ぶっくぶくの部屋

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さっそくクレームがついた。
昨日アップしたパンの話で、アレやコレやと書いてしまったことに、
「男子たるもの、衣・食・住を語らず、じゃあなかったの?」
ってメールがグサリ。
確かにそういう意味のことを何回か言ってるし、そうありたい
と願ってはいる。
しかし、悲しいかなオレも俗人、どうしても食欲・物欲が
つきまとう。
そして、衣・食・住の話題はみんなに共通してるんで、楽しく
盛り上がりやすいんだなあ、これが。
衣・食・住を語らないとすると何が残る?
旅か…?
とは言っても、世界中を旅しているわけでもないし、実際パワー
いるんだよな、ひとり旅するって。

File No.169
『旅へ 新・放浪記』野田 知佑(ポプラ文庫 600円)
オススメ度★★★☆☆

著者の野田知佑って、日本におけるツーリングカヌーイストの草分け
的な人。「あやしい探検隊」の椎名誠とも交友があり、ツーリスト
でありナチュラリストとしての行動も似ている。
この本は、大学を卒業した著者が、自分を見つめ、将来に向けて
何か確かなものを掴もうと、必死にもがき苦しみながら、日本や
世界を放浪する青春記でもある。
旅は北海道から京都へ、そしてヨーロッパへと広がる。
その殆どが、バックパッカーとして、ヒッチハイクや野宿なども
いとわない貧乏旅行。
貧乏旅行だけに、人との出会いも多く、かかわりも濃く、すべてに
多情多感で、自由であるがゆえに自己の意志や意識が問われる旅
でもある。
切ないまでに自己を見つめ煩悶するその姿は、軽重の差はあれど、
誰もが一時期の自分と重ね合わせてしまうかもしれない。
だから著者は、「青春とは、人生で一番やせこけている時期の
ことである」と言うのであろう。
そして著者は、旅のあとに一時期勤め人になるが、
「自己憐憫と自己嫌悪の日々の後で、勤め人の生活が楽だったのは、
大きな決定、判断は他人がするので、自分の無能、無為を責める
ことが少なくなったからだ」と言い、再び自由の海へ。
これを「うらやましい」と思う人は、少々思慮不足だと思う。
なぜなら、自分の生き方や結果にすべて自分自身が責任を負う
というのは、相当の覚悟がいるし、第一、溢れんばかりのパワー
がないと無理である。

オレも10代後半から20代の頃は、あてどない一人旅が好きで
よく出かけた。それは、野田のような大放浪ではなく、プチ放浪
に過ぎなかったが…。
その頃に見たもの、感じたこと、出会った人々、交わした会話は
今でもよく憶えている。
そういう時期も過ぎてだいぶ経ったある日、何を血迷ったか、
「男は一人旅をせなアカン」と思い、リュックかついで夜行列車
に乗って、3、4日見知らぬ街や野山を歩いてきた。
その次の年も行った。
が、だんだん億劫になってきた。
まず、自分自身の日程を調整することが億劫。
「何がなんでも行く!」という強い意志力がないとなかなか
旅立てない。
次に、時間をかけるということが億劫になった。
徒歩やバス、鈍行列車など、時間がかかるものに身を委ねられない、
言ってみれば「せせこましく」なった。
そして何よりも、家人や周囲への説明が億劫というか、面倒くさい。
「どこ行くの?」
「誰と行くの?」
「どこ泊まんの?」
「何が楽しくて一人で行くの?」…
(ウルサイ!オマエにはわからん)と心の中で毒づきながら、
じっと沈黙で耐えることが、少々嫌になってきた。
一人旅はパワーあればこそ、のゆえんでもある。
よおっし、今年こそ!
と公言してしまうこと自体がパワーの減退をあらわしている。
「本当に行く奴は何も言わないで行く」と著者も書いている。
その通りだなあって、寂しく思う…。
2010.08.31:ycci:count(995):[メモ/コンテンツ]
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