ぶっくぶくの部屋

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先週末はちょいと出張なんぞに行ったもんで、しばらくぶりのアップ。
行ったのは、山陰の米子・境港・松江といったあたり。
米沢も吹雪だったらしいが、あっちも着いてからずっと雪・みぞれの荒天。
そこでお決まりの魔女探しならぬ、雨男ならぬ「雪男」探し。
「雪男はオマエかっ!」の応酬で、当然のことながら明確なオチがない
まま…。
そこで、ハタと考えてみた。
オレは雨(雪)男なのか、晴れ男なのか、と。
あれやこれや思い出してはみるものの、これまた明確な結論に至らず。
まあ無理して結論付ければ、雨(雪)男でもなし、晴れ男でもなし、
言うなら「曇り男」かな?
人格・風貌と同じで、なんとさえないハナシ…。

File No.218
『深夜特急1 香港・マカオ』沢木耕太郎(新潮文庫 400円)
オススメ度★★★★☆

出張の移動時間が長かったもんで、携えて行った4冊すべて電車や
飛行機の中で読了。
持って行ったのは沢木耕太郎の『深夜特急』シリーズ。
今回は四連発アップといこう!

なぜこの本なのか?
それは、少し前に読んだメイキングブックとも言うべき『深夜特急
ノート』がきっかけ。
こりゃあ面白そうだと思い立ったが吉日、6冊一気に購入。

今や我が国の代表的なノンフィクションライターである沢木耕太郎が
26歳の時に思い立って、香港からロンドンまでユーラシア大陸横断の
一人旅に出た時の旅ルポ。
沢木は昭和22年生まれだから、26歳の時と言えば、昭和48年頃
のことになる。
海外旅行でさえまだまだ一般的ではなかった時代に、単身で、しかも
わずかなお金で、バスを基本にした旅に出たというのはすごいパワーだ。

オレも一人旅が好きだが、26歳の時にこんなパワーはなかった。
金がない、ヒマがない、アブない、カッタるいなどなどあらん限りの
理由をつけて旅立てない、というのが大方のところだろう。
そういうモロモロのことをふっ切って旅立てることがまずスバラシイ。

この『深夜特急』は、出だしの香港・マカオ編からいきなり面白い。
沢木は、香港の街の活気と猥雑さ、そして陰と陽の織りなす怪しげさに
魅せられて、熱に浮かされたように歩き回り、思わぬ長期滞在となる。

本編での圧巻は、マカオでのギャンブル。
カジノで「大小」という博打にハマり、あやうくこれからの旅費を
摩ってしまうところまでいく。
26歳の青年がチャンブルにのめり込む姿がリアルに描かれていて
すごく面白い。
と、同時に、「ああ、みんなこういう経験あんだな」なんて妙な安心
したりして。
カジノに未練を残しながら沢木青年は次の目的地マレー半島へ。


File No.219
『深夜特急2 マレー半島・シンガポール』沢木耕太郎(新潮文庫 400円)
オススメ度★★★★☆

沢木青年が次に行ったのはタイのバンコク。
いかにも気に入りそうな街なのだが、香港の魅力の後味が強烈に残って
いるからか、いまいちピンときていない。
そういうところがまた面白いのだが。

この編での読みどころは何と言っても、マレーシアのペナン。
ひょんなことから娼館のような宿に泊まることとなり、そこの娼婦や
ヒモの男たちと奇妙な交流が生まれる。
ここでも思わぬ長逗留に。

旅はクアラルンプールからシンガポールへと続く。
どちらも街としてはビンビン来るようなものはあまりなかったようだが、
大事なことに気付きはじめる。

そのひとつは、シンガポールで会った二人のニュージーランド人。
彼らと話しているうちに、旅は「アラウンド・ザ・ワールド」で、
期間は「3、4年」、旅の後の予定は何も考えていない、という
スケールに打ちのめされる。
自分の旅にも予定なんて何もないのだ、と改めて思い直すことに。

