ぶっくぶくの部屋

ぶっくぶくの部屋
ログイン

ほぼ1週間ぶりのアップ。
風邪気味で体調悪いし、慌しいし、夜は夜で…、
いやはや。
それはそうと、朝青龍辞めちゃったんだってねえ。
相撲道を極めた横綱らしい品性という面ではいろいろ
問題もあったようだけど、彼の相撲に、かつて世界を
席巻したモンゴルのチンギス・ハーンやフビライ・ハーン
を重ね合わせた人も多かったのでは。
関取としては好きじゃなかったけど、あのフテブテしさが
見れなくなると思うと、何だかさびしいなあ。

File No.117
『悼む人』天童荒太(文芸春秋 1619円)
オススメ度★★★☆☆

天童荒太というと、2000年にベストセラーになった『永遠の仔』
がまだ記憶に新しい。
なんという結末。
子どもの心の深遠をセンセーショナルに描いた話題作だった。
そして、今回の『悼む人』で天童は第140回直木賞を受賞。
有名書店の2009年売上ベスト10にもランクインしている。

近ごろ、奇想天外にしてセンセーショナルばかりを追求する
余り、肝心な「魂の救い」を与えてくれない小説が多くなって
きているような気がする。
その点、この本は、主人公の坂築静人が、あらゆる人の死を
「悼み」ながら全国を歩くということをテーマにしている。
なぜ、静人がそうなったのかは、物語の中で追々と明らかに
なっていく。
明らかに、と言っても、完全に納得できるものではないかも
知れない。
なぜなら、「去るもの日々に疎し」で、人の死、さらには
人の生きた証を、わりあい簡単に忘れてしまっている人が
殆どだから。
「いや、そうじゃない」と思う人もいるだろう。
でも、それは、特別な関係(親子とか夫婦とか恋人とか師弟とか)
にあった人の死と生を、時折フト想い出すだけなのでは
ないだろうか。また、そうでないと現実の日々を生きてなんか
いけない、ということもある。
しかし静人は、人それぞれが生きてきた証を、いとも簡単に忘れて
しまうことに魂が納得せず、死んだ人の周りを訪ね歩き、
「彼(女)は、誰に愛されていたでしょうか。誰を愛して
いたでしょうか。どんなことをして、人に感謝されたことが
あったでしょうか」と聞き出し、その人の生と死をしっかりと
心に刻んで「悼む」のである。
つらく、終わりのない行脚に身を投じることしか、自分の
魂をも鎮められないのだ。
静人を取り巻く人々も、この物語を重層的で奥深いものに
している。
末期ガンに冒されている母は、息子の奇怪な行動にとまどい
心を痛めながらも、その生き方を肯定していく。
静人とは対極的な生き方をしていた週刊誌記者の蒔野も、
静人の「悼み」に知らず知らず感化されていく。

死というものがあまりにも日常的になりすぎて、そして
小説などにいとも軽々しく扱われすぎて、車窓を流れる
風景のように次から次へと忘れ去られてしまうことへの、
作者なりの疑問符でもあり、警鐘でもある。
天童は、『永遠の仔』から格段の成長を見せた、とオレ
は思う(エラそうに!)。

2010.02.04:ycci:count(769):[メモ/コンテンツ]
copyright ycci
powered by samidare
▼コメントはこちら

名前

件名

本文

URL

画像

編集/削除用パスワード
※半角英数字4文字で自由に入力下さい。


手動入力確認イメージ
※イメージ内の文字を小文字の半角英字で入力して下さい。



 ※ 投稿後、すぐに反映されます。
powered by samidare