ぶっくぶくの部屋
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ドキドキのちブルー
いやあ〜、今年もきたねえ、健診結果。
どっこも悪いところなく、健康そのものオールA!…
なんてことは夢のまた夢、どっぷりブルーに浸るこのごろ。
「一体何がいけないんじゃ!」
と自問してみれば、
「不規則、喫煙、運動不足、カロリー過多、偏食、飲酒、ストレス、
無趣味、不感動、少涙 などなどなど…」と洪水のような自答の数々。
そして、酒飲んで盛り上がるのは健康話とくりゃ世話ない。
その上に、毎年なぜか身長が少しずつ縮んでいる。
わずか2〜3mmほどだが、ここ3年ほど続落している不気味さ。
なんでやねん?
File No.214
『旅する力 深夜特急ノート』沢木耕太郎(新潮社 1600円)
オススメ度★★★★☆
健康を蝕むストレスから解き放つひとつの手だてに「旅」がある。
それも、連れとワイワイガヤガヤの宴会旅や物見遊山ではなく、
一人っきりで見ず知らずの土地に行って、風や光を感じながら
気持のおもむくままに流れるような旅。
そんなことを前に知人に話したら、
「くっらいなあ〜オマエ」
なんて言うもんだからアッタマきたおぼえがある。
まあ、話す相手を見誤ったオレが悪いのかも。
一人で風浪の旅に出てみたいという人間が少ないとしたら、
沢木耕太郎の『深夜特急』がこんなに支持されるハズがないではないか。
この『深夜特急』は、著者が26歳の時に、ユーラシア大陸をアジアから
ヨーロッパまで、基本的にはバスで一人旅した記録である。
それは、「第一便」から「第三便」まで出版され、今回読んだこの本は
そのメイキング・ブックとでも言うべき「最終便」にあたるもの。
読み進めていくにつれ、これは旅に関する珠玉のようなエッセイだと
いう感を深めていった。
奇しくも、この本の中に、なぜ一人旅なのかということがうまく書かれて
いる。
「ひとり旅の道連れは自分自身である。周囲に広がる美しい風景に感動
してもその思いを語り合う相手がいない。それは寂しいことには違いないが、
吐き出されない思いは深く沈潜し、忘れがたいものになっていく」
そうそう、オレが思っているのもそういうこと。
また、こんなことも書いている。
「旅は人を変える。しかし変わらない人というのも間違いなくいる。
旅がその人を変えないということは、旅に対するその人の対応の仕方
の問題なのだろうと思う。人が変わることができる機会というのが
人生のうちにそう何度もあるわけではない。だからやはり、旅には
出ていった方がいい」
うむ〜、これほどインパクトのある旅へのいざないはないなあ。
なんだか、この本を読んでると、失いかけてた「旅する力」が少し
ずつ甦ってくるような気がする。
確か40歳になった時、これからは年に一度必ず一人旅に出るゾ、と
決意したのだが、実行に移したのはわずか2、3回。
年々「旅する力」がダウンして、億劫になっている自分に気付かされる。
これでは人間としての「仕込み」が足りないと痛感しつつも、日常に
流され紛れてしまうばかり。
それはオレだけではないだろうが。
まあ、とにもかくにも今年は『深夜特急』を携えて一人旅に出よう、
と思う。
この本は、オレにそんなモチベーションを与えてくれた。
著者も書いているが、10代後半から20代前半のころの旅って
なぜ忘れられないんだろう。
オレも、30数年前に初めて誰にも告げず一人旅に出て、平泉の
義経堂から眺めおろした北上川の早春の風景が未だ忘れられない。
そんな、忘れられないような旅をしてみたい。
著者が言うように、自分を変えられる機会なんて、そう多くは
ないのだから…。
2011.02.15:
ycci
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