ぶっくぶくの部屋
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腑に落ちない
前回は、映画『最後の忠臣蔵』を褒めちぎったオレ。
しかし、実は腑に落ちないことがあって…。
それは、全編を通じて随所に織り込まれている人形浄瑠璃。
たぶん近松の「曽根崎心中」で、いわゆる道行きと言われる作品。
禁断の恋情と死を表現しようとしたのかも知れないが、
いまいちシックリこない。
というより、製作者には悪いが、オレは違和感しか感じなかった。
人形浄瑠璃ぬきに淡々と表現した方が、より好もしかった
のになあ。
だいぶ以前になるけど、宇崎竜童と梶芽衣子が共演した
『曽根崎心中』はなかなか良かった。
感性とか、センスとかは人それぞれだから何とも言えんけど。
File No.203
『江の生涯』福田千鶴(中公新書 800円)
オススメ度★★☆☆☆
来年のNHK大河ドラマは『江』(ごう)。
1年を通じてまたカブリツキで観るであろう家人に、博学なところを
みせ、少しでも尊敬の眼差しを向けさせようという、きわめて
姑息な動機でこの本を買い求めた。
(だいたい聞いてなどいないようだが…)
本当は原作を買う予定だったのが、上・中・下の三分冊になって
いたので、とりあえず手頃な新書にしてしまった。
今から思えば、小説を読んだ方が良かったかもしれない。
この新書、確かに手頃なボリュームではあるが、中身は純然たる
歴史学者による史料を元にした入門的歴史書である。
一般人であるオレには、かなり読みづらかった。
史料の原文引用が多く出てくるのと、人間(婚姻・姻戚)関係が
複雑でよくわからないところがあり、何度か中途で投げ出そうか
とまで思った。
でも、ひとつひとつ完璧に理解しながらでなくても、「江」の
人間像がつかめれば、という思いで最後まで何とか読み通した。
正直言って、「江」という女性の存在は知っていたが、どんな
生涯を送ったのかは、殆ど知らなかった。
「江」は、戦国大名の浅井長政と、織田信長の妹・市の三女として
生まれた。長女は、後に秀吉の室となり、子の秀頼とともに
大阪城で自害する茶々である。
父・浅井長政は信長に攻められ、小谷城で自害。母・市は柴田勝家
に再嫁した後、秀吉に攻められ、越前北の庄で自害。
「江」自身も、三度目の結婚で二代将軍となる徳川秀忠に嫁し、
三代将軍家光の生母となる。
が、しかし…。
著者は、様々な史料を検討しながら、家光の生母は「江」では
なかったことを解き明かしていく。
この本の読みどころのひとつである。
自分の腹を痛めた実子(いわゆる嫡子)・忠長は家光より後に生まれた
ため、将軍継嗣になれず、父母の死後、「凶暴」との理由で自害させ
られてしまう。
父・母・姉・実子がいずれも自害という苛酷な運命を受容しながら、
一大転換期の荒波の中を生き抜き、ついには、武士統治時代の
トップレデイーとも言うべき「将軍御台所」「大御台所」にまで
上り詰める。
大河ドラマには格好の素材だろう。
しかし、著者も書いているように、「江」に関する史料は極端に
少なく、その実像に迫るには、さらなる新史料の発掘に待たねば
ならないという。
ドラマ自体も、あまり現代風な脚色を付けすぎないことを望みたい。
たぶんオレは観ないと思うけど…。
蛇足ながら、中学生以来「紅白」も観ていない。
まあ、フトンかぶって落語でも聞くとするか。
今年もあと残り5時間ほど。
ともに回生の祈りを込めて、日本人らしく粛とした心持ちで
新年を迎えたい。
2010.12.31:
ycci
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