ぶっくぶくの部屋

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またもやちょっとご無沙汰してしまった。
何と言うか、書ける状態じゃなかったというか…。
眩暈を感じるのよ、この頃。
「♪時は、わたしに、めまいだけをのこしてゆく〜」
なんて冗談でやり過ごそうかなあ。

File No.121
『日本辺境論』内田 樹(新潮新書 740円)
オススメ度★★★★☆

ベリーグッド!
今のところ、オレの今年の新書ナンバーワンだな、こりゃ。
とは言え、まだ今年になって2カ月しか経ってないけど。
この本は、「日本人とは辺境人である」という前提のもとに
たった日本文化論である。
丸山眞男や司馬遼太郎、本居宣長、養老孟司などの思想家・
小説家の論を引用しながら、独自の辺境論を、語って聞かせる
ような平易な文章で展開している。
面白かったところを少し紹介してみる。
まず、日本人はなぜオバマのような演説ができないのか?
オバマもそうだけど、アメリカの歴代大統領って演説が
上手いよねえ。
それは、アメリカ人の国民性格は、建国の時に「初期設定」
されているからだと言う。
つまり、建国の理念こそが、立ち返るべき原点なのである。
だから、アメリカ国民の琴線に触れるような名演説・名セリフ
が生まれ、支持されていくのである、と。
では、なぜ日本の首相の演説はパッとしない(失礼)のか?
日本は理念に基づいて作られた国ではなく、立ち返るべき
「初期設定」がそもそもないからだと喝破している。
もうひとつ。
辺境人は「学び」の効率が良いということ。
辺境であるがゆえ、どうしてもはじめから本源的な遅れという
ものがあり、それが、学びの効率の良さにつながっているという
指摘も、まさに卓見。
上手く説明できないけど、この本を読めば、「ナルホド、そういう
ことかあ」と思えるよ、きっと。
日本が辺境であることは、国旗にも象徴されている。
日本の国旗は言うまでもなく日の丸、日出ずる国の象徴。
日出ずるとはどこから見た場合のことか?とかんがえれば、これも
アハッ体験。
中華思想と良く言うけど、中国こそが世界の中央に咲く華である、
という地政学的な、根源的な原初が厳然とある。
もうひとつ。
辺境人は「空気」を大事にする。
本居宣長の有名な和歌
「敷島の大和心を人問わば 朝日に匂う山桜花」は、
われわれが「匂い」とか「空気」をいかに大事にする性格で
あるかを象徴している。
心あたりない?
会議なんかで、人の顔色を少し窺いながら、その場の空気になんとなく
合わせながら発言することって。
そういうことに鈍感なヤツをKYと揶揄することも。
現代では、他人のことや場の空気なんか一切われ関せず、反対は反対
と堂々と表明することが良とされているような傾向があるが、
周りをキョロキョロしながら、空気の流れを壊さないで、概ねが
無難とする(ちょっと曖昧な)落としどころに落ち着かせるというのは、
われわれ日本人のDNAでもあるのだ。
確かに、合理的でなく、効率的でもないが、まんざら悪いことでもない
とオレは思っている。
(そういうのばっかりでもダメだろうけど)
過度な自己表現を慎み、他者を慮るという精神性は、「武士道」の
残存であり、オレ的に修飾すれば、「日本人に遺された数少ない美質
のひとつ」だと思う。

こういう日本文化論が売れれば、まだまだ日本は捨てたもんじゃない。
(実際売れてるらしい)
バンクーバーでの日本選手の苦戦にヤキモキしている人には、格好の
タイミングかもよ。
久々に、もう一度読み返してみたい本に出会ったということで、
文句なし、今年初の四つ★評価。

訂正 「今年2回目の四つ★」だった。
2010.02.23:ycci:count(1,061):[メモ/コンテンツ]
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