ぶっくぶくの部屋

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この本ブログもようやっと100回目。
まあ、節操がないというか、気まぐれというか、
手当たりしだいというか…。
でもね、今まで感想なんか書く習慣なかったから、
ほとんど忘れっちまってるのよ、内容を。
映画もそうだなあ。
観たときはそれなりに感動するんだけど、しばらく
すると忘れっちまっている。
そんなボンクラなオレでも、感動の余韻がずうっと
心の中で続いているものもいくつかあって。
そのうちのひとつがコレなのよ。

File No.100
『京洛四季 -東山魁夷小画集-』(新潮文庫 480円)
オススメ度★★★★★

「たった480円の文庫本がオマエの5つ★?」
と思われるかもしれない。
実はもっと安い。
確か古本屋で100円で買った記憶がある。
480円という定価も昭和61年頃のものだから、今はもっと
するかもしれない。

奈良・唐招提寺御影堂の襖絵のことは以前にも書いた。
あの薄暗がりの中に映える群青の波頭は、すごい衝撃だった。
東山魁夷という画家はその時に初めて知った。
つまり、それまでは、知ったかぶりして絵画展行って
薄っぺらく観ていただけだったんだろう。

その数年後、長野市にある東山魁夷美術館に行って、
2度目の衝撃。
「青」がスゴイ。情感が迫ってくる。
次の年もまた行った。

そのまた数年後、東京の山種美術館で「年暮る」の
オリジナルを観た。
忘我の境地で立ち尽くしてしまった。
翌々年また行って、複製を買い、今オレの部屋に掛けて
いる。

それぞれ行く道すがらにめくっていたのがこの小画集。
昭和30年代後半の頃の京都の四季を描いた絵画に
随想を付したものである。
おそらく、その頃の京都って、古都らしい風情や風景を
随所に色濃く残していたのではないかと、絵を観ながら
思う。
なかでも、夏と冬がとくに気に入っている。
夏の北山杉の青、冬になるとそれに白が加わる。
とっても清冽だ。
冬は何と言っても「年暮る」。
宿泊している宿から東山方面の家々の瓦屋根に
雪がシンシンと降っている絵。
今にも、知恩院の除夜の鐘が聞こえてきそうな情感に
溢れている。
 「年を送り、年を迎えるこの時に、多くの人の胸に
 浮かぶであろう、あの気持。去り行く年に対しての
 心残りと、来る年に対してのささやかな期待。
 年々を重ねていく凋落の想いと、いま、巡り来る
 新しい年にこもる回生の希い。『行き交う年もまた
 旅人』の感慨を、京の旅の上で私はしみじみ感じた。
 こうして、私の京の旅は終った。」
絵画もさることながら、こういう透徹した文章も好きだ。
毎年、年の瀬になると、この小画集をひっぱり出してくる
ゆえんも、この情感に浸りたいから…。

京の情感漂う絵画と、簡明で透徹した随想は、これこそ
「珠玉」という形容がピッタリ。
巻頭には、川端康成の文が添えられている。
大仰な画集ではなく、文庫本と言うのも気取ってなくて
いい。
オレの本の中で最も安いものだが、最も大事にしている
本のひとつ。
やっぱ、値段じゃあないんだなあ。
2009.12.20:ycci:count(1,011):[メモ/コンテンツ]
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