯を角のように頭にくくりつけて、猟銃と日本刀を振りかざして
狂奔する姿を思い出すだけでも身の毛がよだつ。
物語は、複雑な家系や、鍾乳洞などのおどろおどろしい設定効果も
あって、すごくミステリアスに展開していく。
物語の最後には、その昔、この地に落ちのびてきた戦国大名尼子一族
の残党が、村人たちに謀殺された因縁(呪い)ではなかったかとの、
これまた怖いオチがつく。

実は、このミステリーにはモデルになった事件がある。
それが、昭和13年5月21日に起きた「津山事件」である。
岡山県の僻村に住む22歳の青年・都井睦雄が、斧や日本刀、
匕首、猟銃などで村人30人を惨殺し、幾通かの遺書を残し、
自殺した大事件。
ほんとにあったんだ、こんな凶悪な事件が、と驚くばかり。
一人で一晩30人を殺めるというのは、当時も今に至るまでも、
日本はおろか、世界でも他に類を見ない大量殺人だそうだ。
その「津山事件」のノンフィクションがこの本。

なんでこんなものを読むのか?
だいぶ以前にこの話を聞いたことがあって、かなりの衝撃を受けた。
ずっと忘れていたのだが、先日週刊誌をパラパラめくっていたら、
「夜這いの歴史」みたいな特集があって…。
(決してエッチな週刊誌ではない)
その中にこの本が少し紹介されていて、たちまち記憶が甦ってきて
しまったワケ。
そうなると読まずにはいられない。
おそるおそる読み進めて行ったが、惨たらしい箇所が多くあり、
女性や怖がりの人には余りおススメ出来ない。

なんで都井睦雄は凶行に及んだのか?
それを書いてしまったら、これから読む人の興趣を奪ってしまう。
いくつかの動機が絡み合い、増長していくのだが、そのうちの
ひとつのヒントは前掲の「夜這い」にある。
オレなりの感想を言うと、何だか釈然としない。
事件から70年以上も経ってるから風化しつつあるのかも知れない。
その時、その場を知る人も、もはやこの世にはいないだろう。
そんな状況では無理もないことなのだが、何だかいま一歩、核心に
迫っていないような気がして…。
横溝正史の尼子残党の呪いというのはフィクションだが、そんな
目に見えない何かがあるのでは、と考えさせられる。
うっ、コワ〜い。

2011.05.01:ycci:count(814):[メモ/コンテンツ]
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