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日本にもあったスゴイ漂流記
少年時代に『ロビンソンクルーソー』や『十五少年漂流記』に
胸躍らせ、夢ふくらませた人も多いのでは。
かく言うオレもそのひとり。
あたかも、作中に自分がいるかのようなカンジ。
もっとも、ウルトラマンを見てもそう思っていたのだから
世話ない話ではあるが…。
File No.95
『江戸時代のロビンソン-七つの漂流譚-』
岩尾龍太郎(新潮文庫 476円)
オススメ度★★☆☆☆
日本には、漂流譚や海洋冒険物はあまりないのではないかと
思っていたのだが、この本を読んで、それはとんでもない
無知で、ロビンソンをしのぐような漂流の史実があったのだ!
ここでは、七つの漂流譚(史実)を、様々な史料を読み解き
ながら紹介している。
その内容たるや、凄まじいというか、悲惨というか、スゴイ
というか…、なんとも形容し難い。
著者は、漂流者の類型を、「ガリバー型」と「ロビンソン型」
にわけて論考している。
「ガリバー型」とは、漂流先の文化圏に溶け込みすぎて社会復帰や
帰着が困難になるタイプ。
一方、「ロビンソン型」とは、自分たちの文化的同一性を保持
しながら、母国に帰ろうとするタイプ。
ここでは後者を主に描いている。もちろん、そうでなければ史料にも
残らないわけだが、中には、前者のタイプも少し出てくる。
漂流先別に七つの漂流を紹介しているのだが、南の沖合いの
無人島(鳥島)漂着組は、島に渡ってくる大鳥(アホウドリ)を
食糧にしながら露命を繋ぐ。
こんなところは、『エンデュアランス号漂流』で、ペンギンを食って
命を繋いでいたことと似ている。
何せ食べ物がないのだから、食べれるものは何でもという生活に
鬼気迫るものがある。
その鳥の羽を縫い合わせて衣服としてまとっていたというから、
第一発見者はさぞかしビックリしたことだろう。
かたや、南洋の島々(バタンやミンダナオなど)に漂着した人々は
殆どが奴隷化したようだ。
奴隷となっても、アノ手・コノ手で帰国を企てて、それを実現した
のだから逞しい。
そういった史実の面白さもさることながら、この本は多くのことを
示唆している。
ひとつは、生きて祖国に帰ろうとする人間の強靭な意志力。
二つ目は、異文化コミュニケーション。
その当時の言語コミュニケーションは想像するだけでもたいへん
そうだ。
でも、漂流者の一人はこう書き残している。
「世の中は、唐も倭も同じ事、外国の浦々も、衣類と顔の様子は
替われども、かわらぬ物は心也」と。
つまり、言葉が通じなくても、気持ちは通じるのである。
そしてもうひとつは、異文化との接触や、無人島での極限状態
の中から、その当時の日本人の意識や習俗・習慣などが投影されて
見えること。
ほら、よくあるじゃん、外国から日本をみると、今まで見えなかった
ことや意識してなかったことが見えるって。
そんな感覚かなあ。
オレ的には三つ★級の内容だけど、書き下し文ながら史料引用が
多く、一般的にはちょいと読みずらいと感じるかも…。
2009.12.06:
ycci
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