ぶっくぶくの部屋

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世の中わからないことだらけだなって、つくづく思う。
人間一人のことだってよくわからないのに、今回の
大震災なんて把握のしようがない。
そりゃ、テレビや新聞の解説などでそれなりの理屈は
ある程度理解できるし、被災地の惨状を見聞きしてきた
人の話も身につまされるし、犠牲者のことに思い及ぶと
底なし沼に沈んでいくようだ。
でも、あんな巨大津波が来るなんて!、原発があんな
壊れるなんて!…
「想定外」という言葉が繰り返されるが、それはとどのつまり、
「よくわからない」ということなのではないだろうか。
よくわからない、ということを自覚し、謙虚に生きなければ
ならない、と自戒を繰り返すこのごろ…。

File No.223
『深夜特急6 南ヨーロッパ・ロンドン』沢木耕太郎(新潮文庫 438円)
オススメ度★★★☆☆

深夜特急の旅もいよいよ最終章。
大震災の空白をはさんで、だいぶ長いことこの旅に付き合って
きたが、なんだか自分自身が旅してるような不思議な感覚を
与えてくれた。
旅はヨーロッパに入ってからわりと淡々と進むのだが、
ポルトガルの果ての岬、つまりユーラシアの西の果てにたどり
着いたとき、「そろそろ長い旅も終りにしようか」という思いに
至った沢木の旅の終止符は少し感動的だ。

そして、そのポルトガルの章で、奇しくも、
「わかっていることは、わからないということだけ…」
というフレーズが出てきて、思わず深く頷くこととなった。
「どんなにその国に永くいても、自分にはよくわからないと思って
いる人の方が、結局は誤らない」
これはあらゆる事柄・事象にも言えることなのではないだろうか。
見聞きしたり体験したりできるのは、物事のほんの一面だけ。
でも、たとえ一面であっても、見聞きしたり体験したりしないよりは、
できるだけ多くそういう機会を持った方が断然良いに決まっている。
寺山修司も言った。
「書を捨て、街に出よう!」と。

本編でも笑えるお茶目が随所に。
イタリアの釣銭のルーズさは、「ホントかよ?」と思うぐらい。
細かいお金がある分だけしか釣銭をくれないとか。
つまり、店で買い物して35リラの釣銭が出るとしたら、キャッシャー
に30リラしかなかったら、それしかくれないということ。
もう5リラ!と催促すると、
「オマエ正気か?」
というような反応がかえってくるとか???
ありえねえ〜。
まあ、もっとも今は違うかも知れないが。

あと、最後の最後に沢木もズッコケた。
旅の最後は、ロンドンの中央郵便局から日本に電報を打つとハナから
決めていて、いざかの場所に行ったら、電報が打てない?
そう、電報は郵便局じゃなく電話局!
日本だってそうでしょっ。
そんなドジ話もなかなか面白い。

じゃあ、なぜ感動の最終章なのに★3つ?
オレとしては、途中までは、久々の5つ★を付けようと思っていた。
が、最後の終わり方が少々いけなかった。
いけない、というよりは、オレ好みではなかったという方が適切か。
「深夜特急は終着駅に静かに入り、そしてオレの永い旅は終わった…」
みたいな感動的なエンディングを期待してたのに…。
まあ、こういう終わり方の方がいいじゃないか、と思う人も
いるだろうけど。

全編をとおして…
この本は、旅に出てみようか!というパワーを引き出してくれる。
「永遠の旅のバイブル」
というコピーもあながち誇張ではない。



2011.03.30:ycci:count(929):[メモ/コンテンツ]
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