もうひとつは、自分が旅に出た本当の理由について。
それは、プロの書き手になるという決定的な局面から逃げたかった
のだ、ということに気付く。

そして、沢木青年の旅はさらに深く進む…。


File No.220
『深夜特急3 インド・ネパール』沢木耕太郎(新潮文庫 400円)
オススメ度★★★★☆

シンガポールを後にした沢木青年は、いよいよ前半のヤマ場となる
インドへ。
カルカッタに空路で行くためにバンコクに戻り、そこのインド航空
支店員と交渉していると、何と、インド人の彼から、
「我妻先生はお元気でしょうかね」と質問される。
そう、わが郷土が生んだ不世出の民法学者我妻栄博士のことである。
うわあ、こんなところにも出てくるんだ。
沢木青年は経済学部の出で、我妻博士の高名は知っているものの、
詳しくはない、というところが少し残念ではあるものの…。

カルカッタでは、いろんなことにショックを受ける。
例えば、まだ7,8歳の女の子が、わずか3ルピーで体を売ろうとして
くることに衝撃を受ける。
ちなみに、その当時のレートや物価から、3ルピーは日本円にして
100円ちょっとぐらいか。
イギリス人がインド人を評して、
他国の言語にあってヒンドゥー語にないのが、
「ありがとう、すいません、どうぞ」だという文化・習慣・国民性
の違いにも直面する。
(あくまでもその当時のこと)
まさに「異文化ギャップ」に自らの身をさらして、とまどい、怒り、
驚いている姿がそこにはある。
「秘密の花園」のエピソードも面白いゾ。
世界には、こんなこともあるのかって思ってしまう。

インドでの後半に沢木青年はついに体調を大きく崩し、死の影が
忍び寄り、前途が危ぶまれる。


File No.221
『深夜特急4 シルクロード』沢木耕太郎(新潮文庫 400円)
オススメ度★★★☆☆

沢木青年の病は、インドの薬でなんとか治る?のだが、それが
どんな薬なのか全然わからないところがまたスゴイというか…。

旅はインドからパキスタンへ。
「チキンレース」顔負けのパキスタンのバスの凄まじさは、読んで
いるだけでも恐ろしいやら、笑えるやら、ほんとにこんなバス
あんのか?と思ってしまう。
パキスタンのバスはあらん限りの猛スピードで突っ走りまくり、
バスがバスを抜こうものなら、もうマッチレース。
なんとなれば、対向車線にハミ出るわけだから、対向してくる
トラックとはまさにどちらかよけた方が負け、みたいなチキン
レースを繰り広げることになるそうな。
ああ、やだやだ、そんなバスぜったい乗りたくない!

旅は、アフガニスタンからイランへと続く。
今だったらヤバくてとっても行けないようなところだろう。
そこを、気の遠くなるような時間バスに乗ってただひたすら
走る。
そこを読んでいた時、オレもかなりカッタるい電車に乗って
移動中だったが、数日に亘るオンボロバスでの不毛地帯のような
ところの移動に比べれば、屁でもない(下品で失礼)気がしてきた。
でも、今どき3時間もかかる電車の中で車内販売なしというのは
いささかこたえるけど…。

イランのイスファハンのバザールでの駆け引きも面白い。
沢木青年はある時計屋にあった懐中時計をいたく気に入り、
3日間も通い詰め、ついに半値以下に値切る。
面白い話なんだが…、なんだか少し興ざめた気分になってしまった。
こういう値段の駆け引きが随所に出てくる。
それは安く旅するには必要不可欠なことなのではあるが、
ハッタリをかましたり、ナメられまいとして必要以上に強く出たり、
わずかの値段の差に一喜一憂したりする姿が、たまにだといいんだが、
こうしょっちゅうだと、ヤレヤレまたか、と思ってしまう。
「オイオイ、だんだん気持が荒んできてるんじゃないか?」
と本の中の沢木青年に言いたくなる。

それと…、
自分とヒッピーの間に距離を置いたような書き方をしているけど、
自分だってほとんどヒッピーじゃないか、と言いたくなる。

旅も中盤になって、沢木青年のそういうところが少しハナにつく
ようになったんで、今回は★3つに格下げ。
まあ、旅の中ダルミといったところかなあ。

とは言え、旅の興趣はまだまだ続く。








2011.03.06:ycci:count(1,417):[メモ/コンテンツ]
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