ぶっくぶくの部屋

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ある知人が、某市の某ベーカリーがウマいと言う。
別の知人も、同じようなことをオレに言った。
そんじゃあ、ってんで、重い腰をあげて行ってみた。
そこは、店内でもパンが食べれるようになっていたので、
さっそく買ったパンをガブリ。
「フ〜ン、普通じゃん」
パンキチの家人も「フツーだね」と素気ないリアクション。
(カタい給食パンで育ったオレたちの味覚も相当あやしい
もんだけど…)
大量に購入したパンを少々恨めし気に見ながら、そそくさと
店を出てしまった。
だいいち、オレにはパン食の習慣がない。
(どーすんだよ、このフツーのパン!)
そう言えば以前、「パン屋の数と質は都市文化のひとつの
バロメーター」というようなことを読んだか、聞いたこと
がある。
ん〜、ナルホド、言えてるかも…。

File No.168
『乙女の密告』赤染 晶子(文芸春秋2010年9月特別号 800円)
オススメ度★☆☆☆☆

恒例になった芥川賞受賞作品の読後感。
はっきり言って、オレ的にはいまいちの作品が近年多いので、
今度こそはと、少し期待していた。
が、その期待はまたもや裏切られた。

物語の舞台は、京都の外国語大学。
主人公は、そこで学ぶ女子学生(たち)。
題材は、誰でも知っているアンネ・フランクの『アンネの日記』。
ちなみに、オランダ語の原題は『ヘト アハテルハイス』という
らしい。意味は「うしろの家」。
そのドイツ語版の暗誦スピーチコンテストに臨む「乙女」たちの
奮闘ぶりを少々コミカルさも交えながら描く過程で、
誰がアンネ・フランクを密告したのかというナゾに話を
収れんさせていく。

明らかに著者自身の学生時代の経験や体験をベースにしたと思われる
日常描写には最後まで馴染めなかったし、そのナゾの答えも、
「ヘッ?」ってなカンジ。
「受賞のことば」に書いてる「私はこれからも血を吐いて、文学に
精進していきたいと思います」という著者の弁も、マジなのか、
ユーモアなのか、よくわからない。

今回の場合、あえて面白かった点と言えば、本文ではなく、9人の
選者の選評の方だ。
おどろくべきと言うか、賞に選ばれたのだから当然と言うべきか、
半数以上の選者がこの作品を評価している。
一方、宮本輝は、「…小説というものはこのように読むことも
できるのかと、感じ入らせて…」と少々皮肉っている。
石原慎太郎に至っては、「…こんな作品を読んで一体誰が、己の
人生に反映して、いかなる感動を覚えるものだろうか…」
と、かなり手厳しい。
(石原評はいつもそういう傾向なのだが)
オレはそこまでは酷評しないが、本は、読む人や読み方によって
その評価は大きく分かれる、ということの格好の例のひとつではないか、
と思う。
(だから、他の人の、とくに「面白い」「いい」と感じた人の
意見・感想を聞いてみたい。皮肉じゃなくて)

そう言えば、少し前に読んだ沢木耕太郎の『無名』の中で、
「私は、自分より若年の作家・作品に対する興味関心が殆どない
という点で、読書家の父と相似している」という意味のことが
書いてあった。
オレも、この歳になって、あんまり無理せんでいいかもなあ。
膚身感覚でわからないものを、ちょっと本読んでわかったような
気になるということは、相当無理だし、無駄だし、無意味な
ことのような気がする。
先入観に支配されず、自分が曲がりなりにも培ってきた価値観や
人生観、尺度みたいなものを信じるしかない、と思う。



2010.08.30:ycci:count(929):[メモ/コンテンツ]
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