ぶっくぶくの部屋

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わが国のナショナル・フラッグ・キャリア、いわゆる
国旗を掲げて世界を飛行する、その国を代表する航空会社の、
JALが今年1月に経営破綻した。
負債総額は2兆3200億円超。もちろん上場廃止。
新たにグループCEOとして再建を託されたのは、京セラ名誉
会長の稲盛サン。
最近の新聞では、再建計画が予定通り進んでいない旨の記事が
載っていたが、稲盛サンもこの本を読んだのだろうか。

File No.131
『JAL崩壊 ある客室乗務員の告白』
日本航空・グループ2010(文春新書 740円)
オススメ度★★★☆☆

ヒドいとは聞いていたが、JALの内情がこれほどヒドいとは。
その元凶は、会社側と組合側の無益な闘い。
これは、今はスーパーバイザー(SU)と呼ばれる現役のチーフ
パーサーが書いたものらしいが、JALの真の再建を願うと銘打つ
ように、スキャンダルやお粗末過ぎる社内事情の暴露だけに
とどまらず、合理的且つ抜本的な改善提案を随所に盛り込んで
いる。
例えば、機長らのストライキに臨む会社側の弱腰に対して、
「どうぞ、おやりなさい。そして、空港で激怒する乗客たちに
自らの正当性をちゃんと説明して理解を得ないさい」と
簡単明快、一刀両断。
つまり、年収3000〜4000万円の超高給取りの機長は、
スト権を振りかざして、あくなき待遇改善を求めて闘いの
ポーズをとるが、乗客の怒りを鎮め、陳謝しながら冷や汗を
かきとおすのは、いつも弱い立場の地上勤務者だと、筆者は
言いたいのである。
経営実態にそぐわないような高給の機長、「魔女の館」とも
畏怖される客室乗務員たちの管理者MGR、「UUU」という
暗号さえも使われた自分勝手で横暴な乗客、チクリ・いやがらせ・
裁判に終始する組合、そして、それらをコントロールできない
会社経営サイド等々、JAL負の遺産が迫真の具体性を持って
描かれている。
ちなみに、「UUU」とは、「うるさい、うるさい、うるさい」
お客の暗号マークだそうだ。社内だけの暗号が露見してしまって、
今は使われてないようだが。
オレはよく飛行機に乗って移動するような華々しい仕事ではない
から、あまり経験はないけど、乗務員や地上係員にクレームを
付けてる客を何回か見たことがある。
正当なクレームもあるだろうけど、「そりゃ、ちょっと言い過ぎ」
ってな例も多いのでは。
ここで取り上げている一例は、搭乗時間の遅延。
オレも前から不思議に思ってたんだけど、日本の航空会社って、
出発時間が過ぎても、最後の客が乗るまで待つよね。
時間通り乗ったオレたちがバカ正直過ぎるのか、と思わせる
ぐらい遅刻者に寛容なのはなぜなんだろう。
それは、乗り遅れた客とのトラブルや事後処理がウザイという
一言のようだ。何とも現実的過ぎるお言葉。
でも、遅れた理由は貨物に載せるほどあろうと、ジャストタイム
でハッチを閉めるべきだとオレは思う。それも断固たるキャプテン
指示として。

ところでこの本、JALの暗部・恥部ばかりをさらけ出している
ようだが、さにあらず。
筆者たちは、JALの真の再建を心から願っているというスタンス
を持っているので、そんじょそこらの暴露本とはワケが違う。
再建を願っているどころか、確信しているようなフシもある。
そのワケは、優秀な人材が数多くいる、というかけがえのない
財産があるからだろう。
事実、オレたちの就職の頃も、その前も後も、JALは学生の
人気就職先の最上位にあった。
そして、それを裏付けるように、この筆者たちの文章力や構成力、
論旨などにも、高い知性を感じる。
ただひとつ、期待外れだったのは、あれだけ世間の耳目を集めた
「沈まぬ太陽」に一言も触れていないこと。
まあ、オレだけの勝手な期待だから仕方ないか…。
何はともあれ、優秀な人材がいっぱいいるんだから、みんなが
本気になれば、ふたたび「ナショナルフラッグ」が高々と
掲げられるだろう、と思う(願う?)。


2010.03.22:ycci:count(1,583):[メモ/コンテンツ]
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