ぶっくぶくの部屋

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先週、松島・石巻に遠征した。
ちょうど「松島基地祭」の日。
基地と海の間を走る自転車道の真上を
ブルーインパルスや戦闘機F15などが飛び交い、
大迫力。
炎天下で見入ってしまったせいか、走った距離は
さほどでないのにフラフラしてきた。
水分も十分にとってるハズなのに猛烈にダルいし、
ふくらはぎが今にもつりそう。
家に帰ってからも本調子じゃない。
そして翌日は朝早くから湯沢に車で。
こりゃダウンかと思いきや、数日で持ち直してきた。
オレもまだまだ…(過信禁物!)

File No.166
『無名』沢木 耕太郎(幻冬舎文庫 533円)
オススメ度★★★★☆

沢木耕太郎と言えば、70年代から現代までを代表する
ノンフィクションライターの一人である。
オレも、『敗れざる者たち』を読んで感銘を受けた
おぼえがある。
『無名』は、沢木と父親の関係を確かめ直しているような
趣の本である。
沢木の父・二郎が病に倒れ、看病する過程で、幼少期からの
思い出を手繰り寄せながら、父は何を考え、どのように生き、
子どもたちとどんな関係性を醸して来たかを改めて見つめ直す。
二郎は、事業経営者の次男として、経済的にも不自由のない
境遇に生まれながら、戦争を機に家が没落し、町工場の
工員として、おごらず、高ぶらず、目立たず、ひっそりと、
質素に暮らしてきた。
一合の酒と一冊の本があれば、それが最高の贅沢というほど、
ストイックな暮らし。
「父には自分が何者であるかを人に示したいというところが
まったくなかった。何者でもない自分を静かに受け入れ、
その状態に満足していた」
『無名』たるゆえんでもある。
子どもたちを一切束縛せず、叱ることもなかった。
著者は「父の私に対するこの徹底した不干渉には凄みすら
感じられる」と書いている。
父に叱られない日はない、というほどスパルタ式に育て
られたオレには、とてもそういう状態が想像つかない。

父・二郎の想いは、五七五の短い俳句の中にちりばめられていた。
余命いくばくもない父へのレクイエムのように、息子・沢木は
この俳句を集め、編みはじめる。
俳句に込めた想いをなぞり考えていく。
それが「お涙頂戴」式のセンチじゃなく、つとめて淡々とした
筆致に終始しているところが実にいい。
父を喪おうとしている哀しみが、かえって深く、増してくるようだ。
「悲劇を涙で語らず、喜劇を笑いで語らず」といった風が、オレの
趣向・性向にもすごく合っている。

喜怒哀楽を素直に爆発させるような風潮が蔓延している現代。
それは悪いことではないだろう。
しかし、涙なんてそもそも人前で流すものではない、と
オレは思う。
泣きたかったら、一人布団でもかぶってオイオイ、シクシク泣く…、
そんな男でありたい…と思う(あくまで勝手な願望)。

またまた脱線してしまったが、華やかさも、奇抜さもないこの本
になぜか四つ★を付けてしまった。
それは、父親を亡くして早や四半世紀が経とうとしている自分自身の
意識と重なり合う部分があるからかもしれない。
オレばかりでなく、父と息子との間には、いろいろな「川」が
あるんだろう。
2010.08.28:ycci:count(957):[メモ/コンテンツ]
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