ぶっくぶくの部屋

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国民の多くが野球に熱狂していた時代があった。
(今はサッカーも熱いようなので、野球ばっかではない)
プロ野球に限って言えば、熱狂時代の幕開けは、あの
長嶋茂雄がプロ野球入りした年からではないだろうか。
それは、奇しくもオレの生まれた年。
そして、それから10数年、オレが高校時代に長嶋茂雄は
現役を引退した。
忘れもしない引退試合。
家では笑いや涙など微塵も見せなかった父の目が真っ赤だった
ことを今でも憶えている。
オレも屋根にのぼって泣いた。
ウルトラマンが死んだ日も屋根の上で泣いた。
なぜ屋根の上か自分でもよくわからないが、泣いているところを
人に見られたくなかったのかも…。

File No.170
『野球へのラブレター』長嶋 茂雄(文春新書 800円)
オススメ度★★☆☆☆

そんなオレだから、長嶋茂雄の、こんなシャレたタイトルの、
しかも、オビに長嶋が一番輝いていた現役の頃の精悍な顔の
写真があれば、間髪いれずに即ご購入と相成った。
本の中身は、長嶋が病に倒れてから二年ほど後にはじめた
「月刊ジャイアンツ」連載の野球エッセイを、改めてまとめたもの。
前にもちょっとふれた、いわゆる「グリコ本」だが、件の
月刊誌は殆ど読んだことがないので、まあ許容範囲。
ちなみにオレは正々堂々ジャイアンツファンだが、ことさらに
ジャイアンツだけをヨイショするような雑誌・本・新聞等は
あまり好かん。
確かにジャイアンツは好きだし、とくにON(王・長嶋)は
大好きだったが、そのライバルだったタイガースの村山・江夏、
ホエールズ(現・ベイスターズ)の平松など、各球団の
エースたちも、心からカッコイイと思っていたから…。

本論に戻って…。
この本、「野球というスポーツは人生そのものだ」を信条とする
長嶋の来し方・その姿勢を物語る好エッセイだ。
ああ、長嶋はこんなことを考えていたのか、と思わせる部分も
多くあった。
そのひとつが、投手のインコースのボールに対する「恐れ」が
あまりなかったワケ。それは、長嶋が打席に立ったとき、常に
二つの球筋をイメージしていたこと。
ひとつは、自分のヒッティングゾーンに来る球、もうひとつは、
頭めがけて来る球筋、だったそうだ。
あと、監督をやっていた時、若い連中とやっていく気苦労を
少しボヤいているところなんざあ、逆にフツーっぽくて新鮮な
感じさえした。
そして何よりも面白かったのは、巻末に収録されている、
日本プロ野球コミッショナー加藤良三との対談だ。
この加藤コミッショナーは、驚くほど熱狂的な長嶋ファンで、
長嶋のことなら本人よりよく知っているほど。
ONアベックホームランの最初が天覧試合で、最後が引退試合
の時だなんて、オレは初めて知った。

こんなに褒めちぎって、なんで★ふたつ?
それは、長嶋自身が書いてないから。
少し障害が残ってしまったので仕方のないことだが、聞き書き
にしても、何だか長嶋の「におい」のようなものが、いまいち
オレには伝わってこなかった。
長嶋はこんな言葉を使わんだろう、こんな話し方はせんだろう
と、なんとなく感じるのである。
一言で言うと、編集しすぎ。
どうせこれだけ編集するなら、脈絡のない話の内容・筋も
ちゃんと構成し直せば良かったのに。
ちょっと「題名負け」のような感じもするなあ。
好きな題材だからこそ、ついつい辛口になってしまうんだなあ。



2010.09.02:ycci:count(744):[メモ/コンテンツ]
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