ぶっくぶくの部屋

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この間テレビで、奈良・唐招提寺の平成大修理がようやく
終わって、落慶法要を行っている様子が報じられていた。
なんと、国宝「鑑真和上像」をみんなでおかつぎして
金堂に入る儀式を行ったんですナ。
ちょっとビックリしつつ、見たかったなあとも…。
とにもかくにも、天平の甍がまた未来へ新たな歴史を
刻んだワケで。
その天平の甍たる「鴟尾」(しび=屋根の両端についている
シッポのようなもの)に、今回銘を入れた方が、この本の
作者なんだって!

File No.96
『鑑真』東野治之(岩波新書 720円)
オススメ度★★☆☆☆

「鑑真」(がんじん)ってどんな人?
8世紀中ごろ(天平時代)に中国から日本にわたってきて、
仏教の基本たる戒律について教えを広めたエライお坊さんデス。
中国からの舟での渡来は何回も失敗し、その苦労がたたって失明して
しまうのだけれど、ついに日本上陸を果たす。
このことを描いた井上靖の『天平の甍』はあまりにも有名で、
映画にもなったほど。
で、この本は、渡来の経緯も書いているが、鑑真は日本に
何をもたらしたのか、ということにより力点を置いている。
それは、一言で言えば「戒律」。
戒律とは、誤解を恐れないで言えば、キリスト教の「洗礼」
みたいなもの。
仏門に入らんとする者は、やってはいけないことがたくさん
あって、それを教え授けることを「授戒」と言うらしい。
「戒律」の中にも、入門的な「菩薩戒」と、本格的な「具足戒」
があって、後者を授戒しないと、正式な僧とは認められない。
日本は、仏教国の中にあって、唯一「戒律」が浸透していない
国なんだそうだ。
そのひとつの現われが、お坊さんの妻帯。
要するに、鑑真の「戒律」の教えと言うのは、日本には根付かな
かったんだろう。
しかし、鑑真の教えは、その後の最澄による天台宗開祖につながり、
ひいては鎌倉仏教に脈々とつながって行ったというから、
その足跡は偉大なものである。

毎年6月上旬の数日間だけ、唐招提寺御影堂に鎮座している
国宝「鑑真和上像」が公開される。
オレもだいぶ以前に行ったことがある。
ちょっとはなれたところからの拝観だったが、確かにそこに和上
がいらっしゃった。そして、東山魁夷画伯の手になる襖絵の青の
鮮やかさに息を呑むような思いだった。
あの時の感動は今も忘れられない。
そして数年前、その「鑑真和上像」が仙台市立美術館にやってきた。
当然見に行って、ガラスケースの前に立ち尽くした。
間近で見ることが出来たが、なんかちょっと違う…。
そう、やっぱ、これは御影堂の中にあってこそ、より神々しいんだと。

机にある鑑真和上の肖像写真がオレに
「唐招提寺も修理終わったから、来年でもいらっしゃい」とやさしく
語りかけてくれているようだ。
ああ、また行ってみたいなあ〜。

2009.12.12:ycci:count(1,318):[メモ/コンテンツ]
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